歩くとゾウの足音がする!? 「迷子防止」で親のそばにいる時だけ“子どもの靴”が楽しく変化

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  • 親の近くにいる時限定! ゾウになって歩いてる感覚などが伝わる面白さで「迷子防止」
  • 親は腕にバンドをつけ、子どもとの距離を直感的に把握できる
  • 担当者「子どもをコントロールせず楽しみながら迷子防止」

逆転の発想! 迷子防止のフットウェア

喜びはもちろん、苦労も多い子育て。
小さな子どもを連れての買い物の苦労といえば、「お菓子がほしい」と駄々をこねる光景が思い浮かぶが、親が最も困るのは、店内を走り回ったり、そのまま目の届かないところへ行ってしまうことではないだろうか。

好奇心旺盛な子どもにとって、さまざまな商品が並ぶスーパーやデパートなどのお店は、絶好の探検場所だ。
しかし、買い物の途中で子どもを見失った親からすれば、見つけ出すのも一苦労、ケガや誘拐の心配もある。
筆者も幼稚園児の頃は弟を引き連れて店内を歩き回り、元の場所に戻れなくなるとサービスカウンターで「母が迷子になった」と伝えて店内放送をお願いし、よく母に叱られたものだ。

そんな、親の「ちゃんとついてきてほしい」という願いと、子どもの「もっと面白いところに行きたい」という気持ちの両方を叶える機能を搭載したウェアラブルガジェットの開発が進められている。

その名も「NOSSY(ノッシー)」

「NOSSY」コンセプトモデル

NOSSYは、子どもの靴に装着するアタッチメントと、親が腕に着用するバンドのセット。
両者をBluetoothで接続することで互いの位置関係を把握し、それぞれに変化を起こす。

親との距離が近ければ近いほど子どもの靴全体が振動し、ゾウになったかのような「ドスンドスン」、水たまりに足を入れたような「チャプチャプ」という感覚を体験することができるというのだ。
さらに、湾曲ディスプレイを搭載したつま先には、感触に合わせてゾウ、水面やカエルなどのビジュアルが映し出されるという。

一方、親のバンドは親子の距離を計測。
子どもの位置がCGで示されるため、その距離を直感的に把握することができ、さらに子どもが感じている振動も同期するのだという。

つまり、子どもは親の側にいるとただ歩いているだけで楽しくなるため、自然と迷子になりにくくなるというわけだ。

親子で「水たまり」の感覚を共有

開発したのは、企画制作会社のドリル、ライオンのイノベーションラボ、慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究所からなる「迷子防止フットウェア製作委員会」。
10月12日からの3日間、札幌駅の地下歩行空間で開催された展示会にNOSSYのプロトタイプを出品し、その機能を一般の親子約130名が体験した。

面白さと安心を備えた NOSSYだが、どれくらいの距離まで離れても大丈夫なのか?
足に伝わる振動と映像のバリエーション数は?
開発に携わったライオン株式会社イノベーションラボの担当者に気になることを聞いてみた。

「機能の有効範囲は10m程度」

腕にコンセプトモデルのベルトを装着する母親

ーーなぜ「迷子防止」のための製品をつくろうと思った?

イノベーションラボは2018年1月の設立当初から、これから先の「未来の生活習慣」をつくっていくことを考え、その中心に来る存在として「子ども」に着目しました。
まさにこれから新しい習慣を身につける過程にある「子ども」自身が直面する生活課題を考える中で、「親の買い物に付き合っている間に迷子になった」という過去の経験にぶちあたり、今回の企画構想がスタートしました。
展示会に参加された方からも、迷子になった子どもを夫婦で涙ながらに探した経験を聞きました。
「こういったものがあったら本当に有難い」という言葉をいただいたこと、楽しくて「外したくない」と泣いたりするお子様が複数いたことに勇気付けられました。


ーー靴に注目した理由は?

ライオンの目指す世界観の中に「前向きに、よりよい生活を実現する」というものがあります。
迷子防止という課題をストレートに解決しようとすると、どうしても居場所を把握してコントロールするという親にとっての利便性が中心に来て、子どもにとっては「無理やりコントロールされる」という後ろ向きな方向に向かいます。
そのため、今回は子どもたち自身が「前向きに」つまり「自ら進んで」、迷子にならない道を選ぶ解決方法が重要だと思い、「楽しみながら」迷子を防止するプロダクトを目指しました。
こうした考えのもと構想を練る中で、自然と子ども達を最も下で支える靴に注目しました。


ーー機能の有効範囲はどれくらい?


10m程度で設定しています。
親が子どもの存在を捉えられる5mくらいから感覚が弱まる変化が起き、親子がお互いの存在を捉えられなくなる迷子状態の10mくらいで完全に途絶えるという仕様にしています。
今後はさらに実証検証を重ねて、精度や方法を高めていきたいと考えています。


ーー障害物によって通信が不調になることはない?

札幌での検証は人通りが常に多い場所で行いましたが、親子が離れても通信の不調は起きませんでした。
次回は、人通りの多さだけではなく、プロダクトの導入が実現化したときに想定される現場での実証実験を行っていきたいです。

ーーアタッチメントの振動とCG映像にはどのような種類がある?

将来的なイメージを表したコンセプトモデルでは、ゾウ・水たまり・バネの3種類を映していますが、札幌の展示会ではゾウ・雪・バネがそれぞれ描かれたシートの上での体験を提供しました。
雪は踏みしめた時の「サクサク」、バネは跳ねるような「ピョンピョン」という感覚を楽しむことができます。
現在の「ゾウ」は、自分の足がゾウの足になったような感覚が味わえるという体験を提供するために「ドスン・ドスン」という感覚のみですが、今後は足音や鳴き声など、アイデア次第で様々な音を自由に追加することが可能です。
また、現在のモデルでは親子の距離で振動の強弱をコントロールしていますが、ビーコンやGPSの使用により、どの場所でどの振動・CG映像・音が味わえるかを決めることもできるようになります。


ーー子どもは元気に動き回りますが、ベルトなどの固定装置は付いている?

靴の感覚を変えるためには、アタッチメントと靴との密着が非常に重要です。
そのため今回の実証実験では、特別に3Dプリントしたクリップ式のアタッチメントで靴にフィットするものをつくりました。
将来的には、よりコンパクトにするためにベルトに感覚を変える薄型の装置を張り巡らせて、それを締める形でサイズ調整と感覚伝達を行いたいと考えています。

「子どもをコントロールせず、楽しみながら迷子を防止」

ーー不思議な名前の由来は?

これまでにない感覚を味わえて、ノシノシと踏みしめたくなるようなプロダクトというところから「NOSSY(ノッシー)」とネーミングしました。
また、親と一緒に買い物に行った時に、「NOSSYしたい!」と子どもが言いやすいワードや音も意識しています。


ーー開発におけるこだわり・苦労を教えてください。

迷子防止に関して、子どもをコントロールするのではなく、楽しく自然に解決するといった逆転の発想を実現することにこだわりました。
技術面では、足の感覚をわかりやすく、子どもが直感的に楽しめるレベルに高めるために何度もテストを繰り返し、苦労しました。

靴に装着するものということで、汚れが気になる人もいるだろうが、「外付けのアタッチメントなので、メンテナンスしやすくなっています」とのこと。
対象年齢は、迷子になった時に自力で戻って来られないであろう小学校低学年までをイメージしている。

製品化や価格については現段階では未定ということだが、より楽しく安全に使えるガジェットを実現するため、親が着用するバンドの改良を進めている。
GPS等を使用することで、現状の距離と感覚の同期だけでなく、子どものいる方角や場所も把握できるようにする方針だ。

生活に欠かせない靴と最先端のテクノロジーを組み合わせた未来の日用品、NOSSYで、親の心配をひとつ減らすことができるかもしれない。