なぜ女房役が拉致担当を兼務? 安倍首相の狙いは…

カテゴリ:国内

  • 菅官房長官が異例の拉致問題担当相を兼務
  • 北朝鮮をめぐる「安倍・菅」関係の軌跡
  • 多忙な中で「正念場」をチャンスに生かせるか 問われる真価

菅長官が兼務する拉致問題担当相とは

第4次安倍改造内閣が発足した10月2日。新たに拉致問題担当を兼務することになった菅義偉官房長官は、その決意をこう語った。

「拉致問題は安倍内閣の最重要課題、最優先課題であり、私自身、官房長官そして拉致問題対策本部の副本部長、その中で安倍総理を支えてきました。総理の会見でも『政府与党を貫くオールジャパンの体制を強化し、あらゆるチャンスを逃さない決意において家族会の皆様ともよく意思疎通をしながら、皆様の気持ちに寄り添う、その責任をしっかり果たしていってほしい』こういう言葉がありました。私はそういう思いの中で拉致問題担当大臣として全力を尽くしてまいりたい」

菅拉致問題担当相と横田早紀江さん(10月8日)

拉致問題担当相とは、内閣府の特命担当大臣として、省庁を横断して拉致問題の解決にあたる役割の閣僚で、政府を代表して拉致被害者の家族と向き合う立場でもある。2006年の第1次安倍内閣の塩崎大臣が初代で、現在までに20人弱が就任。ほとんどの大臣が他の担務との兼務であり、菅氏の前の加藤勝信氏も多忙な厚労相と兼務だった。

そして今回の内閣改造で、第2次安倍内閣が発足して以降、女房役として約6年間、安倍首相を支えてきた菅官房長官が、拉致担当相を兼務することになったのだ。

菅拉致問題担当相(10月8日)

しかし今、菅長官は沖縄の基地負担軽減担当相も兼務し、天皇陛下の退位や即位・改元、官僚人事、税制、臨時国会の大きな焦点となっている外国人材の受け入れ拡大に観光政策、携帯電話料金の引き下げなども実質的に主導し、内閣にかかわるほぼすべての国内政策に関わっている。

加えて2017年にトランプ氏がアメリカ大統領に就任して以降、日米首脳電話会談には必ず同席し、2度にわたる南北首脳会談に同席した韓国の徐薫国家情報院長が来日した際は必ず面会し情勢報告を受けるなど、北朝鮮問題を中心とした外交政策にも一層深く関わってきた経緯がある。

韓国・徐薫国家情報院長(9月・官邸)

2度目の米朝首脳会談が年明けにも行われる見通しであるなど、北朝鮮をめぐる国際情勢が動く中、安倍首相がこのタイミングで拉致問題担当相を、激務に拍車がかかる菅長官にあえて兼務させた理由はどこにあるのか。

それは安倍・菅の二人三脚で政権の最重要課題を解決させるという強いメッセージとともに、安倍首相に残された3年の任期の中で、菅長官が問題解決に向けた“最後の砦”だったという見方もできるかもしれない。

菅氏を拉致問題担当相に起用した安倍首相(10月2日)

当選1期から北問題に長く関与 拉致問題に対する“安倍・菅の長き思い”

菅長官は当選1期目から北朝鮮問題に対し強い関心を寄せてきた。2期目の2001年12月、自民党総務会で菅長官は北朝鮮の貨客船「万景峰号」の入港禁止を主張した。この経緯を知った安倍首相(当時:官房副長官)から直接連絡を受けたのが“安倍・菅”の関係の始まりだったという。

このとき安倍首相は菅長官に対し、万景峰号の入港禁止に「全面的に協力する」と伝え、2004年の通常国会で、万景峰号による北朝鮮への送金・貿易を禁止する法改正が実現し、その後、入港自体が禁止された。

万景峰号(2004年・新潟港)

また菅長官は2005年11月、第3次小泉改造内閣で総務副大臣に就任後、朝鮮総連に対する固定資産税の減免措置を抜本的に見直した。これにより現在、朝鮮総連の関連施設で減免を受けているケースはない。

さらに2006年9月の第1次安倍内閣で総務相に就任した際、北朝鮮に向けて拉致問題を特に放送するようNHKに対して命令を出した。当時マスコミからは「報道の自由の侵害だ」と強く批判が出たが、強い信念をもって実施したという。

NHKに対し命令を出した菅総務相(当時)(2006年)

こうした経緯を踏まえると、この時からすでに北朝鮮問題に対する“安倍・菅”の二人三脚体制は作り上げられていたのかもしれない。

日朝首脳会談へ“今まさに正念場” その真意は

「日朝首脳会談を行うことになる場合には、拉致問題の解決に資する会談にしなければならない。そのための段取りを作っていくことは自分の役割」

 常々このように語る菅長官は、北朝鮮による日本人拉致問題の現況を「今まさに正念場」と繰り返し強調している。

拉致問題担当相としての着任インタビューに答える菅氏(10月25日)

「今まさに正念場」それは何を意味するのか。10月25日、兼務する拉致問題担当相としての着任インタビューで、その意味を尋ねた。菅長官の答えはこうだった。

「閉塞状況にあったこの拉致問題について、やはり米朝首脳会談が行われたということは、一つの大きな流れ、新しい流れだと思う。特にトランプ大統領、また韓国の文大統領が金正恩委員長に対して、拉致問題を提起してくれた。そういう中にあって、どんな小さなチャンスでも見逃すことなく、拉致問題の全面解決につながることに対して、拉致問題の担当大臣としてしっかり対応していきたい、そういう意味であります」

日本人拉致問題を巡っては、日朝情報当局者の会談が極秘で行われるなど、水面下での動きも加速しつつある。

 一方、2002年の小泉訪朝を契機に5人の拉致被害者が帰国して以来、16年もの間、膠着状態が続き、その間に被害者家族の高齢化も進み、解決には一刻の猶予も許されない。

拉致被害者家族会と面会(10月12日)

そうした中で訪れた「正念場」をチャンスとして生かせるのかどうか。拉致問題担当相を多忙な官房長官に託した安倍首相と、引き受けた菅長官自身の真価が、今後問われることになる。

(フジテレビ政治部 官邸担当 千田淳一)

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