有名弁当店が店内映像を“ネット生配信”して万引き減った…プライバシーの問題はないか弁護士に聞いた

カテゴリ:話題

  • YouTubeに生配信 服装や顔もはっきり認識できる
  • 店内モニターに映像を公開、「生放送中」のポスターも掲示
  • クレーマーや万引きが減り、売上げが5%アップした

プライバシーが心配なら利用しなければいい

Twitterで1万7千以上のフォロワーを持つ人気の弁当店が、店内の様子を24時間毎日ライブ配信をしつづけて話題になっている。

動画はYouTubeで誰でも見られる状態になっていて、解像度も高いため服装や顔もはっきり認識できるので、プライバシーを心配する声もあがっているが、Twitterの公式アカウントでは「(プライバシーを)侵害されたく無い人は当店を利用しなければいいだけの話です」として今まで問題なしの姿勢を貫いている。

ただYouTubeは、動画を見ながらチャットができる状態になっていて、特徴的な髪型の人物や体の大きな人が映ると「悩んでるね~」「もう一個買おうよ」など面白がっているような言葉が飛び交っていた。

激安爆盛り弁当で人気の有名店

動画配信を行っているのは、JR亀戸駅から徒歩5分ほどの場所にある「キッチンDIVE」という24時間営業の弁当店。
この名前を聞いてピンときたあなたは、相当ネットの話題に詳しいか、かなりの食いしん坊か、どちらかではないだろうか?

「キッチンDIVE」といえば、おかずをぎゅうぎゅうに詰め込んだ「1キロ弁当」や、子供の頭ぐらいありそうな「1キロおにぎり」が有名。
さらには要予約の「3キロ弁当」というユーチューバーも挑戦したことがある激盛りメニューがある一方、200円の激安弁当も店頭に並んでいる。
また時には、お店のツイートにたくさんのRT数が集まれば無料や破格の値段で弁当を配るイベントを開いたりと、今まで様々な話題を振りまいてきた。

1キロおにぎり 出典:公式Twitterアカウント

そして今度は、8月からYouTube生配信をし始めたのだが、そのタイトルはなぜか「NHK 72時間 ドキュメント キッチンDIVE LIVE【KitchenDIVE】」となっている。
某公共放送の番組名とそっくりだが、「N」はニコニコ、「H」はハッピー、「K」はキッチンDIVEの頭文字で、72時間以上放送している意味だという。

何かと突っ込みどころが多いが、そもそもなぜ店内の映像を生配信しているのか?公開以来どんな変化があったのか?
テレビ局からも相次いで取材が入っている「キッチンDIVE」のオーナー、伊藤慶店長に聞いてみた。

店内モニターに映像を公開、「生放送中」のポスターも掲示

――店内をネット配信しようと思ったきっかけは?

去年の10月ぐらいに、渋谷スクランブル交差点のネット配信を見て「面白そう。これと同じことをうちのお店でできたらいいね」とか「お弁当の在庫確認が出来たらお客様は便利だ」とか思っていました。
すると今年の4月、ニコニコ超会議に出るとき、お店にカメラをつけて放送することになったんです。
その時は20万人以上の人が見てくれて非常に評判が良かった一方、クレームみたいなのは一切なかったんですね。
20万の人が見ても文句が来ないなら大丈夫だろうということで、8月の後半ぐらいからネット配信を始めました。

ネット配信していることを知らせるために、「キッチンDIVE」では、店の外から見える位置にパソコンのモニターを置いて、生配信中の店内映像を公開。
さらに店頭と店内のポスターで「YouTubeLiveにて生放送中」と告知している。

――店頭や店内のポスターは誰かに相談して置いたのか?

先ほど話した、渋谷スクランブル交差点の動画を見た後、去年の10月ごろからTwitterフォロワーの皆様とリアルタイム配信について議論を重ねてきました。
そこで肖像権やプライバシー権を守るため、店頭や店内に告知ポスターを置くことや、パソコンで動画を流し続ける対応を考えました。

クレーマーや万引きが減り、売上げが5%アップした!

――ネット配信をしてどんな変化があったのか?

カメラをつけてみると、トラブルメーカーというか難癖をつけてくるクレーマー気質のお客さんが減りました。
たとえば「ご飯大盛りを無料にしてくれ」とかそういうことを言う人が、今までは1週間から10日に一回ぐらい来たのが、月に1回もなくなったように感じています。
そういう人って、どこでもクレームをつけるものですが、わざわざ監視カメラみたいなものがある、うちの店には来ないのでしょう。

あと万引きが減ったというのも事実です。
当店は24時間営業ですので、夕方前のヒマな時間帯や夜中などに1日1000円前後万引きされていたんですが、被害は激減しました。


――本当にあんなでっかい弁当が万引きされていたのか?

当店はオープンキッチンですので、店員は接客だけでなく弁当作りに集中してることが多いんです。
弁当を作っているとき盗むのは難しくないのでしょう。


――その結果、売り上げは変わったのか?

YouTubeのライブ配信やってから5%ぐらい売上が上がりました。
お客さんには「YouTubeの動画を見たらかつ丼があるので来ました」というようなことを直接言われますよ。
あとYouTubeを電車の中で見て「DIVEに行ってみようか」と思う人もいて、来店のきっかけになっていると思います。

うちのお店には、お弁当がだーって並んでて、1時間当たり20~30人のお客さんが来ていっぱい売れるので、要はバーゲン会場を映しているようなものだと思います。
賑わうバーゲン会場を見ていると自分も買い物に行きたくなることがあるように、お弁当がいっぱい並んでいるところを見ることがお客様の購入動機になると思うんですよね。

プライバシー問題 弁護士の見解は?

動画配信は伊藤店長にとっていいことだらけのようだが、店の中を公開する行為は本当にプライバシーや肖像権の侵害にならないのだろうか?
飲食店の問題を専門的に扱う横浜パートナー法律事務所の石﨑冬貴弁護士に聞いてみた。

――キッチンDIVEの動画配信をどう思うか?

基本的にどの人間にも「みだりに撮影されない権利」、「それを公表されない権利」があるわけですが、たとえばテレビ中継とかで渋谷のスクランブル交差点が映っても文句を言う人はいないし、誰かが訴えたとしても認められることはないわけです。

要するに、撮る場所とか、撮り方とか、撮る目的とかで、問題になるかが変わるんですね。
渋谷の交差点を天気を見る目的で撮っているのは問題ないけど、だれか個人をずっとズームしたり、つけるようなことをするとアウトになるわけですよ。

 今回のような小売店の中はどうかというと、もともと店内は多数の人が出入りするスペースですから、ある程度映り込んでもやむを得ないだろうと思われます。
また、基本的には陳列棚を撮ってますから、これも、お客さんの顔に向けるよりはリスクは低いと思います。

加えて、決定的なのは、撮影中だということをポスターなどで示していることです。
ネット上を見ても、多くのお客さんが生配信をしているお店だと理解しているようで、そういう意味でいうと同意があれば肖像権の問題は生じないわけです。

とはいえ、画質がいいので、よく見ると誰が何を買っているか分かってしまいます。
人によっては「ダイエット中にからあげ弁当を買っているのを見られなくない」という人だっているわけです。そうすると不安感を覚えたり、嫌がって文句を言う人もいるでしょう。


――お客さんが訴える可能性は?

裁判まで起こすとは思えませんが、クレームが入る可能性はあるでしょう。
ただ、お店の方もツイッター上で呟いていましたが「嫌なら来るな」ということなんですね。
お店は「撮られるのが嫌な人は来ないでください」と、出入り禁止にすることもできるわけです。
だから、ちゃんと入店時に同意を取っておいた方がいいということにつながります。

「ポスターに気がつかなかった」とか「撮影してるなんて知らなかった」とか「なんで勝手に撮るんだ慰謝料払え」などと文句を言われる可能性もあります。
そのために「ちゃんと同意を取っていた」と言える状況を作っておく。
気づかなかったと言われないぐらい大きくバーンと「撮影中です」と書いておけばそれで済む話です。
お店側にアドバイスするのなら、今のポスターより、もうちょっと放送していることを分かりやすく表記したほうがいいかもしれません。


――逆に、訴えたら勝てる?

仮にお客さん側から相談をされたら、「そこまでしなくてもいいんじゃないですか」と言うと思います。
肖像権侵害についての慰謝料は、せいぜい数千円とか数万円の世界なんです。
ですから、ハッキリ言って、お店としては、本当に裁判を起こされたとしても、致命的な問題にはならないんですよ。


ちなみに、お店には多くのテレビ局が取材に訪れていたが、YouTubeのチャンネル名にしている本家の「NHK」はまだ来ていないとのことだった。
もしNHKが来ることになったら名前を変えるのか店長に伺うと「あれはジョークで笑いながらやったことです」と豪快に笑い飛ばした。