大盛況だけど…豊洲移転が財布を直撃!?コストUPで悲鳴をあげる業者達

  • 移転による様々な負担増に業者「何ファーストなんだ」
  • 売りの“高度な衛生管理”が守られてない現状が…
  • 豊洲市場の赤字体質に、“既得権益”と“衛生面の不安”の2つの壁

築地からの引越しが完了したばかりの豊洲市場。14日放送の「報道プライムサンデー」では、13日10時にスタートした一般公開の様子を紹介した。

築地から移転してきた人気の飲食店目当てに多くの人が集まり、大行列はゆりかもめ市場前駅から始まり飲食店街、仲卸売り場がある建物に繋がるコンコース部分に出来ていた。
大盛況の豊洲市場だが、「報道プライムサンデー」が取材を進めると、根深い問題を抱えていることが分かった。

築地よりランニングコストが1.5倍!

1922年、大正11年創業の水産仲卸業者・大政本店。ゆでダコの専門業者として96年間営業を続け、今回豊洲市場に移転した。
現在主流となっている蒸して着色料を付ける製法ではなく、タコ本来のうまみと色を引き出す伝統の茹蛸製法を今も追求している。その味を求め食材にこだわった飲食店やスーパーが顧客だ。ゆで加減は手作業で見る。そのための工場を持ち、自社でタコを作っているのは、今では大政本店だけになったという。

そんな日本の食文化を守る仲卸業者が豊洲移転で悲鳴を挙げている。実は築地よりランニングコストが1.5倍ぐらい増えたというのだ。

大政本店のタコの加工場があるのは、築地市場のすぐ近く。今まではタコの仕入れも加工もほぼ輸送費なしで行ってきた。しかし豊洲市場に移転したため、豊洲で仕入れたタコを、一度築地の加工場に輸送、そして茹でた後、翌朝3時に再び豊洲市場に輸送しなければならない。加工場を豊洲付近に作るには、設備投資に数千万円のコストがさらにかかるため、難しいからだ。

そのため往復の燃料費、駐車場代が増え、労働時間も1日3時間ほど増えたという。

こうした悩みを抱えているのは、加工業者だけではない。仲卸から水産物を買いつけ、店舗などへ届ける買い出し業者・藤田水産にも、コストの問題が大きくのしかかっていた。
それが駐車料金だ。築地では駐車場7か所と積荷スペースを月額約11万円で借りていたという。しかし、豊洲では40万8000円と、月額使用料がなんと4倍近くの見積もりになった。しかも、その通達があったのは市場開場の3か月前の7月だったという。結局、借りる時間と面積を減らし30万円以内におさえられたが、藤田博社長の怒りは収まらない。

「どうしてこういう値段になるんだってその根拠を知りたい。『容認してるのか』っていうと東京都は黙ってるし、『利権か』っていうと『違う』っていうし、責任の所在がどこにもない。だけど値段は決まる。不思議だなと。やっぱりお客さんあっての商売でしょ。それをちょっと考えて欲しいな。何ファーストなんだって聞きたいよ」と藤田社長は憤る。

売りものの値段は変えず、駐車場代金が上がった分は、藤田水産自身でカバーしていくというが、豊洲移転によるこうした「コスト増」は各業者を直撃し、消費者に転嫁される可能性も心配される。

業者にコストの負担をかけることになっても豊洲に移転したメリットを、小池都知事は開場セレモニーのあいさつでこう説明した。

「築地市場が抱えていた老朽化・狭あい化といった課題を克服して、高度な衛生管理を実現する最新鋭の市場として出発します」

“高度な衛生管理”が売り物なのに外で積み荷…

世界と戦う最新鋭の市場の高度な衛生管理。その“肝”となるのが、コールドチェーン化だ。市場全体を閉鎖し、一貫した温度管理下で仕入れから出荷まで行うシステム。

しかし、市場移転問題を長年取材してきたジャーナリストの池上正樹氏は「豊洲市場は最新鋭の設備になったと言えるが、中身が築地と変わらない実態だ」と語る。

どういうことなのか?
実は本来コールドチェーンの工場は、トラックの荷台の積み込み部分が温度管理された室内に入り込み、外気に触れずに直接荷卸し、積み込みが出来る仕組みだ。

「報道プライムサンデー」が市場関係者の撮影した映像を入手したところ、水産卸売場棟と思われるエリアで、積荷が屋外で行われている様子が映っていた。他にも水産物が外に山積みとなっている状態もあった。池上氏はこうした状況から、事実上、これはコールドチェーンになっていないと指摘する。

なぜこういう状況なのか?

ある市場関係者は「設計ミスじゃん、どう考えたって。コールドチェーンは、トラックの後ろを普通は囲うの。シャッターが空いてすぐトラックの荷台にならなかったら、コールドチェーンにならない。シャッターとトラックの間があんなに空いてたら、いくらやったって無理だよ」と、設計の段階での不備に憤りを隠さなかった。

確かに市場関係者の映像ではシャッターとトラックの間があいている。ここは冷気のカーテンで温度管理をしているというが、夏場に有効なのか疑問だと専門家は指摘している。

さらに空からの映像を見ると、築地と同じく、閉鎖されていない空間で作業しているように見受けられる。池上氏はこれでは都が謳う「閉鎖型」にはならないという。およそ6000億円を費やし、始まった豊洲市場。

このままで大丈夫なのか!?

赤字体質脱却に“既得権益”が立ちはだかる!?

鴨下一郎氏(衆議院議員・自民党東京都連会長)

鴨下一郎(衆議院議員・自民党東京都連会長)
始まったばかりですし、いろんな声も入ってきますから、もう少し長い目で見てあげたほうがいい気がしますね。まだ3日、4日ですから、これからみんなで努力をする、うまくいくように、こういう指摘を生かして、みんなで努力していけばよい。

佐々木恭子:
ジャーナリストの有本さんによりますと、一番の大きな問題は豊洲市場の赤字体質。東京都の試算によれば減価償却分除いても年間21億円の赤字となる見込みで、この赤字体質を解消してくには2つの壁があるということなんです。その1つは“既得権益”といいますが…。

有本香氏(ジャーナリスト)

有本香(ジャーナリスト):
築地から豊洲に移るにあたって業者が移動したのだが、新たな業者が入ったという話は皆さん聞いていないでしょう。従来通り営業権を持っている業者さんだけが移ったということ。

実際には(築地市場を含む東京都中央卸売市場水産部の)取扱量も、2007年の62万2123トンから2017年の40万7653トンと大きく減っていますが、仲卸業者(水産物部)も2006年には929あったのが655(うち築地市場は596)と大きく減っています。13日現在で築地市場の卸売業者数は492社と、500社を切りました。それだけ少なくなって、半減しているのに新たに業者が入らないのはやはり既得権益。

長年、2代3代やっている業者さん、それはそれで築地のブランドを作ってきた。それは一つのブランドなんですけれども、やはり新たな風が市場に入るのも重要です。東京外の業者さんで豊洲が開くなら入りたいと言っている業者さんもあるんですけど、それを許さないという力があると、減った分はどうなっているか。本来は大家である東京都が、業者の営業権を監察しているのだから営業権は戻すのが筋だが、業者間で助け合いのような形で売買している。東京都のガバナンスの弱さが問題になって、既得権のようなものになっている。業者が減って、高齢化もしている。3年前くらいの調査では仲卸さんの6割くらいが、債務超過に近い状態に陥っている。

東京都は新たな業者を参入させて、後継ぎがいないというところもありますから、ちょっと難しい業者さんにはいい形で引いていただくということも考えなければならない状況だと思います。

江上剛氏(作家・銀行員時代には築地支店長を務める)

江上剛(作家):
築地の仲卸さんの人含めて、市場に関係する人たちは義理堅くて人情が厚くて、自分たちに既得権益をするような人たちばかりじゃないんです。
東京都がコントロールできなかったという話もありますが、戦後の混乱期に自分たちがこの市場を作ってきたという自負があるわけですよ。債務超過も、私が銀行員だった頃も苦しい業者が多かった。新しいところに移転できるかと言ったら、設備投資含めて厳しいところが多かったので、できれば築地に残ってやってほしかった。

財務内容が悪くなった理由というのはバブルになって、閉鎖空間でものすごく価値が上がったんですよ、営業権が何億と。それを担保にして、銀行がマンション作らせたりとか、そういうことをたくさんしたので、銀行にも、時代環境にも問題があった。
仲卸業者たちが既得権益に固執したからというだけで悪くなったというわけではない。問題は流通がどんどん変化しているわけでしょう。市場は建物じゃなくてソフトなんですよ。本当に効率的なシステムを作らなければならない。

鴨下一郎:
豊洲市場は公設ですけど、完全に公営にするわけにもいかない。仲卸さんたちの自治権を認めていかないと活気が出てこなくなる。このあたりのバランスが重要です。
新しい人が入りたい、それを拒むようなことがあれば、その時指導していけばいいけれども、自治権を認めつつ、活気を取り戻してもらうのが一番いい形です。

政治的責任は?計画が不透明な築地の跡地の行方

有本香:
6000億円を豊洲市場に投入しているが、もともとは築地市場の跡地を売却して、足りない部分のお金を充てるという計画になっていました。
しかし、今の小池知事になって移転が延期されて、築地も守るということを言ってしまったために、この計画も今わからなくなっている状態です。業者に築地にまた戻れると思った人もいて、政治的な責任は大きいと思います。

佐々木恭子:
豊洲市場の赤字体質解消を阻む壁の2つ目として、有本さんは“衛生面の不安”を挙げています。

有本香:
HACCP(ハサップ)という言葉を聞いたことがあると思うんですね。国際的に認められた衛星管理の手法です。
今年食品衛生法の中にも盛り込まれました。豊洲市場もこれに対応する仕様にしていこうということだったんですが、古くからやっている築地のやり方が棄てにくい状況にあります。
例えば豊洲市場に木製の道具を持ちこむのはやめる、ところがそうはいかない。古い道具を持ち込むということが起きている。市場の中の業者さんたちの意識改革が重要になってくるんですが、このあたりの指導は東京都が重要な役割を担うと思います。

鴨下一郎:
国と東京都がしっかり連携をとるべきなんでしょう。しかし残念ながら今、うまくいかないので、国と東京都の間の連携がもう少しスムーズにいくといいなと思っている。



巨額の投資で完成した豊洲市場。
しかし近年は流通形態が多様化し、市場そのものの存在意義が問われる中、取扱量の減少が目立つ。その打破のためにも豊洲市場が世界的な市場となることは必須とされる。
東京都はどのようなリーダーシップを見せるのだろうか?

(報道プライムサンデー 10月14日放送より)

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