サンプルなしの「昆虫食自販機」が話題… 設置理由は意外にも真面目だった

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  • 設置したのは、“虫嫌い”のバルーンショップ店主
  • 全10種類の昆虫グルメを販売予定。サンプルも準備中
  • 「おすすめはバッタのチョコレート。食感がおもしろい」

昆虫食、はじめました

国連食糧農業機関(FAO)が、世界的な人口増加による食糧危機を乗り越えるための一助になるとして「昆虫食」を推奨していることをご存知だろうか。

タンパク質やビタミンなどを多く含む昆虫は栄養価が高く、アジア、北米、中南米、アフリカ、オセアニアなどで古くから食用とされてきた。
日本でも山間部を中心に、イナゴや蜂の子(ハチの幼虫)などが食されているほか、近年ではセミやカブトムシ、サソリといった昆虫を珍味として提供する飲食店も増えている。

こうした中、 誰でも手軽にさまざまな種類の食用昆虫を購入できる自動販売機が、熊本市に登場した。

その自動販売機は、熊本市中央区にある子飼商店街の近くにあり、一面に昆虫のイラストが描かれている。
30個のボタンが並び、中央には小型モニターも設置されているが商品サンプルは入っておらず、上部には「昆虫食をはじめました」という看板が掲げられている。
さらに、「INSECT EATING VENDING MACHINE(昆虫食自動販売機)」「WORLD STANDARD(世界標準)」「Can you eat? (あなたは食べられるか?)」と英語での表記も見られる。

この自販機を撮影した投稿はTwitterで注目を集め、「熊本は世界の先端を走っているな」「見てるとぞわぞわする」「信州方面から歯軋りの音が聞こえてきそう」といったコメントが寄せられた。(長野県をはじめとする信州地方は、蜂の子や蚕のサナギなど昆虫食の“本場”として有名)

商品サンプルが入っていない上に、不思議な雰囲気のデザインの自販機とあって余計に気になってしまうが、一体どんな昆虫が、どんな状態で出てくるのだろうか? そして、なぜ食用昆虫の自販機が設置されることになったのか?

自販機を店前に設置しているDISCOVER  BALLOONというバルーンショップの店主、友田さんに話を聞くことができた。

虫嫌いだけど…自販機設置を決意させた“ある危機感”

かわいらしいパッケージの「コオロギのプロテインバー」(提供:TAKEO)

ーーなぜ「昆虫食自販機」を設置することに?

友人との会話で、地球が再び氷河期に突入する可能性が指摘されていることや、このまま人口が増え続けると食糧難になるという話を聞いて、このままではいけないと思ったことがきっかけです。
そのような状況に陥った場合、足りない食料を補うものとして虫が注目されているというので、虫は見るのも嫌いだったのですが、食べられるようになろうと。
そして、地元の人たちにも一緒に昆虫食に慣れていってほしいという思いから、今年8月頃に昆虫食自販機を企画し、9月29日に設置しました。
「WORLD STANDARD(世界標準)」など英語で表記しているのは、現在の飽食とこれから起こるであろう食糧危機について、日本人だけでなく外国人にも考えてもらうきっかけになればいいなと思ったからです。


ーー熊本で昆虫食は盛んではない?

曽祖父が蜂の子を食べているのを見たことがありますが、食文化として根付いているという話は聞かないですね。
商店街の人たちも、郷土料理といえば辛子蓮根だと言っています。


ーーどんな商品を購入できる? 価格は?

商品は全10種類を予定しています。
コオロギ入りのプロテインバー(抹茶味とチョコレート味がある。各600円)、コオロギ粉末を練り込んだパスタ麺(1,000円。在庫調整中のため取扱い時期は未定)、バッタとミルワーム(甲虫の幼虫の総称)のチョコレート(各1,000円)、タガメ・コオロギ・ゲンゴロウ・バッタの目・幼虫ミックスの素揚げ(各1,000円)などです。

タンパク質・ビタミン・鉄分が豊富だという「コオロギパスタ」コオロギと思しき粒が確認できる(提供:TAKEO)

「バッタチョコは食感がおもしろい」

ーー商品は自家製?

食用昆虫の商品を販売している国内外のメーカーから仕入れています。タイやヨーロッパにはそういった企業が多いんですよ。
自販機ではやはりおいしいものを提供したいので、すべて自分自身で試食してから扱うことを決めています。
今後、新しい商品を見つけたらラインナップを更新して、いろいろな種類の昆虫グルメを届けたいですね。


ーーおすすめはどの昆虫?

バッタのチョコレートです。
見た目は普通なのですが、食べるとバッタがナッツのようにザラザラとしています。
味はチョコレートが強いですが、おもしろい食感が加わっておいしいです。


ーー試食を重ねて虫嫌いは克服できた? 家族の反応は?

以前よりだいぶ慣れてきたように感じます。10種類以上の昆虫を食べたので、見るのも辛いということはなくなりました。
私も「自然」に近づけたようでうれしいです。ゴキブリは相変わらず苦手ですが…
虫が平気な妻は、自販機設置にも「好きにしたら」という反応だったのですが、虫を食べたことはないはずなので、コオロギ粉末を練り込んだパスタ麺を使った料理を食卓に並べて、反応を見てみたいと思っています(笑)

バッタをチョコレートでコーティング(提供:TAKEO)

設置以来、近隣の住民も不思議がっていたという昆虫食自動販売機。
電話での問い合わせも多く、「最近では本業のバルーンより、昆虫自販機に関するものの方が多いかもしれませんね(笑)」という。

自販機に描かれている昆虫のイラストは、友田さんが弟とデザインしたものだ。
「昆虫」と聞いてイメージしやすいテントウムシ、ハチ、カメムシ、蛾、ヘラクレスオオカブトを採用し、海外ファッションブランドを意識したお洒落なデザインを目指した。
外敵への防御として独特のニオイを放出するカメムシは苦手だという人も多いが、なんと、ラオスやメキシコではその強い刺激臭をスパイスと捉え、料理に取り入れられているのだという。
ラインナップに加えるかについては、「ちょっとハードルが高くて、まだ食べたことがないので…」とじっくり検討したいと答えてくれた。

ちなみに、看板には「世界初」とあるが、東京・武蔵野市にある井の頭恩賜公園内では、数年前から缶詰になったイナゴと蜂の子の佃煮が自販機で販売されている。
友田さんはこれを知らなかったそうで、今後修正する考えだ。


デザインにもこだわった昆虫食自動販売機

そして、ディスプレイ中央にある小型モニターには、昆虫食商品を実際に食べた人のリアクションを集めた映像を流したいとしている。
話題作り先行かと思いきや、取材をしてみると将来の食糧危機を見据えたものだった昆虫食の自販機。現在は、商品在庫を揃えている最中で、販売スタートは10月25日の予定だが、その際には商品サンプルもディスプレイされるということだ。