「ユニバーサルデザインタクシー」なのに車いす利用者を“乗車拒否”するワケ

カテゴリ:暮らし

  • 障害者や高齢者にやさしい設計の「ユニバーサルデザインタクシー」
  • 車いす利用者で回答を寄せた44人のうち11人が、予約や乗車を断られたことがある
  • 原因の一つは「スロープの設置に時間がかかること」

「UDタクシー」に予約や乗車を断られる車いす利用者

障害者や高齢者が乗りやすいよう設計された「ユニバーサルデザインタクシー(※以下、UDタクシー)」で、車いすの利用者が予約や乗車を断られるケースがあることが、障害者が作る団体「DPI日本会議」の調査でわかった。

UDタクシーとは、健康な方はもちろん、車いすを利用する人や足腰の弱い高齢者の方など、誰もが利用しやすいタクシーで、
・縦にも横にもゆとりのある空間を確保し、ゆったりくつろげる車内空間を確保。
・乗降時や立ち座り時などの安全確保のため、握りやすく視認性の高い配色の乗降用手すりを装備。
・スロープ幅を広く、勾配を緩やかなものにすることで、安全でスムースな乗り入れが可能に。
・車いすのまま乗車できるゆとりあるスペースを確保。
などが特徴となっている。

また、外見でUDタクシーであることが判別しやすいように、UDタクシーは全て、「UDタクシーマーク」を車体の前面、後面、左側面に表示している。

街中で呼び止める、もしくは電話などで予約することで利用ができ、料金も普通のタクシーと変わらない。

国がタクシー会社に購入のための補助金を出すなどして導入を進めていて、東京都では東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年度までに1万台の導入を目指している。

こうした中、「DPI日本会議」が今年7月~8月末にかけて、全国の車いすの利用者を対象にウェブサイトでアンケートを実施し、UDタクシーの利用状況を調べたところ、回答を寄せた44人のうち11人が、予約や乗車を断られていたことが分かった。

予約・乗車を断られたときの具体例

「DPI日本会議」の担当者によると、“予約を断られたとき”の具体例には以下のようなものがあるという。

・「UDタクシーを指定しての予約は受け付けていない」
・「UDタクシーの台数が少ないため」
・「予約が埋まっている」
・「流しのタクシーをつかまえるように言われた」
・「乗車作業時間を考えると駅前のタクシー乗り場にしても街中にしても場所の確保が難しい」
・「スロープを用意していない」
・「UDタクシーがいかに大変か、不可能かを説明された」

また、“タクシー乗り場などで運転手に乗車拒否されたとき”の具体例は以下の通り。

・乗せてあげたいけど、このタイプの研修は受けていないと言われた。(北海道、簡易電動車いす使用者)
・実際に一人で流しのタクシーを利用しようとしたら、どのUDタクシーも停まってくれなかった。健常者の同行者がいたときには空車のUDタクシーは停車してくれた。(東京都、簡易電動車いす利用者)

スロープの設置に時間がかかる

UDタクシーは、車いすを利用する人が乗りやすいように設計されたタクシーのはずなのに、なぜ乗車拒否という由々しき事態が起きてしまったのか?
「DPI日本会議」の担当者に聞いた。

――乗車拒否が起きる原因としてはどのようなことが考えられる?

「スロープ設置などの乗車準備が煩雑で時間がかかる」「車内のスペースが車いす利用者にとっては狭い」「運転手が車いす利用者の接客に慣れていない、研修不足」「車いすでも乗れる仕様だということを予約時のオペレーターや運転手が把握していないことがある」などが考えられます。


――今後どうすれば乗車拒否がなくなると思う?

乗車拒否を明確に禁止して周知すること、また、研修は実際に車椅子使用者を交えて、具体的な意見を聞きながら行うべきです。

車内のスペースやスロープなど物理的な車両構造の改善も必要です。

「スロープの簡素化」をメーカーにお願いしている

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車いす利用者がUDタクシーに乗車拒否されたという苦情は国土交通省にも寄せられているという。
寄せられたのは、10月18日時点で6件。

苦情を受け、どのような対応をしたのか?
国土交通省の担当者に話を聞いた。

――苦情を受け、どのような対応をした?

乗車拒否をされたという通報があった事業者に対し、再発防止に向けた乗務員教育の徹底を指導しています。

――UDタクシーによる車いす利用者の乗車拒否は法律に違反する行為?

UDタクシーであるにもかかわらず、乗車可能な車いすの利用者の方を正当な事由なく、乗車拒否した場合は道路運送法で定める運送引受義務に違反することになります。


――UDタクシーによる車いす利用者の乗車拒否をなくすためにはどうすればいい?

UDタクシーのスロープの設置方法など、ドライバーの理解が深まるよう、事業者に実車を用いた研修を求めるとともに、研修用の車両の提供を車両メーカーにお願いしています。

また、ドライバーから「スロープの設置に時間がかかる」という声があり、ドライバーの負担を軽減するため、スロープなどの設備を簡素化するよう、こちらも車両メーカーにお願いしています。


今回、タクシー会社にも取材を申し込んだが、期日までに回答はもらえなかった。
障害者団体、国土交通省に寄せられているという、UDタクシーによる車いす利用者の乗車拒否。
“誰もが利用しやすいタクシー”の実現には、車両とドライバー、双方の改善が不可欠のようだ。