アメリカを目指す『移民キャラバン』はトランプ選挙対策に利用される巡り合わせに

カテゴリ:ワールド

  • 7200人の移民希望者がメキシコ国内を北上中
  • トランプ大統領は支持者向けのアジ演説に活用
  • 米中間選挙にどんぴしゃりの皮肉な巡り合わせ

豊かで安全な日常を求めて大行進

ホンデュラスなど中央アメリカの国々を出発し、アメリカへの入国を目指して主に徒歩で北上中の移民希望の群集に熱い注目が集まっている。呼び名は『移民キャラバン』。その人数は7200人を超えるという(国連の推計)。

元をたどれば10月12日にホンデュラス北西部の都市サンペドロスラのバスターミナルに集まった百人あまりが、グアテマラを通過しメキシコに入る道程で、エルサルバドルなどからの参加者も吸収し、雪だるま式に膨らんだ。貧困と地元ギャングによる日常的な揺すりや暴力に耐えかねた人たちが、SNSでの呼びかけやテレビ報道などを見て即断し、急ぎ荷物をまとめて飛び入りしてきたケースが少なくないのだという。大人数での移動なら追いはぎや性的暴行などのリスクが小さいという事情もあるようだ。少しでも豊かで安全な日常を求めての大行進といえる。

この『移民キャラバン』の先頭グループは既にメキシコ国内に入っていて、沿道の住民からペットボトルの水やメキシカン・ファーストフード、アイスクリームなどの差し入れも受けながら北上を続けている。しかし、アメリカとの国境にたどり着くのにあとどれくらいの日数がかかるのか、そしてアメリカへの入国(難民申請など)はどうなるのかなど、見通せないことばかりだ。

「移民キャラバン」で支持者の不安感をあおる

こうした中で『移民キャラバン』が俄然注目されているのは、アメリカの中間選挙まで2週間を切り、トランプ大統領と共和党が支持層の活性化のために積極利用しているからだ。曰く、「キャラバンにはベネズウェラの左翼や民主党が資金提供している」「中東出身者が紛れ込んでいる」などなど。

2018年3月 「国境の壁」のサンプルを視察するトランプ大統領

全く根拠レスであることがほどなく明らかになるのだが、選挙対策としては「言った者勝ち」であることは否めない。「移民は危険」「壁を作れ」「移民に甘い民主党は犯罪に甘い」「テロリストの国境すり抜けを許すな」などは、2016年の大統領選で大成功したトークポイントで、この中間選挙のキャンペーンでも大統領にとって十八番の話題だ。

選挙戦終盤では支持者が喜ぶ鉄板ネタをこれでもかというくらいに畳みかける手法が一番効く。だからこそトランプ大統領は、『移民キャラバン』で支持者の疑念や不安感を揺さぶり、あおる。

中間選挙前に皮肉なめぐり合わせ

殺害されたサウジアラビア人ジャーナリスト ジャマル・カショギ氏

同時に、トルコのイスタンブールでサウジアラビア出身のジャーナリストがサウジ当局者によって殺害された事件への世界の注目を、できるだけ早く別の方向にそらしたいと願っていたトランプ政権にとって、『移民キャラバン』はどんぴしゃりのタイミングでやってきた。しかも選挙キャンペーンに大いに使える話題だ。

トランプ政権のニールセン国土安全保障長官やケリー大統領首席補佐官などは、そうした観点からかなり早くから『キャラバン』の動向を注視し、大統領にブリーフもしていたという。

『移民キャラバン』が10月の半ばにホンデュラスを出発したのは、徒歩で移動し野宿する人たちにとって日中は暑すぎず夜は凍えずにすむ時期を選んだからだと思われる。メキシコ南部では今も日中の気温は摂氏30度台前半というし、高地の夜はそこそこ冷える。

図らずもタイミングがアメリカの中間選挙に合ってしまったことで、トランプ政権からメキシコ当局や国境警備への『キャラバン』阻止の圧力は格段に強まるだろうことは間違いない。『キャラバン』にとっては皮肉な巡り合わせとしか言いようがない。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)

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