“売れる武器”を堂々と製造するアメリカへ INF核廃棄条約離脱の狙い

カテゴリ:ワールド

  • トランプ大統領が20日、INF=中距離核戦力全廃条約からの離脱を表明
  • アメリカが公に”売却可能武器”を作ることで、世界の武器取引は活性化
  • 中間選挙を控えたこの時期に脱退するその狙いは?

INF離脱表明

1987年 INF締結 

トランプ大統領は20日、INF=中距離核戦力全廃条約からの離脱を表明した。1987年にアメリカと旧ソ連が結んだINF全廃条約は、射程500キロから5500キロの地上発射弾道ミサイルと巡航ミサイルを全廃すると定めたものだ。今回のトランプ大統領の意向を受けてボルトン大統領補佐官はロシアの首都モスクワを訪問し、22日と23日の2日間、条約からの離脱について協議を行う予定で、プーチン大統領とも会談する見通しだ。

作る、使う、そして“売却可能な武器”へ

軍事力を増強させている中国

INF条約の下では、デリバリー・システムとしての中距離弾道ミサイルないし巡航ミサイルの開発等が禁止されている。核弾頭を搭載すれば即、中距離核ミサイルになるからだ。IFN条約から離脱すると、アメリカは中距離ミサイルを堂々と合法的に開発できることになる。『空母キラー』など、中国の中距離ミサイル戦力への対抗という面があるだろうことも間違いない。
同時に、アメリカが使うためという面とともに各国に売却できるという点に注目したい。世界には通常弾頭の中距離ミサイルへの需要はそれなりにあると思う。イランが持っている弾道ミサイルに恐怖を感じている国、サウジアラビアとか、そういうところは対等な対抗手段を持ちたいと見込まれるからだ。

パンドラの箱を開ける?

今まではINF条約の制約によって、アメリカが売却可能な武器リストの中に中距離ミサイルというのはなかったわけだが、それが新たにリストに加わってくることになる。世界の中距離ミサイルの供給が増えることによって需要も増えてきて、ある意味、それだけ軍事的な不安定化が進むけれど、アメリカの武器ビジネスは儲かるという側面もあると考えられる。

例えば、中国とかイラン、ロシアに対して、軍事的な脅威を感じている国がアメリカ製の中距離ミサイルを購入するということが考えられる。核弾頭つきはあり得ないが、通常弾頭のミサイル軍拡のパンドラの箱を開けるようなことになるのではないかと思う。世界はより危なくなるということに繋がるのではないか。

記者暗殺疑惑から目をそらす為に

サウジアラビアのジャーナリスト ジャマル・カショギ氏

タイミングについて言うと、まずサウジアラビアのカショギ記者の事件との関連だ。トランプ政権としてはこれ以上カショギ記者の事件に関して痛いところを探られたくない、政治決着への批判も勘弁してほしいというところがあるので、世界の目をINFの問題へそらしたいという気持ちはあると思う。

もう一つは、このINF条約から離脱するということによって大統領はロシアに対して非常に強い態度で臨んでいて、安全保障問題で強い決定が出来ているとアピールできる。それはトランプ大統領の弱点であるロシア疑惑に関し、ロシアと特別な関係があるんじゃないかという疑念に対する否定にもなる。選挙前にこういう表明をするのはある意味、計算ずくだといえる。

ベストタイミングを狙って

ロシアのINF条約違反についてはもう4年越しの長い期間、色々取りざたされてきた話だ。それをあえてこのタイミングで「離脱表明」をやってみせたということは、中間選挙まで2週間あまりなので、選挙にらみの計算があってのことと考えるのが自然だ。トランプ大統領にしてみれば、経過時間という意味では中間選挙の後に表明しても大差ない話だ。いままで4年以上も曖昧にしていた案件ではあるわけだから。

だからこそ「選挙直前」というタイミングは、トランプ大統領にとって一番都合のいいタイミングで打ち出したという印象を持った。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)

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