キーワードは「人とロボットの“協働”」 テクノロジーで人手不足は解消できるのか?

ワールドロボットエキスポに見る最新技術

カテゴリ:国内

  • 産業界におけるロボットの進化がすさまじい
  • 画像認識×ディープラーニングで「判断」できるロボットへ
  • 人とロボットの“協働”作業で生産性がアップする理由

テーマは“人手不足”解消

10月17日から21日まで東京ビッグサイトで最先端のロボット技術が集まる展示会「ワールド ロボット エキスポ」が開催されている。

産業界でロボット化が進んでいることは周知の事実だが、実際に展示会を取材してみると、日本の産業界が共通して抱える深刻な課題が見えてきた。それは「人手不足」。自動車工場、家電製品工場などの大規模施設の製造業はもとより、物流倉庫の仕分け作業の現場、さらには地方や中小の食品工場などが深刻な人手不足に悩んでいる。特に物流倉庫や食品工場は、ネット通販やコンビニの利用者が増える中、ロボット化の導入は喫緊の課題だ。

「判断できる」ロボットへ

基本的にはロボットにできることは、いわゆる「定型作業」と呼ばれる、決まりきった繰り返し作業と言われてきた。技術の進化により定型作業のなかでも「できる」作業の幅が広がってきている。
画像認識技術の向上などに加え、AI・ディープラーニングを掛け合わせることで、少しづつではあるが自分で判断することができるようになってきている。

オムロン社 卓球ロボット フォルフェウス

おなじみのオムロンの技術の粋を集めた卓球ロボットf「フォルフェウス」。このロボットは、対戦相手の動きやピンポン玉の軌道を複数のカメラで認識し相手の卓球の技術レベルを判断する。過去に多くの相手と対戦した蓄積データから、対戦相手のレベルに合わせた適切な球をラケットを制御して打ち返すことができるという。

グローリー社の「お菓子箱詰め 自動化ライン」

他にも、お菓子の箱詰め作業の自動化ラインを想定したグローリー社の展示では、3体のロボットが並んでおり、右側のロボットが、箱を平らな状態から立体化。
真ん中のロボットが画像認識技術により、所定の位置にお菓子を詰め。最後に、一番左のロボットが、箱にふたを閉めるという作業を流れ作業で行う。素人目に見ると「たったこれだけ?」と思ってしまう作業だが、関係者に取材すると、これらの作業が機械化されるだけで、工場の現場ではかなり喜ばれるという。

トレンドワードは「協働」

今回の展示会場を回っていて、多くの企業が掲げていたワードがあった。それは「協働」。各ブースでも人とロボットが一緒に働いているデモンストレーションが数多く見られた。素人目に見ると、何が新しいのかわかりにくいのだが、関係者に話を聞くと、この「協働」は画期的なことだという。

産業界では国際標準化機構(ISO)というものがあり、環境や安全、生産性などについて様々な基準がある。その基準では今まで、安全性の観点からロボットは決められたエリア内で作業を行い、人間がエリアに入ると停止をすることが原則とされていた。それが2016年に新たな基準が追加され、ある一定の条件を満たすことで人と、ロボットが「協働」できることになったという。産業界では、このISO新基準の追加と、センサリング技術等の向上が相まって、今までできなかった人とロボットの「協働」が実現しつつある状態なのだ。

FANUC社 重い部品をロボットが支え人間が細かい作業を行う「協働」のデモンストレーション

工場内では、材料を完成品にするまでに、数多くの「定型作業」と「非定型作業」の工程が複雑に入り組んでいる。その工程の中には、重たいものを支えながら、細かい作業を行うという、人と機械が一緒に行ったほうがよい工程も数多く存在している。今まではできなかった人と機械が「協働」することで、大幅な労働者の負担軽減や、生産性の向上につながっていくというのだ。

残された課題は「価格」

各企業の担当者は、自社の売り上げはもとより日本の産業界が直面している「人手不足」という深刻且つ喫緊な課題を何とか技術により少しでも克服できないかと懸命に開発にいそしむ熱意がひしひしと感じられた。

徐々にコストダウンは進んでいるとはいえロボットは決して安い買い物ではない。
ある企業の担当者は、スペックにより価格に違いはあるものの、一般的に一台のロボットを購入するのに数年前までは外車と同じくらいの費用が必要だった。近年、徐々に量産効果などによるコストダウンが進み、数年後には、国産車並みの価格にする目途がつきつつあるという。一方で、実際により多くの中小企業が導入するには、軽自動車並みの値段まで下げることが必要だとも語る。

今まではロボット導入の中心は金銭的に余裕のある大企業が中心だった。近年、人手不足による人件費高騰や各種補助金の拡充を受け、中小企業でも導入するケースが徐々に増えつつあるという。しかし、日本の99.7%を占める中小企業のなかでも、現状、ロボット化の設備投資に耐えうる会社は一部に限られている。技術の進化と量産化のスピードが加速し、協働ロボットの更なる普及が期待される。

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