サウジで急増する斬首刑! 皇太子は「なぜそんなに大騒ぎになるんだ」

王家内では権力争いの火種がくすぶる

カテゴリ:ワールド

  • 今年中にも200人が処刑! サウジアラビアでは斬首の刑が急増している
  • ムハンマド皇太子は「どうしてそんなに大騒ぎになるんだ?」
  • サウジ王家では歴代権力争いの火種がくすぶり続けている

国際社会の反響に驚く皇太子

死亡したジャマル・カショギ記者

「これがどうしてそんなに大騒ぎになるんだ」
サウジアラビアのムハンマド皇太子が、トランプ大統領の娘婿で旧知のジャレード・クシュナー顧問に電話でこう言ったという。

英国紙デイリーメール電子版が伝えたもので、サウジアラビアのジャーナリストのカショギ氏が総領事館で殺害された事件の波紋が広がっていた頃の10月10日、ムハンマド皇太子はクシュナー顧問に電話をかけ国際社会の否定的な反響に対してこう言ったと伝えた。

同皇太子がカショギ氏の殺害にどれだけ関わっていたかはともかく、反政府的な言論活動をしていた人物が殺されたのをなぜ「大騒ぎするのか」と理解できなかったのかもしれない。

斬首の刑が急増するサウジアラビア

サルマン国王(左)とムハンマド皇太子(右)

というのも、サウジアラビアでは反政府活動は死刑が相場で、それも多くの場合公開の場で斬首の刑が執行されることを考えると、ムハンマド皇太子にしてみればサウジアラビア式の正義が行われたと考えたことが想像できる。

実は、ムハンマド皇太子が王位継承権を握って以来、サウジアラビアでは死刑つまりは斬首の刑が急増している。国際的な死刑廃止団体「リトリーブ」によれば、サウジアラビアでは、月平均16人が処刑されており今年中に200人に達し、サウジアラビア建国以来の記録になりそうだとか。

同皇太子が残虐極まりない指導者ということも言えるが、逆にそこまでしないと政権が維持できないという事情もあるように思えるのだ。

ムハンマド・クーデター未遂事件も

ナイ―フ王子(左)とムハンマド皇太子(右)

今のサルマン国王の下では、初め国王の甥のナーイフ王子が王位継承権第一位の皇太子だったが、昨年6月国王は自身の息子のムハンマド王子を皇太子に昇格させる勅令を発して次の国王とすることを決めた。

皇太子を解任されたナーイフ王子は海外への移住も許されず自宅軟禁状態におかれ、その後同王子に近いと見られた王室関係者などがリッツカールトンホテルに幽閉され資産を没収されるということも起きたが、これでもムハンマド新皇太子の立場が確立したわけではなかったようだ。

今年4月、サウジアラビアの首都リアドの国王宮廷付近で激しい銃撃音が響き銃弾が航跡を曳きながら飛び交う様子がユーチューブに投稿された。サウジ政府は不審な飛行物体に対して射撃したものと発表したが信ずるものは少なく、イランのマスコミはムハンマド皇太子に対するクーデター未遂事件だったと伝えた。

事実、同皇太子はその後2ヶ月間姿を見せず死亡説も流されたが、銃撃で負傷したのかほとぼりが冷めるまで身を隠していたという見方が有力だ。

歴代続く王家の権力争い

2代目国王サウード・ビン・アブドゥルアズィーズ(中央)

サウジアラビア王家の権力争いは今に始まったことではない。2代目のサウード国王は異母弟で後に3代目になるファイサル国王に宮廷クーデターで追われ、そのファイサル国王は甥の王子に暗殺されている。

サウジアラビア王家で権力争いの火種がくすぶっているのであれば、ムハンマド皇太子は何時自分も追われる立場になるか気が気ではないのかもしれない。そんな折のカショギ氏殺害事件をめぐる批判を「大騒ぎしすぎる」と言うのは賛成しないが理解できないこともない。

(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

(イラスト:さいとうひさし)

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