プラスチックストローに代わるのは「ステンレス」?「紙」か? 脱プラの波が日本に来る日

カテゴリ:国内

  • 米ボランティア団体のクリーン作戦に記者が参加。そこで見たものとは・・・
  • “日本の面積の4倍”のプラごみが太平洋上に漂う
  • 日本発の新素材ストローが救うものはプラスチック以外にも

土曜の午前8時半。米・カリフォルニア州サンディエゴの郊外にあるミッションベイに朝早くから大勢の若者が集まっていた。
ボランティアのスタッフが来ている青いTシャツには「I love A Clean San Diego」と書かれている。
この団体は、川や海に捨てられたごみを拾い水辺をきれいにしようとする取り組みを続けていて、年1回、ここでクリーン作戦を行っている。
州全体では毎年6万人が参加し、環境保全に大きな役割を果たしている。

ボランティアによるクリーン作戦

クリーン作戦が始まると、ビールの缶、たばこのフィルター、ビニール袋、お菓子の包装用紙・・・と、次々にごみが回収されていく。
実際に参加してみると、大きなごみの他に、とても小さなビニールがあちこちに散乱していた。
元はビニール袋かそのくらいの大きさのプラスチックごみだったものが、風化とともに小さくなっていくのだ。
いま世界的に注目されているマイクロプラスチックの元である。

団体が用意したテントの一角に、見慣れない色のストローを発見した。
ステンレス製のストローの横に、“脱プラスチックストロー、ステンレス製のストローを使いましょう”とスローガンが書かれていた。
手にとってみると、硬くて曲がらない。
冷たいものを飲む時にストローが冷たくて触ったりくわえたりできないのではないかと心配したが、試していないのでわからない。

“日本の面積の4倍”のプラごみが太平洋上に

さて、話を元に戻す。団体の代表は若者を前に「2050年には、海のプラスチックごみの総量が魚を上回るといわれている。次世代に美しい海を引き継げるよう、ごみ拾いだけでなく、プラスチックを出さないようにする努力もしていこう」と訴えた。

世界経済フォーラム・ダボス会議で発表された内容では、海中には5兆個のプラスチック片があり、NOAA(アメリカ大洋大気庁)によると、太平洋上には160万平方キロメートル、つまり日本の面積の4倍以上に及ぶプラスチックごみの塊が漂っているという。
プランクトンの中に含まれるマイクロプラスチックの量が、1970年台に比べ2010年台でおよそ100倍増えているとの研究報告がなされている。

翌日、サンディエゴでもっとも人気のあるコロラドアイランドのビーチへ行ったが、そのビーチにもプラスチックごみが氾濫していた。
アメリカでもプラスチックごみの問題は大きな影を落とし始めているようだ。

プラストロー規制に「カリフォルニア人だから」

アメリカでは、カリフォルニア州やニューヨーク州、フロリダ州でプラスチック製ストローの使用が規制されている、もしくは規制に向けた議論が行われている。
カリフォルニア州では、飲食店でのプラスチック製ストロー使用を規制する法案が成立。
飲食店では、客の要望がない限り、使い捨てのプラスチック製ストローを出すことが禁じられた。
ファストフード店やコンビニは対象外で、レストランでも紙製や金属製のストローであれば客から注文されなくても出すことができる。
来年1月1日から施行されるが、メジャーリーグの野球場ではすでに紙ストローが使用されていた。

カリフォルニア州サンディエゴの野球場で使用されていた紙ストロー

野球ファンに、紙ストローについて感想を聞いてみると、「プラスチックは環境に悪いわ。私たちカリフォルニアン(カリフォルニア人)だから率先してやらなきゃいけないのよ」と答えた。

ブラウン州知事は、「ストロー、ボトル、袋、あらゆるプラスチックがこの惑星を窒息させている」と強調した。
プラスチックごみには、ストローだけでなく、レジ袋、たばこのフィルターなど実に多岐にわたる製品があるが、脱・プラスチックストローが他に先駆け、世界的に注目されるようになった。

9歳の少年が始めた脱・プラストロー運動

USAトゥデー紙によれば、脱・プラストロー運動は、9歳のミロ・クレス君という少年が2011年に始めた"BE STRAW FREE"というプラスチックごみへの関心を集めるキャンペーンがきっかけとなり広がったという。
クレス君は、アメリカで5億本のストローが使用されていて、その量はスクールバス125台分に相当すると発表。
彼の発表をニューヨークタイムズやナショナルジオグラフィックが取り上げたことで大きなムーブメントが起きた。
そして、スターバックスコーヒーが2020年までにプラスチックストローを廃止すると発表、韓国のスターバックスコーヒーではすでに9月から紙ストローを使用しているという。
いま、アメリカでは、プラスチックストローにかわり、ステンレスストロー、紙ストロー、そして、パスタストローも登場している。

パスタでできたストローも登場(Pasta Straw HPより引用)

脱プラスチックの動きは米国が進んでいるわけではない。欧州も活発だ。
アディダスはプラスチックごみから作った靴を売り出し、若者の間で爆発的な人気商品となった。

東南アジアではインドネシアが、脱プラのイニシアチブをとろうとしているようだ。

9月、ワシントンDCにあるインドネシア大使館で、脱プラスチックを推進するパーティーが開催された。
米国務省の幹部が参加する中、インドネシア大使は「プラスチックごみの被害を受けているインドネシアこそ、脱プラ運動の中心的存在になっていくべきだ」と述べた。
大使館には、プラスチックストローの代わりにステンレスストローが置かれていた。
今年10月には、バリで会議が行われ、海洋汚染やプラスチック対策が議論される。
国連でも、今後、海洋プラスチックに関する国際間の枠組みや、全世界でのプラスチック削減目標が議論されるなど、世界全体がプラスチック対策に真剣に取り組み始めている。

日本が“脱プラ”に後ろ向きなワケ

日本は?というと、正直いってあまり芳しくない。
今年6月にカナダで開かれたG7(=主要国首脳会議)で海洋プラスチック廃棄物に関する憲章が採択されたが、日本と米国は署名を拒否した。
海洋プラスチック憲章は、使い捨てプラスチック製品の削減、2040年までのプラスチック容器のリサイクル率100%達成など、発生源対策を世界規模で促進するための行動宣言だ。
日本がこれを拒否した理由について中川環境相(当時)は、「同憲章が目指す方向性を共有しつつ、生活用品を含め、あらゆるプラスチックを対象とした使用削減の実現にあたっては、市民生活や産業への影響を慎重に調査・検討する必要があることから、今回の参加は見送ることとした。」と述べた。
日本では、マイクロプラスチックの使用抑制が盛り込まれた改正海岸漂着物処理推進法が成立したが、世界の潮流に乗り遅れているのは認めざるを得ない。

日本は来年G20サミットのホスト国として、参加国以上にプラスチック対策を打ち出さなければならない。
海洋プラスチック対策を契機に、私たちの経済全体を循環的なシステムに変えていくことが必要、たとえばバイオ資源を用いた生分解性プラスチックの製造や、食品産業で使われているプラスチック容器の削減、プラスチックの熱利用など、が期待されている。

日本発!一石二鳥の脱・プラストロー作戦

こうした中、脱・プラスチックストローに向けた、世界的にみてもユニークな取り組みが日本で始まった。
ある住宅メーカーと大手有名ホテルが手を組んで日本の木材を使った木材ストローの研究開発を行っている。
インドネシアなどでは、竹で作ったバンブーストローなどがあるが、かんなで削った木材を手作業で丸めて作られるストローの太さはプラスチックストローとほぼ同じ形状になる。
見た目は一言でいってゴージャス。高級感がある。
脱プラスチックだけでなく、木材を消費することで間伐がなされ、森林保全につながる。まさに一石二鳥だ。

課題は価格だ。
より多くの企業・団体が木材ストローをつかえば、価格を下げられると木材ストローを開発中の関係者が語っていた。

(執筆:フジテレビ社会部 大塚隆広)