安田純平さん解放 カタール・トルコの思惑は? カショギ氏殺害も関係か 

カテゴリ:話題

  • 安倍首相「カタールとトルコに感謝する」発言の真意
  • 武装組織を支援して国際的批判を受けていたカタールとトルコ
  • そんな中で起きたカショギ記者殺害事件 各国の思惑は?

安倍首相「カタールとトルコに感謝」

「カタールとトルコに感謝申し上げたい」と語る安倍首相 10月24日午前

「カタール、トルコに大変な協力をいただいたことに感謝申し上げたい」
シリアで不明になっていたジャーナリスト安田純平さんが解放されたという報に接した安倍首相がこう言ったが、この言葉がいろいろと示唆に富んでいるように思えた。

トルコはサウジアラビアと対立する関係にあり、問題になっているジャーナリストのカショギ氏の殺害をめぐってサウジアラビアを国際社会に告発している。その背景には、トルコはイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を支持しており、殺害されたカショギ氏もその構成員ということもあったからだ。そして安田さんを三年間拘束していた武装組織「ヌスラ戦線」もそのルーツが 「ムスリム同胞団」であることを指導者が認めている。

カタール・トルコと武装組織

安田純平さんを拘束していた武装組織

その縁で、トルコとは近い関係にあるとされていたが、最近はシリアとの国境地帯のクルド族勢力を抑えるためにトルコは「ヌスラ戦線」を利用し、武器などを供与していると言われていた。

一方カタールも「ムスリム同胞団」の関係から「ヌスラ戦線」を支援していたようで、米国から資金援助を止めるよう要請を受けたこともあった。イランに接近しすぎてサウジアラビアと湾岸諸国に国交を断絶され孤立しているが、国交を回復する条件に「ムスリム同胞団への援助を止めること」をサウジ側から突きつけられている。

カショギ氏殺害事件との関連は

トルコのサウジアラビア総領事館で殺害されたジャマル・カショギ氏

そのトルコでカショギ氏の殺害事件が起き、かねてギクシャクしていた米国との関係を改善する機会と捉えたかのようにサウジアラビア批判をくりひろげカタールも同調している。

そうした折に安田さんが解放されたのも、トルコとカタールが国際社会でも影響力のある日本の賛意を得ることを期待して「ヌスラ戦線」に指示したのではないかと考えてみたい。

もしそうだとすると、その機会を逃さず両国に働きかけた日本の外交センスもなかなかのものだったと褒めたい。

安倍首相は、謝意を表するときにカタールを先に言及した。現実に安田さんが解放されたのはトルコ国境地帯だったはずだが、先にカタールの国名を口にしたのは同国が日本との窓口となって積極的に動いたと思える。

“安田さん解放”は奇跡

中東をめぐる情勢は、安田さんが拉致された三年前とは大きく変わっている。当時は猛威を振るっていたIS(イスラム国)やアルカイダなどテロ組織も壊滅状態になり、「ヌスラ戦線」もアルカイダと関係を絶って比較的穏健な路線を目指していると伝えれていた。

そうだとしても安田さんがこの三年間無事でいて解放されたことは奇跡としか思えない。

(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

(イラスト:さいとうひさし)

木村 太郎のNon Fake Newsの他の記事