私の両親はマミーとママ= “法の下の平等” を考える

カテゴリ:テクノロジー

  • カナダでは同性婚も正式な婚姻として同等の保護
  • “レインボー・ドレス”が訴える世界の実態
  • 同性婚は「離婚率低下とLGBTの若者の自殺を減少」

3歳女児の両親は女性同士の夫婦

3歳の女の子がいる。
名前はクロエ(Chloe)ちゃん。念のため付け加えるとアクセントがoの部分に来る。
日本語としてはクローエちゃんと表記する方が正確かもしれない。

そのクロエちゃんはカナダの外交官の娘さんで、自分の産みの親を英米等で一般的なマミー(Mummy)と呼び、マミーの配偶者をママ(Mamma)と呼んでいる。他の家庭にダディー(Daddy)が居ることを認識したのは最近だという。

そう、クロエちゃんの両親は女性同士の夫婦である。

クロエちゃんは養子として迎えられたのではなく、両親の一人が人工授精で出産した実子である。
筆者はクロエちゃんを直接知らないが、クロエちゃんのことを話す時のマミーの愛情溢れる表情から察するに、大変幸せにすくすくと育っているのだろうと思われる。

*画像はイメージ

カナダでは同性婚も正式な婚姻として同等の保護

カナダでは同性婚が認められていて、以下、筆者も出席した先日の勉強会で仕入れた情報を受け売りすると、14歳以下に限って言えば1万人余の子供が同性カップルの下で暮らしているそうだ。
そして、こうした子供を持つ同性カップルのほぼ半数が、カナダの法に基づく正式な婚姻関係にあるという。

法律的な話に転じると、カナダでも以前は結婚は男女だけのものであった。
中央大学法科大学院の佐藤信行教授によれば、婚姻は“voluntary union for life of one man and one woman”とされていた。訳せば「一人の男性と一人の女性による合意の下での生涯の結合」になるのだろうか。
これを2005年に改め“voluntary union for life of two persons”「二人の人間による合意の下での生涯の結合」に変えたのだそうである。

以来、同性婚もカナダでは正式な婚姻として同等の保護を受けることになった。

21世紀に入ってからのことだが、今や世界の先進国では同性婚容認の流れが定着している。
G7の国に限って言うと、同性婚ばかりか同性カップルによる事実婚も認めていない国、法的に保護していない国はもはや日本だけだそうである。

先進国では同性婚容認の流れ…日本は?

*画像はイメージ

我が国では憲法第24条1項に、婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立し」と定められており、これが同性婚を容認しない根拠とされている。
しかし、同じ憲法第14条1項は、すべての国民は「法の下に平等」で人種・信条・性別・身分や門地で差別されないと定めている。
筆者も「法の下に平等」は近代民主主義国家の大原則の一つと教わった記憶がある。

同性婚容認の是非を議論する際には、この「両性の合意のみに基づいて」という原則と「法の下に平等」が相反してしまう訳だが、時代は「法の下に平等」を優先する流れになっていると感じる人間は筆者を含めかなり多いはずである。
寛容の精神を大事にし個を尊重するという観点も考慮すれば、それが自然な流れであろうと思う。

ただ、世界全体を見渡すと、事態はもっとずっと深刻である。

“レインボー・ドレス”が訴えること…

この巨大でゴージャスなドレスを見ていただきたい。
アムステルダム・レインボー・ドレス(The Amsterdam Rainbow Dress)と名付けられたこのドレスは重さこそ10キロとそれ程でもないが、裾の径が約16メートルもあり、モデルの着付けには最低でも2人の介添えが必要という。

もうお気づきの方もいると思うが、生地として使われているのは80枚の旗で、うち5枚はアムステルダム市とLGBT運動のシンボルとなっているレインボーの旗、そして、残る75枚はLGBTを違法とする国の旗という。

ILGAという世界的な関係団体の最新のまとめでは、LGBTを違法とする国は現在73という情報もあるのだが、そのうちサウジやイランなど8か国では最高刑は死刑、14か国では14年以上終身までの懲役刑の対象になるという。

言うまでもないことだが、LGBTというだけで違法とされ、死刑や投獄の恐れまであるとはまさに言語道断である。
そして、こうした非寛容の国の中に過激思想の発信地になっている国が含まれていることは偶然の一致ではない。
アムステルダム・レインボー・ドレスはこうした世界の実態を訴え、直ちに是正するよう求める運動のシンボルの一つとして作成されたのである。

同性婚は「離婚率低下とLGBTの若者の自殺を減少」

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LGBTの権利擁護に携わるカナダ人の著名弁護士アレクサンダー・ドミトレンコ氏によれば、人口の約7%がLGBTと推定されているカナダでは、同性婚は異性間の伝統的な婚姻を含めて離婚率の低下をもたらし、10代のLGBTの若者の自殺を減少させたという。
また、様々な関連イベントの活性化という経済的効果ももたらしているという。
さらに、養子を迎え入れる同性夫婦が増えることで、経済的にも安定した環境で育つ子供が増加する期待もできるという。

視点は異なるし、深く立ち入るつもりもないが、養子縁組が活発或いは普通の事になれば、副次的に中絶を減少させる効果も期待できるのではないかとの見方さえあるという。

映画「イミテーション・ゲーム」にも描かれたように今や先進国とされる国でもかつてLGBTが違法だった時代がある。
だが、そんなのはもう古い。世界の何処でも寛容の精神が勝る時代が一日でも早く到来することを願って止まない。


(執筆:フジテレビ 解説委員 二関吉郎)