茨城県が業務を“ロボット代行”実験で労働時間86%減!導入したら職員の仕事はどうなる?

  • 3か月間、4つの業務をロボットに代行、労働時間も人件費も大幅削減に成功
  • 例えば、専用のExcelシートに入力までを職員が担当し、以降をロボットが引き継ぎ
  • 「ロボットは職員を減らすためではなく“パートナー”」

労働時間86%・人件費550万円の削減

以前、編集部でも取り上げたが、茨城県のビジネスシーンにおける「電子化」の発展が目覚ましい。
(なんと予算ゼロ?茨城県が4か月で“決裁の電子化”ほぼ100%を達成した秘訣)

10月30日、その茨城県が8月からの3か月間、4つの業務を「ロボットによる業務自動化」(RPA)のモデルで実証実験した結果、平均86.2%の労働時間を削減できたと発表した。これは、年換算で約550万円もの人件費削減効果になる。

さらに、類似する40業務をRPAのモデルに代行させた場合、年間最大で約4万6,000時間、人件費約8,700万円の削減効果が見込めるそうだ。茨城県は今後、RPAの本格導入を目指していくと発表した。

今回、実験対象とした4つの業務は以下の通り。

財務会計システムの入力(県教委財務課)
教職員の出張旅費入力(県立緑岡高)
国民健康保険事業の資料確認(県厚生総務課)
漁獲情報システムデータの処理(県水産試験場)

実証実験検証結果・評価報告

年換算で、合計3,201時間かかるこれらの業務を、2,768時間カットできたという。
財務課の我妻治係長は「ぜひRPAを導入したい」としており、今回の実験結果を絶賛した。

近い将来、職員がやっていた作業を、RPAのような代行ロボット(パソコンのソフトウェア)が実際に担当するようになるかもしれない。そうなった場合、人がロボットに仕事を奪われる形にはならないのだろうか。
茨城県・ICT戦略チームの戸澤さんに、今回の実験を踏まえた詳しいお話を聞いてみた。

茨城県は“挑戦する県庁”への変革を目指している

大井川和彦知事(出典:茨城県)

ーー今回の実験実施までの経緯は?

RPAは、働き方改革や業務生産性の向上といったトレンドもあり、日本でもここ数年民間企業を中心に急速に普及が進んでいる技術です。行政でも、複数の都道府県や市町村で現在導入に向けた検討がすすんでいます。

本県では、昨年9月に就任した大井川新知事の指示により、「挑戦する県庁」への変革を目指し、現場重視の実行力のある組織作りと職員の働き方改革に取り組んでいますが、こうした観点から、ICTを活用した内部業務の効率化を実現できるツールとして、RPAにも注目していました。

今年度に入り、民間事業者の協力も得て、県庁業務へのRPA導入の検討を本格化させました。6月にRPAの導入希望のある業務を県庁内の各部局より募った結果、65事業の応募が寄せられ、その中から時間削減効果が高いと見込まれる今回の4業務を実験対象として選定したものです。


ーーRPAが担当した4つの業務の詳細は?今まで人がやっていた作業を、どのように代行させた?

まずは「財務会計システムの入力」ですが、県立学校121校の予算配分を、普段は4半期ごとに職員1人が手作業で行っておりまして、大量の単純作業が続く・数字の桁数が多い・端末に長時間向かわなければならない、などの理由から(年換算で)327時間かかっていた業務ですが、RPAにより73時間で終わらせることに成功しました。

続いて、「教職員の出張旅費入力」ですが、教職員は業務で各地方に出張することが度々あります。今回は茨城県立緑岡高等学校の教職員の出張費・経費入力を、RPAに代行させたところ、140時間が14時間になりました。
なお、これらの業務は、職員が専用のExcelシートに入力し、そこからの抽出・登録処理のワークフローを、RPAに引き継いで行われました。

「国民健康保険事業の検収資料確認」は、44の市町村から集計される各種データを県で集計する作業で、RPAの抽出・照合処理システムを使い、2041時間が282時間になりました。

最後の「漁獲情報システムデータ処理」は、漁獲量の添付ファイルがついた報告メールが、1週間に100通以上送られてくるのですが、RPAが添付ファイルを自動でダウンロードし、仕分けすることで、693時間が64時間にまで削減できました。


4つの作業の詳細を聞いてみると、人の手で数字の入力をすると間違えることは考えられるし、送られてきたデータを自動で集計してくれるとなるとロボットの方が圧倒的に早いのも想像できる。いいことずくめの気がするが問題点などはあったのだろうか。

実証実験検証結果・総括

ーーRPAが行った業務で、ミスはなかった?RPAの改善点や問題点などは見られた?

正しく設計を行えば機械的に忠実に作業をこなし、ミスをしないのがRPA化のメリットです。今回の実験業務において、普段どの程度ミスが生じていたかは把握していませんが、いずれも長時間の作業を強いられる業務ばかりですので、人間ですし、疲労によりミスも生じやすい状況になるものと考えられます。

問題点を強いてあげますと「自動化できて楽になるからといって、安易に導入することによって本来行うべき業務プロセスの改善が後回しになる」といったことは避けなければなりません。そもそもの業務の必要性・改善の必要性を検討した上で、真に必要な業務にRPAを導入するのが正しい業務の生産性向上のあり方だと考えています。

RPAは、“人減らし”するためではなく“パートナー”

ーーRPAが人の仕事を奪うことには?

本県がRPAを導入する目的は、決して“人減らし”ではなく定型的な内部事務の効率化による生産性の向上ですので、RPA導入により浮いた時間は、現場に出向き県民や事業者の声を聴き、政策立案につなげていくといった、「県職員の本質的な業務」に割いていただくことを期待するものです。人である職員とロボットが、お互いに得意な部分を協力し、サポートしていくパートナーのような関係が理想です。


ーー人件費の削減効果が見込めることは明らかになったが、RPAの維持費・経費、RPAならではの費用は?

RPAソフトのライセンスや、ロボットの開発費用がそれなりにかかりますので、RPAの導入により削減できる人件費との比較など、費用対効果をよく考えて導入していきたいと考えています。

ーー実際に導入予定は?検討はどの程度、進んでいる?

今回の実証実験で想定以上の成果があがったため、できるだけ早期に本格導入できるよう、取り組んでいきたいと考えています。

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IT出身の大井川知事のもと、ロボットと共に変わりつつある茨城県。「電子化」を進め、未来のモデルケースをどんどん見せてほしい。