大企業の意思決定はやばい。海外投資家が見た日本企業の現状

アニス・ウッザマン氏インタビュー

カテゴリ:ワールド

  • 大企業はもっとベンチャー企業と付き合わないといけない。
  • どうやっていいかわからない企業が多い。
  • 大企業の多くは部長などにパワーがなさすぎる。

米シリコンバレーのベンチャーキャピタルFenox Venture Capitalの共同代表パートナー&CEOを務めるアニス・ウッザマン氏。

東京工業大学で勉強した経験を持つなど日本への想いが深く、10月5日にはスタートアップがサービスを競い合うワールドカップの日本大会を開催する。

来日中のウッザマン氏に、日本企業の課題や今後について話を聞いた。

大手企業が出遅れている

――日本でビジネスを始めたきっかけは何ですか?

アメリカでベンチャーキャピタルを2011年に立ち上げて、アジアも見ないといけなくなった時に、みんなはシンガポールや中国に支社を作って頑張るべきと言ったんです。でも、私が「日本にしたい」と言ったら、みんな「大丈夫なの?」と心配されて(笑)


――他のアジア各国にみんなの目が向くのは仕方ない状況ですか?

同じ時間を中国で使ったら、倍稼げるんですね。規模感とか、経済の流れから見るとそうなるけど、私にとっては、お世話になった人も多いし、日本の皆さんの税金で勉強した恩もあって、日本を中心にやりましょうと。

普段はどうやって日本企業をフォーカスしようかと考えていて、パートナーも16社となっています。大手企業を元気づけるためにグローバルの技術を紹介するのが「プロジェクト1」で、日本のベンチャー企業に投資してそこを元気づけるのが「プロジェクト2」で動いています。


――日本が元気なく見える最大の原因はなんですか?

最大の理由は日本の大手企業が出遅れていると思うんです。私はIBM出身なんですが、アメリカで100年の歴史があって、富士通、東芝くらいの古い会社なんですね。しかし、いまAIはワトソンがあって、ヘルスケア、量子コンピューターの分野でもIBMが先行しているんです。

その理由はベンチャー企業とどんどん仲よくして、どんどん大学の優秀な学生と仲よくして、そこの技術を取り入れる制度を昔から持っていたんですね。

本当にここ30年、40年、50年の歴史で、IBMがそういうことをやってきたんです。古い企業なんだけど古いまま残っていない。

日本の企業もやり始めたんですが、最近なんですね。そこが出遅れた。アメリカのニュージェネレーションの会社をみてください、たとえばGoogleとFacebook。彼らもやっぱり合併吸収や戦略投資って結構大きいんですね。それで彼らは生き残っているんです。

Googleぐらいの競合の会社は日本の中で作れると思うんです。30年間、毎日誰かが検索エンジンを作っていると思うんですね。でも、グーグルはそれを全部潰してきたんです。自分たちも合併吸収をやらないといけなかったんですね。

中国をちょっと見ると、アリババ、テンセント、バイドゥ、3つの会社はアメリカのコンセプトをそのまま導入しているんです。ものすごい買収している。右も左もみんな買ってしまうんですね。だから彼らは競争できるようになった。それが中国の成長のひとつの理由だと思うんです。

日本の企業はいま、キャッチアップしようとしているけれども、「HOW」の部分がないんですね。オープンイノベーションのウィンドウを広げているんですけれども、次に何をすればいいかわからない。

我々はソリューションを提供して、シリコンバレーの案件を日本にもってきて、日本の技術を強化していきましょうということで結構パートナーシップを組んでいて、すごい成長しています。

日本全国に何千社もあるじゃないですか。みんなが「HOW」を持っていたら第二の革命が起こせるんじゃないかと思うんです。それを日本に伝えたい、伝えてほしいです。

組織の問題が多い

米中は合併吸収や戦略投資で成長

――日本のスタートアップは元気?

日本のスタートアップは全体的に元気だと思います。ただ、まだ数で勝負できていないですね。他の国と比べると数が少ない。日本で1個のスタートアップが生まれている時に中国で1000個生まれています。半端じゃない差があります。

インドネシアもそうですね。我々、スタートアップワールドカップを実施しているんですが、申し込み数は、日本だと今年はすごく宣伝して150社、インドネシアが5000社です。


――日本の大企業がスタートアップに出会えない理由は何ですか?

たぶん意識改革なんですよね。新しいコンセプトやビジネスモデルや、今の若者が何をやっているか、それがわかれば自分のプロダクトも作りやすいと思うんですが、入っていない。

「自前主義」がアメリカの古い企業にもまだまだあるんですが、日本には強くあって、「これだったら自分たちでできる」となることが多い。だったら作ってほしいですけど、そこには至らない。

もっとベンチャー企業と仲良くして、自分たちのイノベーションに大きく影響させましょうという意識がまだまだ一部の会社の上層部にしかないのかなと思います。


――組織が一番の問題ですか?

組織の問題が多いですね。やっぱりトップが動かないといけないと思う。いま日本で私たちがパートナーシップのある会社は、アメリカやイスラエルのトップの技術が欲しいんですよね。

欲しい理由は、「持ってきて売りたい」というのが第1の希望。日本だけじゃなくて中国でも売りたい。日本は吸収能力がすごいので、改善してアジア用に売っていく。

第2希望、「すごい気に入れば買収したい」。
第3希望、「色んなものを見たい」。色んなものを見せてくれれば、自分たちで作れるようになる。

パートナーシップを組んでいる大企業にはこういった要望があるので、どんどん海外の新しいものを日本に持ってきているんです。

日本の起業家の質はすごく高い

――大企業で、働く側の意識はどうですか?

上のレベルの意識は置いておいて、下のレベルでは、動き出していることは動き出しています。大企業の経営企画部の人たちなどと話をすると、意識のある人が多い。3年前と比べたら全然違いますよね。でも、古い伝統的な会社は難しいですね。

私は、ある大手企業さんとよく話をしていたんですが、もう話したくない(笑)

現場の皆さんと話をするとそれなりに反応があるんですが、会社に話が通らないんです。どこがコントロールしているのか全く見えない。パワーがセントラライズ(中央集中)されていて、部署レベルに落ちていない。パワーの分散ができていない。そこが大きな問題だと思います。

たとえば、課長レベルでも決める権限があった方がいいと思うんです。大きい会社なんですから、全部を社長が決めるのは無理じゃないですか。絶対に話が通らない。せめて部長クラスで意思決定の場を持たせないと、やばいですね。

だから、社員がエキサイティングになって「やりたい」となっても、大きな船が動かない。

正直、大手企業から声がかかるんですが、私はモチベーションゼロなんですね。VP(ヴァイスプレジデント)と言うタイトルが書いてあっても、たぶんパワーがないので、会っても無駄だから。こちらはスモール企業で人材に限りがあって、時間がもったいないじゃないですか。

大手企業に重要なのは、「イノベーションの改革」よりも「パワー改革」なんですね。


――日本はまだまだ世界で存在感を示せますか?

日本はやっぱり技術力が強いじゃないですか。だからうまくこういったことができればチャンスは大きいと思います。

それから、日本の起業家の質はすごく高いんです。投資していて、一番安心できるのは日本の企業です。

私たちが日本でスタートアップワールドカップをやっている理由は、日本の企業にもグローバルになってほしいからなんですよ。日本国内だけの企業を創っちゃうスタンスが多いじゃないですか。それでは次のソニー、次の富士通は生まれない。

本当にこれから世界に出て大きくなっていく企業の背中を押してあげたい。日本からのブランドを作るために支援していきたいです。