少女を性被害・虐待から救う“10代限定”ピンクの「バスカフェ」を取材した

カテゴリ:国内

  • 渋谷・新宿に毎週水曜オープン。食べ物も飲み物も全部無料で提供
  • 「私たちの方から行かなければ、会えない女の子たちがいる」
  • 撮影や大人の見学は禁止…厳しい注意書きのワケ

家に居場所がなく夜の繁華街をさまよう少女を性被害や虐待から守るため、ピンク色のバスを使った新たな支援活動が始まった。
バスは毎週水曜日の夜に渋谷、または新宿の繁華街近くに駐車して、テントやテーブルを並べたカフェスペースをオープンする。
車体と看板に書かれた文字は「Tsubomi Cafe」。

出典:一般社団法人Colabo

ただし、カフェとはいっても利用できるのは10代の少女限定だという。
フードバンク活動を行うNPOから提供された食事をはじめ、飲み物やスマホの充電もすべて無料で提供している。
さらに衣類・化粧品・生理用品の配布や、必要に応じて相談、行政・病院などへの同行支援、緊急一時保護も行うという。

このバスは中高生向けのシェルターなどを運営をしている一般社団法人Colaboが、18年度から始まった厚生労働省と東京都による「若年被害女性等支援モデル事業」の委託先に選ばれて取り組んでいるもの。
10月17日に初めて歌舞伎町の新宿区役所の一角でオープンし、週替わりで渋谷の神宮通公園と交互に展開している。

Colaboでは以前からクラウドファンディングや日本財団からの助成を元にバスカフェの準備を進めており、今年に入って赤い羽根福祉基金の助成でキャンピングカー仕様のバスを購入。
このバスを拠点にして、家に帰れず夜の繁華街をさまよっている少女たちに、この団体の活動を案内するという。

ただし、クラウドファンディングのサイトを見ると、活動の目的は少女の「支援」ではなく「発見し、出会い、つながること」だとしている。
これまでにも夜の街を巡回して家に帰れずにいる少女に声を掛ける活動を行っているColaboが、バスカフェという少女たちへの新たなアプローチを始めたのはなぜなのだろうか?
Colaboの代表を務め、自身も高校生の時に街をさまよって生活した経験を持つ仁藤夢乃さんに話を伺った。

「私たちの方から行かなければ、会えない女の子たちがいる」

――支援ではなく「発見・出会い・つながること」が目的とはどういうこと?

まず、公的機関や他の相談機関の方には、街をさまよう女の子には出会うことができないと言われていました。
今までの支援の仕方といえば、相談窓口で待っていて、そこに来た人たちに対応するのが基本だと思います。
でも、いろんな体験をして大人への不信感を抱いている女の子が、自分で相談機関を調べて、たとえば電話で面談の予約をして、その時間にやって来るのは、すごくハードルが高いんです。
またハードルが高いと感じているために、相談したいと思わない女の子もたくさんいます。
私たちのほうから出ていかなければ会えない女の子たちがいるんです。

また、そういう女の子たちに声を掛けているのは性売買業者ばかりで、この現状をなんとかしたいという思いがありました。
そこで支援や相談を目的としない場を作り、女の子と出会いたいと思ったんです。


――街をさまよう少女はなぜ家に帰れないのか?

家庭で虐待を受けてるとか、家に居場所がないと感じているとか、自分の父親からレイプされているような子もいます。
また母親の彼氏から暴力を振るわれているとか様々なケースがありますが、家が安心して過ごせる場所ではなくなってしまっているということです。

――Colaboの公式サイトには、すべての少女が 「衣食住」と「関係性」を持つ社会を目指すとか書かれているが、これはどういうことなのか?

私たちが関わる女の子の中には、例えば貧困などのために「衣食住」と「関係性」を持っていない人が多いんですね。

また、衣類という意味だけではなく、生活するスキルを身につけないで育ったため、社会に裸で放り出されたような子もいます。
食べ物という意味だけでなく、食べていくための「職」がない子もいます。
自分のホームだと感じられるような場所や、安心できる大人との関係性を持っていない子どももいます。

そんな状況にあるどんな女の子も「衣食住」がある状態にしていきたいと思っています。

「おなかが減ったから」も大歓迎

――バスカフェをオープンする狙いは?

私たちはこれまでも、家に帰れず街をさまよう女の子たちに声をかけてきました。
ただ、そうやって声かけても、突然のことで驚かれたり警戒されたりして、なかなか相談するなど直接的に関わりを持つことには繋がりません。
女の子たちはいろいろな経験をしているので、いきなり出会った大人を信じてもらうのはなかなか難しいんです。
そういう女の子を屋内に案内するのはなかなかハードルが高いんですが、バスカフェのような半分オープンなスペースなら、より関係性が作りやすいと思います。

女の子たちが生活している場所に、私たちの方から出て行ってカフェを開くことで、困っていることがあったら駆け込んでもらいたい。
カフェという拠点があれば「あそこに行けばご飯が食べられるよ」とか「何かあったら来てね」と案内することができます。
おなかすいたから来るとか、物がほしくて来るとか、コンドームや生理用品も配るので、それをもらう目的で立ち寄るような使い方でも大歓迎です。
そういう風に来てもらって顔見知りになって、なにか困ったことがあった時は危ない大人についていくのではなく、私たちの顔を思い浮かべてほしいと思います。

現実には、街をさまよう女の子に声をかけているのは、搾取目的や性的な見返りを求める、性売買業者や買春者などばかりです。
私たちは声掛けなどの活動を通して、女の子が困った時に思い浮かぶ一つの選択肢になれたらいいなと思っています。

韓国に根付いている「青少年支援バス」

日本では10月から「Tsubomi Cafe」バスが走り始めたばかりだが、実はお隣の韓国ではバスを使った青少年支援活動が社会に根付いているという。
仁藤さんは2017年の9月に韓国での先行事例を視察し活動にも参加してきた。

――バスを使った韓国での取り組みとは?

韓国ではソウルだけで10団体ぐらいがバスを出していると聞いて、「EXIT」という民間団体を視察してきました。
バスを町中に停車して、子どもたちに声をかけ、ご飯を食べさせるなどの活動が盛んに行われていました。

日本では女の子の性的搾取が問題になっていますが、韓国では子どもたちの家出が社会問題になってるそうです。
私たちが訪問したバスは、家出して帰れない・帰りたくない子どもだけでなく、普通の高校生達も含めて一晩で80人ぐらいが集まってきました。
バスでご飯を配る時間が近くなると、もう食べたい子どもが外で並んでいました。
韓国での活動をじかに見て、これは東京にも必要だし有効だと、バスカフェをやる決意を固めました。

バスカフェの撮影や大人の見学は禁止

「Tsubomi Cafe」公式サイトの最後には、少女ではない大人や見学希望者に向けた注意が書いてある。
バスの撮影、当日の差し入れ、スタッフへの挨拶は禁止で、見学も10代以外は不可だという。

――なぜこんなに厳しいのか?

様々な背景を抱えている女の子たちが利用する場所なので控えていただいています。
やっぱり女の子たちが安心して使えることを第一にしたいと思っていますので。

――これからの展望は?

まずはカフェを女の子に知ってもらうこと。
そして、この活動は市民の方のご寄附や思いに支えられているところが大きいので、継続するためにも理解者を増やしていきたいです。

このような活動が必要だと思っている方は私たち以外にも全国にたくさんいらっしゃいますので、今回の事業を参考にしていただいて、日本全国に広まっていったらいいなと思います。


オープン初日には15人の少女が訪れたという「Tsubomi Cafe」。今のところ、新宿は18:00~渋谷は17:00~から、どちらも22:00までのオープンとなっている。


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