港区vs住民は他にも…一等地・南青山で「障害者施設」の建設も住民の反対で9年間店ざらし

  • 南青山の「児童相談所」問題で賛否両論飛び交う
  • 実は同じ南青山では住民の反対で、「障害者施設」も9年間動きなし
  • 求められるのは行政の説明力か?それとも住民の寛大な心か?

東京都心の一等地、南青山をめぐり騒動が起きている。

区がここに児童相談所の建設を計画したところ、一部住民が反対。激しい怒号が飛ぶ住民説明会の様子が報道され、大きな反響を呼んだ。ネット上などでは反対住民の意見に激しい反発があった。

実は、南青山の騒動の現場はここだけではなかった。同じような問題を抱える、もう一つの騒動の現場を「報道プライムサンデー」が取材した。近隣住民から反対の声が上がり、必要な施設が造れない…。

21日放送の「報道プライムサンデー」では、日本で幾度となく繰り返されてきたこうした問題の解決策を探った。

「田町とかあるじゃない」怒号飛び交う南青山住民説明会 

「なんであなたが答えられないんですか?ちょっと待って、あなたの何の役職ですか?」
「児童相談所の人間誰だよ!」
「田町とか広いところいっぱいあるじゃない」

今月14日、東京・港区区役所で行われた住民説明会では怒号が飛び交った。

議論の的となっていたのは高級ブランドが立ち並ぶ最先端の街、表参道の一角にある東京都港区南青山5丁目の超一等地。港区はこの敷地面積約3200平方メートルの土地に、虐待された子供の保護などを行う“児童相談所”が入る施設を建てる計画を進めているのだが、これに対し一部の地元住民が猛反対しているのだ。

住民の中には法を犯した14歳未満の子供を一時保護することに対し、「非行少年、非行相談っていうのがございましたけど、宿泊する場所があるっておっしゃいましたよね?その時の管理はきちんと守られるんでしょうか?」と不安を募らせる人もいた。その他、100億円という事業費が妥当なのかという声や、建設計画の説明不足を指摘する声が上がるなか、南青山ならではの意見が上がった。

「この周辺のランチ単価を知ってますか?1600円ぐらいするランチ単価のところで、何で親がここの施設に子供を連れてくるんですか」

南青山のランチ事情を力説する住民。

「この街ではネギ一つ買うのも紀ノ国屋に行くような状況で、保護される方々はすごく生活に困窮されている方だと聞いてますので…」

確かに、10月20日、港区北青山にある紀ノ国屋で長ネギを買ったら、3本セットで579円と割高だった。港区の平均所得は1,115万755円と全国市町村ランキング1位(2017年総務省調べ)、社長が住む町ランキングでも2,488人で全国トップ(2017年東京商工リサーチ調べ)。
こうしたエリアに児童相談所はふさわしくないという議論が巻き起こっていた。

児童相談所が近所にあると、地域の価値が下がる?

住民の中には「子供の施設を港区が作ろうとしていることに関しては賛成です。ただ、その、表参道の超一等地にあそこは完全な商業施設な訳ですよ。そこにそういう物を持ってきたときに港区としての価値が下がるんじゃないかと思うんです」という声が聞かれるが、こうした住民の意見が報道されると、ネット上には「大人のわがまま」「逆に品位を落としてる」「不幸な子供を蔑む町」「田町を馬鹿にするな」など批判的な声が多く上がった。

勿論、実際、説明会に参加していた住民のすべてが児童相談所に反対していたわけではない。
ある住民は「そういう子供に対してあまり温かい気持ちを持っていないっていうことに関してすごく悲しい気持ち」「だって子供大変じゃない今。昔とは違って。一人で育てられないじゃない親は。社会が育てないといけないんだよ」と、児童相談所の建設に理解を示している。

そうした事情は理解しながらも、あの場所に児童相談所の建設を計画する理由を、港区の小倉里枝子区議はこう語る。
「適切なもの(土地)が青山にしか出ていない。今後何年待ったとしても、あれだけの大きさの土地が出る可能性は限りなく低い」

騒動は他にも!障害者施設建設計画も9年間動きなし

混迷する都心の一等地における児童相談所の建設騒動。実は南青山の土地を巡る騒動はほかにもあった。

児童相談所建設でもめている南青山5丁目から、直線距離で約1.4キロにある南青山2丁目に空き地がある。2丁目は、華やかな商業施設の5丁目とは違い、閑静な高級住宅地だ。
最先端のマンションが建ち、高いものでは一部屋5億円や7億円の価値がある分譲マンションもあるという。空き地があるのは、そんな超一等地、青山通りから20メートルの場所だ。

およそ200坪あるこの土地も、港区が15億円で国から購入したものだ。購入したのは2009年、今から9年前だ。この土地に現在の計画では障害者のグループホームを建設予定だという。

障害者のグループホームとは、知的障害者と精神障害者が生活し、日中は、この場所から通勤できるようにサポートする場所。港区は、グループホームの他、高齢者の居宅施設や防災備蓄倉庫などが入る5階建ての複合施設を考えているという。

しかし、土地を購入してから9年という時間が経過しているが、建設に着手できていない。その理由はやはり「一部住民の反対」だった。反対する住民はその理由をこう話す。

「青山通りから数十メートルしか入ってないところで、あえてここに建てなくてもいいんじゃないの?」「(貸している部屋の)家賃をちゃんともらっているのに、『こんな所があるから家賃下げてくれ』っていわれたら困るでしょ。やっぱり怖い」

「なぜここに?」と、南青山での必要性に疑問を感じる住民も少なくない。しかし一方で、「私は差別なくて良いと思っているんですね。一等地だから評価が下がるとか、そんなの関係ない。価値が下がるんだったら、固定資産税が安くなって良い。福祉っていうのは、我々も面倒見てもらうんですよね。困っている人もいるんで」と、賛同する声もある。

2丁目の住民によると、障害者グループホームの建設をめぐり、賛成と反対で町内は分断されてしまっているという。

鎌田實氏(諏訪中央病院名誉院長)

鎌田實(諏訪中央病院名誉院長)
とても悲しくなりますね。
セレブの方には児童相談所関係ないかというと、豊かな人たちの中でも養育でいろいろな問題を抱えているので、DVなどの問題が起きることもある。少子化問題の中で子供をどうやって大事に育てていくかと言うことが大切なので、冷静になってほしいです。
児童相談所はこれまでも数だけではなく、色々な問題がありました。南青山で児童相談所ができたとしたならば、もっと地域に開かれた児童相談所を作るなど、モデルになるようなものを作ってほしいです。

牧野知弘氏(オラガ総研株式会社代表)

牧野知弘(オラガ総研株式会社代表):
私は青山の地区で、今再開発のお手伝いをさせてもらっていますけれども、実際に住民の方とお話しすると、反対の声を上げているような方は殆どいないですよ。
南青山は、商業施設があってブランドがあってと言うイメージを世間の多くの方がお持ちですけれども、青山通りから一本入ると閑静な住宅街で、昔から暮らしている方々が多い。集会で出ている意見と言うのは、非常に偏った意識が垣間見えます。私も不動産を多く扱っていますが、青山の1000坪の土地が児童相談所になることで、周辺の土地の価値が下がることはあり得ないです。むしろ青山はそんなことで下がる程度のブランド力なのか?と疑問に思います。

誤ったブランド意識は新住民に?行政手法に問題はないのか

牧野知弘:
こうした誤ったブランド意識というのは、新しい住民の方に多いですね。たくさんお金を払ってきたんだからこのブランドは守らなければいけない、こういった雰囲気も感じました。

荻原博子氏(経済評論家):

荻原博子(経済評論家):
こうした施設を作ることは、逆にブランド価値をあげることに繋がると思います。暮らしやすい自治体ということですからね。

片山善博(早稲田大学教授):
港区だけでなく、行政はこうした地元との交渉が下手なんですね。自治体の特性として物事を決めてから、地元との折衝に当たるんです。

佐々木恭子:
住民たちの間には「私たちは置き去りにされた」「何も知らされていなかった」という声もあります。

片山善博氏(早稲田大学教授)

片山善博:
日本の行政は基本的に先に決めて、根回しして“結論ありき”で住民説明会を行う。そうではなくて、決まる前に賛否両論が出る、そういう場が必要なんですね。それが本当はアメリカでいえば「議会」の場なんですね。そこでいろんな意見が出て、「それではこうしよう」と議会で決めて行くのだが、日本にはそれがないんです。

パトリック・ハーラン:
アメリカでは公共事業などが行われる前に必ず公聴会、ヒアリングなどが行われるのが大前提なんです。
昔お父さんから「夫婦円満の秘訣は、何かを決めてから報告するのではなく、何をしたいかをまず相談しなさいよ。『こんなことがしたいんだけど?』と疑問形で相談すれば、大体できるよ!お父さんは3回も結婚しているからわかるよ!」と言われたのを覚えています(笑)。

片山善博:
やはり議会、公聴会で話し合うべきなんです。事前に話して、いろんな意見が出てじゃあ、こうしようとかアイディアが出てくる。
しかし先ほどVTRで出ていた議員さんたちも、すでに結論を決めてしまっているんですよ、根回しも受けているから。議会のあり方が問われる一例だと思います。


求められるのは行政の説明力なのか?それとも住民の寛大な心なのだろうか?
日本で幾度となく繰り返されているこうした問題は、そろそろ抜本的な解決方法を見出すべきだろう。

(報道プライムサンデー 10月21日放送より)

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