ハートフルと見せかけて…会社の“闇”を感じる「社畜ムービー」に突き刺さる人続出!?

カテゴリ:国内

  • 若手社員の送別会で巻き起こる“社畜ドラマ”が壮絶
  • 新入社員の半数以上が3年以内に離職するというデータが…
  • 以前「社畜ミュージアム」でも話題になった 

上司と部下のイイ話“風”ムービーが話題

今年も残すところあと3か月。
4月の入社から半年が経ち、新入社員は新しい環境に慣れてきた頃なのではないだろうか。

しかし、入社からわずか1か月後の5月には「仕事 つらい」」「飲み会 つらい」「新卒 辞めたい」などの検索ワードが増えるという、なんとも悲しい現実もある。(「涙が止まらない」「辞めたい」5月下旬の検索ワードに新社会人の抱える闇が…

4月にやる気満々で入社してきた社員たちも、実際に働くうちに実態が見えてきてしまった…ということなのかもしれないが、そんな“会社の闇”にまつわる動画が登場し、話題になっている。

それが、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が10月2日に公開した『今日、部下が会社を辞める。』だ。

動画は、上司の男性から「3年間、お疲れ様でした」の声と拍手と共に花束を渡され、若手の男性社員、加藤が笑顔で頭を下げる場面から始まる。
この時点ですでに「3年?意外と短い?」と思う方もいるかもしれないが、とにかく続きを見てみよう。

ストーリーは、退職する部下を見守ってきた上司の視点で進む。
仕事が遅かったり、言いつけ通りの資料が作れない様子に「要領が悪いんだよなぁ…」などと思いつつも、時には飲み会で笑い合い、愛情をもって育ててきた部下の加藤。一人前にプレゼンできるようになった姿を思い出し、成長を喜びつつ「私は、いい上司だっただろうか…」とさみしげに微笑む…

働くすべての人を、応援したい。」というキャッチコピーが浮かび上がり、ハートフルな話は終幕、と思わせておいて……話は急展開をみせる。

「勝手にイイ話にすんな!」の怒号と共に突き飛ばされ、吹っ飛ぶ上司!


「いいかげん、次から次に若手社員が辞める理由に気付けよ!」と叫ぶ社員の“告発”で明らかになるのは、真っ暗な会社でポツンと残業する加藤くんの姿。
追い打ちをかけるように浮かぶのは、「中小企業の73.3%が人手不足を感じている」「人手不足を残業などの業務過多で解決する中小企業が60.7%」「中小企業の新入社員の52.4%が3年以内に離職する」という“闇”を感じるデータだ。

上司から「要領が悪いなぁ」と思われていた加藤くんだが、実は、ひとりではとてもさばききれない仕事を回されており、深夜まで残業するほど追い詰められていたのだ。

この“告発”を皮切りに、不満が爆発したのか、和やかな送別会は乱闘に…
笑顔だった加藤くんまでもがプツンとブチ切れ、花束を放り出して「いい上司」だったはずの男性にタックルを仕掛ける始末。
ちなみに、この騒ぎのバックで流れているのは『荒野の果てに』という讃美歌だ。なんという皮肉!

まさに“荒野状態”の乱闘現場に浮かぶ「社員が崩れると、会社も崩れる」という絶望的な文句に対し、「会社が崩れる前に、ITツール導入で会社と社員の負担を減らす」と提案し、動画は終わっている。


この動画を作った中小機構は以前にも、劣悪な労働環境に喘ぐ社員たちがアート作品として並ぶ『社畜ミュージアム』なる動画で話題になっていた。
『今日、部下が会社を辞める。』の社員たちも、上司たちが気付かないところで「社畜ミュージアム」に並ぶ寸前だったに違いない。

「社畜ミュージアム」より

後半の怒涛の展開に我が身を投影し、上司の立場からは「もしかして、部下もこんなことを考えている?」とゾッとするかもしれないし、部下の立場からは身につまされるかもしれないこの動画。SNSユーザーからは「経営者必見!笑えるけど笑えない!」これからの時代は社員を大事にする企業が伸びる」といった声が次々挙がっていた。

なぜ今、この動画を発信したのだろうか?
国の中小企業政策の中核的な実施機関であり、企業の成長に合わせた様々な支援を提供している中小機構にお話を伺った。

5割強が「IT活用による生産性向上を行っていない」

――このムービーのアイデアはどこから?

今回の動画は社畜ミュージアム公開時から予定していたものです。
社畜ミュージアムは、よりインパクトを大きくして、働き方改革に向けた中小企業への支援の必要性を社会全般に伝えることを目的に制作しました。今回は、データに基づく明確なメッセージを伝え、具体的な解決策があること(中小機構特設サイトで説明)を伝えています。


――若手社員が辞めていく大きな理由が「社内が効率化されていない」ということ?

必ずしも全てがそうではありません。今回のストーリーでは、IT活用による生産性向上(効率化)が、社員の負担軽減や業績アップにもつながるということを伝えるため、象徴的な意味合いで表しています。


中小機構が行ったアンケート調査によると、現在、人手不足を感じつつも、実に6割以上の中小企業が残業時間を増やすことや、社員の兼任化で日々の業務を回しているのだという。
さらに、中小機構は実に5割強の中小企業が「IT活用による生産性向上を行っていない」と指摘。

2020年の4月から働き方改革関連法に基づき、残業時間の上限規制などが中小企業にも適用されるが、そもそも働き方改革の大きな原因となった「長時間労働の慢性化」「人口減少による労働人口の不足」「労働生産性の低迷」のどれもが、日本の雇用者数の7割を占める中小企業等の中でいまだ問題となっているという。

これを受けて、中小機構は、たとえば商品の注文や売上データをインターネットで管理するアプリや、ビジネス用のチャットツールなどを導入して仕事を効率化し、社員の負担を軽減することを提案しているのだ。

――IT導入が進まないのはなぜ?

IT導入はコストがかかる、導入効果が不明という中小企業経営者の意識のほか、相談先を知らない、使い方がわからない、アプリ等の情報を知らないといった理由からです(平成30年1月中小機構アンケート調査)。
中小機構の特設サイトでは低コストで、簡単に導入できるアプリやクラウドサービスを紹介しています。



若手社員に限らず社員の離職や、人材の確保・育成についての相談があるという中小機構。
“社畜”の解消は、そのまま会社の寿命にもつながってくるということもこの動画は訴えかけているが、働き方改革で“社畜”という言葉が死語になる時代は訪れるのだろうか。