手を入れたくなる「真実の口」でインフルエンザ予防!?誘導する“仕掛け”は病院だけじゃない

カテゴリ:国内

  • 手を入れるとアルコール消毒できる「真実の口」が大阪の病院で話題  
  • 「ついやりたくなる」行動の研究から生まれたアイデア
  • 他にも、行動を誘導する様々な“仕掛け”を教えてもらった 

日に日に寒さが増し、心配になってくるのはこれから流行シーズンに入るインフルエンザ。
先月には早くも静岡県内の小学校でインフルエンザによる学級閉鎖が起き、予防接種が呼びかけられている。

最近は会社や学校など、様々な施設に消毒のためのスプレーやジェルが置かれていることが多くなったが、ついつい「そんなに汚れているわけじゃないから…」と素通りしてしまう人も多いのではないだろうか。

そんな中、先月30日から大坂・吹田市の大阪大学医学部附属病院に、素通りするにはあまりに気になる、こんな設備が登場した。

映画『ローマの休日』でお馴染みの、ローマの観光名所「真実の口」を模したこちら、なんと口に手を入れると自動で消毒液が噴射される仕組みになっているのだ。

嘘つきが手を入れると手を噛まれてしまう、あるいは手が抜けなくなってしまう、というちょっと怖い伝説を持つ「真実の口」。
確かに、隣に置かれている通常の消毒液のボトルを使うよりも、ついついこちらに手を入れてみたくなってしまう気持ちはよくわかる。好奇心で手を入れてみたら、インフルエンザの予防にもつながるという一挙両得な見事なアイデアだ。

この“真実の口”を作ったのは、大阪大学大学院・経済学研究科の松村真宏教授。
ユニークなアイデアはどこから生まれたのだろうか?お話を聞いてみた。

きっかけは「動物園を楽しくする仕掛け」

――“真実の口”のアイデアはどこから?

2015年に天王寺動物園で行った「シカケコンテスト」の際に、天王寺動物園に設置できる仕掛けをゼミで考えたときに出てきたアイデアの一つでした。
ライオン型手指消毒器の初代はゼミ生の小川泰隆くん、二代目は同じくゼミ生の伊藤愼介くんが製作しました。
阪大病院に設置した「真実の口」は、CBCテレビの美術スタッフの方に作っていただいたもので、EXPOCITYのフードコートに設置して実験したのですが、それを今回は阪大病院に流用しました。



今回の「真実の口消毒器」は、2015年に開催された「動物園を楽しくする仕掛け」を集めたコンテストの際に出たアイデアの一つをもとにしたものなのだという。
動物園に設置されるのにピッタリなライオンの顔の形をした初代・二代目の消毒器も、オリジナルの「真実の口」のアイデアをもとにしたもので、開いた口につい手を入れたくなるデザインとなっているのだ。

二代目「ライオン型手指消毒器」

大阪大学医学部附属病院では、以前から自由に使えるアルコール消毒のボトルを置いていたものの、200人に1人程度しか使用されていなかったのだという。
そこで、インフルエンザの流行シーズンを前に「どうしたらアルコール消毒の利用者を増やし、楽しく予防できるか?」ということを考え、今回“真実の口”が設置されたのだ。

“真実の口”の前身となる「ライオン型手指消毒器」を設置した天王寺動物園では、消毒していく人がなんと5倍に増えたという結果が出ていて、大阪大学医学部附属病院でも、その効果が期待されているのだ。


松村教授はこの“真実の口”のように、人がつい行動したくなる現象や効果を検証する「仕掛学(しかけがく)」について研究しているのだという。

その一例を見てみると、たとえば「バスケットゴールつきゴミ箱」はゴミ箱にバスケットゴールをつけたシンプルな仕組みだが、ついつい「シュートしたくなる」という気持ちが湧き上がり、ポイ捨てする人が減らせるのだ。

続いて、とあるパン屋さんで試食をしてもらい、食べ終わった爪楊枝を「どちらが美味しかったか」投票する形で発泡スチロールの“投票箱”に刺してもらう仕掛け。
「試食すると、商品を買わないと失礼?」という気持ちがある人も多いかと思うが、試食=購入ではなく、試食=人気投票という形にすることで、お客さんは抵抗感なく試食ができ、店側は試食して商品を知ってもらう機会が増えるという効果を生み出しているのだ。

この「爪楊枝人気投票」を設置したところ、なんと試食していくお客さんの割合が1.8倍にも増えたのだという。

「使い方がすぐ想像できる」ことが重要

――人の行動を誘導する仕掛けはどういったアイデアから生まれる?

バスケットゴールもゴミ箱もどちらも知っているもので目新しくはないけれど、それらを組み合わせたものは見たことがないので注意をひきます。
しかし、初めて見た組み合わせなのに使い方が容易に想像がつきます。この2つが同時に満たされることで、ついやってみたくなるのだと考えています。


――オリジナルの「真実の口」を見たことのないような小さな子供でも、つい手を入れたくなるのはどうして?

真実の口を知らない人でも、他の人が楽しそうに口に手を入れているのを見て、興味を持ってくれますし、手を入れるんだなということが伝わります。
また,張り紙や掲示で情報提供もしているので、真実の口を知らなくても、何なのかがわかるようにもなっています。


――「仕掛け」は今後どういった場面で活躍する?

仕掛学は人の行動が対象なので、人がいる現場は全て対象になると考えていますが、特に教育現場やヘルスケアといった現場からは多くの要望があり、重要な対象だと考えています。



仕掛けのほとんどを手作りしているという、松村教授の研究室。
作品の中には、「お金を入れなくても回せるガチャガチャ」の中にビラなどを入れ、たくさんの人に手に取ってもらうようにした仕掛けは、ガチャガチャを回してくれる大人が少なかったなど、“失敗作”もあったというが、「こうしてほしい」と強制されなくても、自ら「こうしたい」と思って行動してしまう「仕掛け」はいろいろな場面で役立つことがありそうだ。

“真実の口”は11月中旬まで設置される予定ということで、今年のインフルエンザ予防にどれだけの効果を生むか、“仕掛け人”のアイデアに期待したい。