【独自】殺害されたカショギ氏の“17秒の映像” 第2のアルジャジーラ構想が皇太子の逆鱗に?

  • サウジ政府による組織的な犯行で殺害されたサウジアラビア人記者カショギ氏
  • 独自入手の映像で、「第2のアルジャジーラとなるテレビ局を作る」と話していた
  • “様子見対応”の日本政府は、毅然とした対応をすべきでは?

トルコ・イスタンブールでサウジアラビア人記者、ジャマル・カショギ氏(当時59歳)が殺害された事件ではサウジ政府による組織的な犯行の手口や、サウジの後継者ともいわれるムハンマド皇太子の指示が疑われるなど、国際社会には強い衝撃と戸惑いを与えている。

事件の捜査が進められる中、フジテレビ「報道プライムサンデー」は殺害されたカショギ氏の生前の映像を独自入手した。

撮影された場所はカタール。そこでカショギ氏は、新しいテレビ局をカタールで作ると語っていた。このカタールに作るテレビ局構想がサウジのムハンマド皇太子の怒りをかったのか?

日本メディア初公開の17秒の映像から、サウジアラビアによるカショギ氏殺害の理由に迫った。

サウジの敵国・カタールに“自分のテレビ局”を!?

左:サルマン国王 中:アブドーラ・アルモーメン氏

東海大学国際教育センターの准教授で、サウジアラビア王室の通訳を務めた経験を持つアブドーラ・アルモーメン氏は、カショギ氏殺害の理由に迫る17秒の映像を我々に見せてくれた。

それは、およそ2年前の2016年11月、カタールで撮影されたカショギ氏へのインタビューだ。

映像を見ると、カショギ氏はパンフレットらしきものを持っている。この日、カタールの首都ドーハにあるアルジャジーラニュース開局20周年の記念行事が開かれていた。アルジャジーラは、カショギ氏殺害に関してムハンマド皇太子の側近が関与したと一貫してサウジアラビア批判を行っている数少ない中東メディアだ。

カショギ氏の目的は、“自分のテレビ局”を作るために、記念行事を訪れていたカタールの首長に会い、協力を得ることだった。

■カショギ氏 17秒の独自映像■
カショギ:
やあ。

質問者:
あなたのテレビ局は(カタールの)ドーハに設置されるのかな?

カショギ:
そう、おそらくドーハに設置される。

質問者:
(カタールの)タミム首長はなんて言ってた?

カショギ:
タミム首長は、『テレビ局はアルジャジーラと良きライバルになる』と歓迎してたよ。私もそうなると思う。

2年前、カショギ氏は、カタールのドーハにテレビ局を作ろうとしていた。これはサウジアラビアにとって「実に喜ばしくないもの」だったと、サウジのサルマン国王の通訳を務めるアルモーメン氏は語る。

さらに「敵対しているカタールとやるとなるとサウジにとっては当然面白くないし、目障りだったことは間違いないでしょうね」と分析するアルモーメン氏。

去年、サウジアラビアは、イランと関係を深めたカタールと国交断絶。そして、カタール政府が出資しているテレビ局・アルジャジーラは、報道の自由が少ないとされるアラブ諸国で異色の存在だ。

また、中東情勢に詳しい国際開発センター研究顧問・畑中美樹氏は「アルジャジーラというのは、特にサウジなんですが、他国が気にしている、触れられたくないところを、報道で伝えるのです。一時サウジ王室の顧問も務めていたカショギ氏は、サウード王家の内部を知ったうえで、ムハンマド皇太子の批判をしているから、皇太子から見ると非常に怖い存在ですので、放送局を作るとなると、カショギ氏の脅威は数十倍高まります」と、カショギ氏がカタールと組むことはサウジにとって脅威だったと語る。

改革者か暴君か?ムハンマド皇太子の人物像

サウジアラビアの実権を実質的に握っているムハンマド皇太子に会ったことがあるアルモーメン氏は、皇太子について「高圧的な感じではなく、非常にほがらかな感じで、でも自分の意見を通すまでは、かなりやる人」と話す一方、前述の畑中氏は皇太子について、「二面性がある。ひとつは若い人から期待されている、改革をしようとしている若いリーダーという側面。もう一つは改革をするために急ぎすぎているので、国内の反発を生んでいる」と評する。

外資を呼び込み、財政収入の多角化を目指して、国際経済フォーラムを主催。またムハンマド皇太子は日本アニメ好きで知られ、日本の制作会社とアニメの共同制作も行われている。
また、今年6月には、女性の自動車運転を解禁するなど、若き改革者のイメージがある。

その一方で、その手法は強引だとの批判もある。改革の一方で王室のやり方に反対する記者や活動家を次々と拘束している。また2015年、国防相に就任して間もなくイエメン内戦への軍事介入を始め、民間施設への空爆を行ったと非難を浴びた。
去年11月には、11人の王族を含む有力者200人を『汚職追放』の名目で一斉に拘束し、高級ホテルに監禁。拘束は莫大な保釈金の支払いと引き換えに今年1月まで続いた。

前述のアルモーメン氏は「脅威っていうのは、サウジアラビアから見た場合は脅威であって、カショギさんにはそのつもりはないと私は強調したい。もしかしたら、今の皇太子から見ると、良いとは思わずに、『歯止めをかけないと』と思ったかもしれない」と続ける。

サウジの裏の裏まで知るカショギ氏の“テレビ局”は目障り?

飯塚正人氏(東京外国語大学教授)

飯塚正人(東京外国語大学教授):
今回こういう事件があって、いみじくも明らかになったことですが、国外にいる自国民のジャーナリストを殺害するとなると、サウジアラビアの国内だともっとひどいことが起こっているという可能性があるわけです。
それに加えてカショギさんがカタールに、カタール政府のこと以外のことを思いっきり批判するというスタンスのアルジャジーラテレビのようなテレビ局を作ろうとする。そもそもこのアルジャジーラテレビでさえ、サウジアラビアにとっては目障りなわけで、そのアルジャジーラのライバル局を、サウジアラビアの裏の裏まで知っているカショギ氏が作って、サウジアラビアの内幕を報道されると、サウジアラビアにとって印象が悪くなるわけなので、非常に嫌だったんでしょうね。
それが直接の理由だったかはわかりませんけど、象徴されるようにカショギ氏が目障りだったというのはありますね。

立川志らく氏(落語家)

立川志らく(落語家):
そもそも、こんな暗殺とも言えない幼稚なことをなぜやるのか、と。かえってイメージ悪くなるじゃないですか。それが腑に落ちない。サウジの皇太子を貶めるために別の形でやったんじゃないかとか思います。

奥寺健アナウンサー:
様々な国との関係もありますが、1人の記者が国家に殺されたということに対して、日本はどうするべきだと思いますか?

“様子見”対応の日本政府。毅然したと対応をすべきでは?

立川志らく:
日本はまず様子見をするでしょ、アメリカとの関係とかもありますし。私はこの様子見というのがカッコ悪いと思うんですよ。子供に対する教育上、非常に良くない。

国家レベルと庶民レベルを一緒にするのは良くないともいわれますが、根本は同じだと思う。例えば八百屋さんがね、お得意さんがいてお得意さんが物凄く悪いことしたとします。『いやお得意さんだからな〜』とお父さんが考えていたとしたら、子供はお父さんのことを軽蔑しますよ。
その時に毅然とした態度で、お得意さんだったとしても、それとこれとは別なんだと。とんでもない、もう商売はしないよ、と言えば子供はそのお父さんを尊敬する。

国民はそれを見ているわけですからね。サウジとの関係、アメリカとの関係もありますが、『日本はこうします!国際的には絶対に許されないものだ!』と言うべきですよね。そのあとちょっといろいろあるから『すみません』となるんだろうけども、そういう態度を日本はまず見せるべきですね。

パトリック・ハーラン:
トランプ大統領もサウジは大事なお得意様ですから『ちょっとね〜口出せないんですよ』、と言っています。

結局あやふやなままムハンマド“国王”と50年付き合っていくのか

飯塚正人:
なかなか難しいですね。
カショギ氏が言っていたのは、アラブ社会全体にそういう報道の自由を押しつぶす実態があるんだと、アラブ全体の問題なので。サウジのムハンマド皇太子は非常に優秀な人材ですが、やはり金持ちのボンボンの中での優秀ということで、「バレない」と思って今回やっちゃったんですよね。
まだサウジのムハンマド皇太子が指示したというのはわかりませんし、サウジの王族の誰かの指示はあったでしょうから、国外の犯罪ということで、日本はサウジアラビア政府に対する批判を正々堂々とやっていいと思いますね。
しかしとことん踏み込むと、他のアラブ社会は似たようなものなので、どこからも石油が買えないという事態が起きかねない。

佐藤正久氏(外務副大臣・自民党参院議員)

佐藤正久(外務副大臣):
事件は、まだまさに真相究明中という段階です。
日本はカショギさんを殺害したという事については、強く非難していますし、G7外相・アメリカ・フランスなどの外相レベルでの非難声明は出しています。
我々はなるべく早く真相を解明してもらって透明性を持って処分してもらう、そういうことを持って日本政府も対応する。まだ証拠ありませんから。

立川志らく:
ゲスの勘ぐりなんて言われるんですけどね、結構、ゲスの勘ぐりって当たってるんですよね(笑)。

飯塚正人:
今の国王が82歳と高齢で体調もあまり良くないです。ここ数年のうちに今のムハンマド皇太子が王位を継承すれば、50年くらい国王をやる事になるわけです。今後どうやって付き合って行くのかというのは難しいことです。真相はうやむやのまま、闇の中のまま、ムハンマド皇太子が国王になって50年間世界は付き合って行くのかなと思うんですよね。

「『テレビ局はアルジャジーラの良きライバルになる』と言われたよ。私も、そうなると思う」

生前、こう語っていたカショギ氏だが、第二のアルジャジーラ、テレビ局を作るという構想はその死によって実現することなく終わった。
開放的な改革をアピールしたいムハンマド皇太子にとって、自由な言論がないことを指摘するカショギ氏が作ろうとしたメディアは、目障りだったのだろうか。

(報道プライムサンデー 10月28日放送より)

報道プライムサンデーの他の記事