複雑怪奇なり!憲法9条改正の世論 “合憲”でも改憲?“違憲”なのに護憲?

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  • FNN世論調査で自衛隊合憲67%、違憲22%
  • 複雑に絡み、ねじれる「合憲・違憲」と「改憲・護憲」
  • 支持政党別に見ても、意見は集約されず。今後の議論のあり方は… 

安倍首相が新体制で狙う憲法改正への作業加速

10月2日、安倍首相は自民党役員人事と内閣改造を行い、第4次安倍改造内閣を発足させた。安倍首相がこの人事において、特に重視したのが憲法改正を見据えた布陣だ。党の憲法改正推進本部長に、自らの側近であり、憲法改正に対する考え方の近い下村博文元文科相を起用し、党の意思決定機関である総務会を仕切る総務会長には、厚く信頼する加藤勝信前厚労相を配置した。

第4次安倍改造内閣発足(10月2日) いよいよ憲法改正に動き出す…

総裁選挙で石破元幹事長との間で交わされた憲法改正論争が、大差での勝利によって決着したと位置づけ、この秋の臨時国会への憲法改正案の提出に向けた体制を整えたと言える。安倍首相は新体制発足会見で次のように意気込んだ。

「下村憲法改正推進本部長のもと、さらに議論を深めて、作業を加速させていただきたい。
国会の第一党である自由民主党がリーダーシップをとって次の国会での改正案提出を目指していくべきと考えている。その後のスケジュールは国会次第で、予断を持つことはできない。
3分の2で発議をして国民投票の過半数というは大変高いハードルだが、与党野党にかかわらず幅広い合意を得られるように努力をしていくべきだと考えている」

憲法改正への意気込みを語る安倍首相(10月2日)

FNN世論調査に見る憲法改正への国民世論

この憲法改正について、FNNは9月15、16日の両日に行った世論調査で、国民の考えを探った。そこでは安倍首相の描くスケジュール感については厳しい数字が出ている。
安倍首相が、自民党の憲法改正案を秋の臨時国会に提出できるよう目指す意向を示したことへの賛否を聞いたところ、賛成が38.8%、反対が51.1%となり、反対が上回った。

憲法9条 1項「戦争の放棄」、2項「戦力の不保持」「交戦権の否認」

一方、憲法9条の改正の内容についての賛否についても質問した。

憲法9条は1項で戦争の放棄を定め、2項で戦力の不保持と交戦権の否定を定めているが、安倍首相9条の1項2項ともに維持した上で自衛隊について明記する案石破氏2項を削除した上で戦力を保持することを明確にする案を提唱している。

 調査結果では、安倍案を支持する人とと石破案を支持する人が22.2%で並び、この2案以外の9条改正が望ましいとする人が16.4%、9条改正は必要ないとする人が33.0%だった。

この結果については、安倍首相案を支持する人が22%しかいないと取ることも出来れば、9条について何らかの改正が必要だと考える人が6割を超えていると見ることもできる、微妙な数字だと言える。

「9条2項削除・戦力保持明確化」を主張する石破元幹事長

入り組む「改憲・護憲」と自衛隊「合憲・違憲」

そして、調査では自衛隊が合憲か違憲かについても聞いていて、合憲と答えた人が67.1%、違憲と答えた人が22.1%だった。

安倍首相は、憲法に自衛隊を明記する改正を行う理由として、自衛隊が違憲ではないかという論争に終止符を打つことを挙げている。
そうした中で、国民の間に定着している自衛隊について、なお違憲だと答えた人が2割以上いたというのは、安倍首相の主張に一定の説得力があることを裏付ける形になっている。
 
ただ、さらに詳しく調査を見ると、憲法9条改正をめぐる世論が複雑化していることがみてとれる。

9条改正についての質問から導き出される、「改憲か護憲か」の国民の意識と、自衛隊は「合憲か違憲か」についての意識の双方を掛け合わせて分析すると、何が見えてくるか。

それは、憲法9条について、次の割合で大まかに4つの意見があるということだ。

1、自衛隊は合憲 9条は改正すべき 44.8%
2、自衛隊は違憲 9条は改正すべき 11.3%
3、自衛隊は合憲 9条は維持すべき 19.1%
4、自衛隊は違憲 9条は維持すべき 10.3%
(その他 14.5%)

「合憲でも改憲」「違憲なのに護憲」の不思議?

ここで現実よりも論理だけに着目すると、2の「自衛隊は違憲・9条は改正」、3の「自衛隊は合憲・9条は維持」という2つはそれぞれ明確に論理がつながっている。
一方、1の「自衛隊は合憲・9条は改正」と、4の「自衛隊は違憲・9条は維持」というのは、論理的にはやや逆説的で不思議にも見えるのだが、この2つがあわせて55%と半数以上に達しているということだ。

こうなった理由は、そもそも憲法9条と自衛隊の存在自体が矛盾を抱えたまま歴史を刻んできたことが一番だろう。そこに安倍首相が、「自衛隊は既に合憲だけど、より合憲性を高めるために自衛隊を明記する改正を行う」という、現状を「追認」「補強」する意義にとどめた、ハードルが低めの改憲案を掲げたことも要因かもしれない。

そして安倍首相の意見は、上記の選択肢の1と2にまたがっていると言える。安倍首相自身の公式見解は「自衛隊は既に合憲だけど9条は改正すべき」という立場なのだが、「違憲だという人もいるのだから改正すべき」という2の意見に立脚して改憲を提案しているからだ。

その上で、「自衛隊は合憲・9条を改正すべき」という人が4割を超えて最多で、1と2を足すと半数を超えるのは、安倍首相にとっては心強いデータかもしれない。

集約されていない憲法改正に関する国民の意識

一方、もう少し詳しく、9条を改正すべきだという意見を安倍案支持と石破案支持にわけてみてみると、憲法改正に対する国民の意見が、あまりに多様であることが浮き彫りになる。

1、自衛隊は合憲 安倍案で9条改正すべきだという人   18.0%
2、自衛隊は合憲 石破案で9条改正すべきだという人   15.2%
3、自衛隊は合憲 安倍・石破案以外で改正すべきという人 11.6%
4、自衛隊は違憲 安倍案で9条改正すべきだという人   2.3%
5、自衛隊は違憲 石破案で9条改正すべきだという人   5.7%
6、自衛隊は違憲 安倍・石破案以外で改正すべきだという人 3.3%
7、自衛隊は合憲 9条は維持すべきだという人      19.1%
8、自衛隊は違憲 9条は維持すべきだという人      10.3%

この分け方だと、「自衛隊が合憲・9条は維持すべきだ」という人の割合が最も多くなり、1の安倍案で改正すべきという人は18%にとどまるなど、9条改憲派の意識は多様であり、「安倍・石破案以外の改正」を支持する人も1割以上いるなど、意見が集約されていないことがわかる。

憲法改正を進めたい自民党にとっては、こうした改憲派の意見をいかに今後、安倍案に集約できるかが改正実現のカギとなるし、立憲民主党など安倍案での改憲反対派にとっては、改憲賛成派の意見の乱れをいかにつき、改憲そのものよりも「安倍改憲」が相応しくないという世論を広げるかが改憲阻止のポイントになるとみられる。

安倍案での憲法改正に反対する立憲民主党・枝野代表

支持政党別で見ると浮上する意外な数字 党の方針とねじれた層も

そこで、今度は主要な支持政党別に自衛隊の合憲・違憲の割合を見てみるとどうか
自民  合憲76.3%  違憲14.3%
立憲  合憲56.7%  違憲34.4%
公明  合憲66.7%  違憲11.1%
共産  合憲38.1%  違憲54.8% 
支持無 合憲63.0%  違憲25.1%

ここでは、自民党支持者にも、自衛隊は違憲だと考える人が14%もいるのがまず意外で、同じく自衛隊は合憲とする立憲民主党の支持者にも違憲と答えた人が3分の1もいて、逆に自衛隊は違憲という立場の共産党の支持者でも、3割以上が合憲と答えているのは興味深い。

続いて、主要支持政党別に、9条改正へのスタンスを見る

自民  安倍案36.2% 石破案24.6% 両案以外13.8% 改正不要19.5%
立憲  安倍案6.7%  石破案22.2% 両案以外11.1% 改正不要58.9%
公明  安倍案22.2% 石破案16.7% 両案以外33.3% 改正不要16.7%
共産  安倍案7.1%  石破案16.7% 両案以外4.8% 改正不要64.3%
支持無 安倍案12.1% 石破案21.8% 両案以外19.2% 改正不要39.8%

分析すると、自民党支持者の中でも9条改正不要論が2割近くいること、自衛隊は違憲と答えた人が多数の共産党支持者でも、改正不要論が6割以上に達し、「違憲だけど護憲」という逆説的立場が鮮明になっていることが興味深い。また、立憲支持者の間で、安倍案よりも自衛隊の強化につながるとみられる石破案の方が支持されていることからは、改憲そのものよりも「安倍首相の改憲が嫌だ」という、感情的なスタンスも見て取れる。

また、憲法9条改正に抵抗感が強いと言われる公明党支持者でも、改正不要と考える人は1割台にとどまり、「安倍案・石破案以外の9条改正」というあいまいな回答が一番多くなっている。これを見ると、公明党支持者については、9条改正をめぐる立場が今後の議論次第で揺れる可能性があり、国民投票の際には、大きなカギを握ることが予測される。

国立公文書館所蔵

今後の憲法改正議論の行方は

このように、「違憲・合憲」論争と「改憲・護憲」論争が入り組んだ上に、各政党支持者の間でも様々な意見のねじれが存在している憲法9条改正問題。それだけに、丁寧な議論が求められるのは言うまでもない。

戦後日本の平和をもたらしたものは憲法9条なのか、それとも自衛隊と日米同盟を中心とした抑止力なのか。自衛隊を憲法に明記することで何が変わり、何が変わらないのか。今の日本にとって憲法を改正するということ自体が、日本人の価値観や精神性に変化を及ぼすことはあるのか。

論点は多岐にわたるだけに、この秋以降、改憲論議が活性化されるのであれば、ぜひとも骨太の議論を期待したい。

(フジテレビ政治部デスク 髙田圭太)

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