入閣待機組ずらり・・・なりふり構わぬ麻生派のポスト争奪戦

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  • 麻生派「6年前の贖罪」総裁選で一体何があったのか?
  • なりふり構わぬ「安倍支持アピール」の舞台裏
  • 論功を自負して目論む「待機組」の入閣

「どこが石破善戦か!」会長が憤る麻生派の総裁選舞台裏

安倍首相が石破元幹事長を破った自民党総裁選(9月20日)

今年の政局の最大の山場として大きな注目を集めた自民党総裁選挙は、安倍首相が石破元幹事長を破り連続3選を決めた。

一方で石破氏が党員票で45%を獲得し、議員票でも予想を上回ったため、各メディアは「石破氏善戦」と伝えた。
しかし、これに「どこが善戦なのか」と真っ向から異を唱えたのが、安倍首相3選を支えた麻生派(正式名称「志公会」)の領袖、麻生太郎副総理兼財務大臣だ。

麻生派として安倍3選に全力を注いだ形の今回の総裁選。
幹部によるとその原動力は「6年前の贖罪」だったという。
そこで、その「贖罪」の意味を含めた麻生派の総裁選の舞台裏を振り返り、目下行われている人事をめぐる暗闘を伝えたい。

麻生会長の迅速宣言で始まった安倍支持への「結束」

安倍首相の総裁選への出馬表明から一夜明けた8月27日、麻生派は緊急総会を開いた。
そこで会長の麻生氏はこう宣言した。

麻生派緊急総会(8月29日)

「安倍政権を引き続き政権のど真ん中で支える政策集団・志公会として安倍候補の支持を決定したいと考えております」

出馬表明の翌日という迅速な支持表明による、派閥としての確固とした意思決定。
その背景にあったのが6年前の苦い記憶だ。

6年前の総裁選で3分の1の「造反議員」を生んでしまった麻生派

2012年の自民党総裁選。
麻生派は現在の「志公会」の前身である「為公会」として選挙戦に臨んでいた。
この総裁選に出馬したのは安倍首相に加え、石原伸晃氏、町村信孝氏、林芳正氏、そして石破茂氏の5人だった。

2012年の自民党総裁選

当時の麻生派のメンバーはわずか12人。現在の59人から比べればおよそ5分の1にすぎない小さな派閥だった。
そして麻生派は当初、当時の総裁だった谷垣禎一氏の再選を支持する立場だった。
しかし谷垣氏は、自らを幹事長として支えていたはずの石原伸晃氏が出馬を表明したことにより、出馬断念に追い込まれた。

これを受けて、麻生氏は石原氏を「平成の明智光秀」と批判し、麻生派は安倍支持へと舵を切り、安倍首相の返り咲きの原動力となった。
これが安倍=麻生の関係が、現政権の「しっかりとした土台」(安倍首相)となるスタートだった。

しかし、この総裁選の投票では、麻生派議員12人のうち、麻生氏の方針通り「安倍晋三」と投票したのは8人だった。
派閥の3分の1にあたる4人が“造反”して他候補に投票していたのだ。

この苦い記憶が麻生派の今回の総裁選での徹底した「安倍支持」の対応につながる。

賛否を呼んだ「迅速すぎる」安倍首相の推薦状署名

安倍首相の出馬表明により安倍VS石破の一騎打ちが固まったこの総裁選。
麻生氏が安倍支持を表明した麻生派の緊急総会は、それだけでは終わらなかった。
その場で「安倍首相への推薦状」を全麻生派議員から署名付きで取りまとめたのだ。

総会で安倍首相の推薦状に署名する河野外相ら(8月27日)
麻生派緊急総会(8月29日)

この推薦状への署名に対しては「これは血判状と同じだ。圧力と感じる議員も出てくる」と懸念する声も漏れてきた。

そこまでして派内の結束にこだわったもう1つの背景、それは現在の麻生派が、前身としての麻生派(為公会)と山東派(番町政策研究所)、佐藤勉氏らのグループ(天元会)の3派が合流してできた派閥だからに他ならない。

この寄り合い所帯としての派閥構成と6年前の造反の記憶をふまえ、麻生派幹部には、安倍支持を徹底することにより、他派閥が抱く「麻生派の結束は堅くない」というイメージを払しょくしたい狙いがあった。
それに向け麻生氏自らも、若手議員と5回にわたり会食を行い、安倍支持の徹底を訴えるなど、結束強化の先陣に立った。

気合の党員票獲得作戦は空回りも?

こうした議員票固めと同時に、党員票獲得にも余念はなかったと麻生派幹部は語る。
9月半ばには、3連休にも関わらず、毎日10人の秘書が電話で安倍首相支持を訴える電話作戦、通称「電作(でんさく)」を休み返上で行っていた。

ただこの電話作戦、各事務所に要請があったのは連休直前の金曜という急ごしらえの作戦だった。

さらにこの電話作戦では「何件かけたか」という件数が陣営に報告されるため、その”件数稼ぎ”も行われていたという。

例えば、「この電話番号は現在使われておりません」という使用されていない番号に電話した場合にも、電話を「1件かけた」としてカウントしたこともあったという。

安倍首相の得票を増やすという以上に、「麻生派は安倍首相のためにどこよりも一生懸命やっている」というアピールが目立ってしまうような状況に、安倍陣営の別の派閥からは、「麻生派の動きはゆるい」との声も出ていた。

それでも麻生派が懸命になりアピールに力を入れた本当の狙いは何か。
それは「総裁選後を見据えた実績作り」だとその関係者は強調する。つまり、党役員・閣僚人事を見据えたアピールということだ。

晴れて大臣になれるのは一体誰なのか?

実は麻生派には、この人事に向け、しゃかりきにならないといけない事情がある。
それが派内に抱える「入閣待機組」の多さだ。

自民党では、衆院当選5回以上で閣僚に就任したことのない議員をしばしば「入閣待機組」と呼ぶ。
そして、麻生派には、その条件にあてはまる入閣待機組が12人もいるのだ。

今回の人事について麻生派幹部はこう明言する。
「まず今回大事なのは8回生だ。ここまで滅私奉公してきた方のことをしっかりと考えないといけない。」

麻生派に、入閣待機組の中でもベテランとなる当選8回の議員は、河野太郎外相を含め6人もいる。
そのうち3人が未入閣で、「待機組」というより「待望組」といえるかもしれない。
一方で現在の安倍内閣に、麻生派から入閣しているのは、麻生副総理兼財務相、河野太郎外相、鈴木俊一五輪相の3人だ。

麻生副総理兼財務相、河野外相、鈴木五輪相

このうち麻生氏は留任が固まった。河野外相についても、外交の継続性の観点から留任が有力視されている。
そして鈴木五輪相についても、2020年東京五輪に向けては交代させづらいという指摘もでている。

仮に3人ともが留任となると、麻生派の閣僚枠が増えない限り、入閣待機組の閣僚起用がかなわないのだ。
そうした事情もあり、総裁選で必死に貢献をアピールした麻生派、その希望がかなえられるかどうかは安倍首相次第であり、その結果は麻生氏の求心力にも影響を与える可能性がある。

さらに入閣待機組以外の麻生派議員の処遇をめぐっては、安倍首相の盟友として選挙対策本部の事務総長を務めた、甘利明元経済再生相の復権も注目される。

BSフジ「プライムニュース」に出演した甘利氏(9月24日)

その甘利氏は9月24日のBSフジ「プライムニュース」に出演し、人事について「要請されればなんでもやりますよ」と改めて意欲を示している。
周囲からも「党三役」への起用を期待する声が聞こえてくる。

一方で、選対の事務総長としての論功については、石破氏に45%もの党員票獲得を許したことで、疑問を呈す声も噴出している。

“安倍首相を真正面から支える”と強調し総裁選を戦った麻生派。
それに見合うような「褒美」にあずかれるのかどうか、注目の人事は目の前に迫っている。

(執筆:フジテレビ政治部 杉山和希)

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