なんと予算ゼロ?茨城県が4か月で“決裁の電子化”ほぼ100%を達成した秘訣

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  • 以前は全体の9割を紙で決済
  • マイクロソフトやドワンゴ出身の知事が指示
  • 「大きなメリットが出てくるのは来年度以降」

様々なビジネスやサービスの「電子化」が進んでいるが、このたび茨城県庁が決裁業務のほぼ100%を電子化したと発表してネットで話題になっている。
IT企業ではなく行政機関という点が驚きだが、さらに驚くべきことには、電子決裁率が13.3%だった今年4月から推進に取り組み、たった4か月で99.1%に押し上げたというのだ。

出典:茨城県

改めて「決裁」とは、部下の申請などについて上司が可否を決めること。
そして可否を決めた証として書類にハンコを押すのだが、些細な案件でも、係長→課長→部長→(別の部署の)担当→(別の部署の)部長→…など大量のハンコが押される場合もある。
電子決裁とは、これを紙の書類ではなく、コンピューター上の文書を用いて決裁処理を行うもの。

出典:電子政府の総合窓口(e-Gov)

ちなみに、日本政府は2014年4月から電子決裁推進に取組み、当初55.3%だった決裁率を、28年度には91.4%に押し上げている。
もちろん日本政府の決裁数は888万9,373件(28年度)で、茨城県(年間約27万件)よりけた違いに多いが、決済文書にたくさんのハンコが押されているイメージが強い行政機関が、これだけ短期間で電子化に移行できたのはかなり早い気がする。
いったいどんな工夫をしたのだろうか?そして、どれだけの予算をつぎ込んだのか?
茨城県庁の電子決裁率を推進した、政策企画部ICT戦略チームの担当者に聞いてみた。

「以前は全体の9割を紙で決済」

――グラフ以前の電子決裁率はどうだったのか?

これ以前は大体10%ぐらいを推移しているような感じでした。
全体の9割ぐらいを紙で決済の処理をしていました。


――電子決裁率ほぼ100%達成としているが、7月は99.1%で残りの0.9%は何なのか?

0.9%については、職員が操作を誤ったり、あるいは電子化してはいけないと勘違いしたり、そうしたものが若干ございました。
操作誤りや勘違いはどうしても出てきますので、これからも100%にはならないかもしれません。
今後は丁寧に説明していくなどして、できるだけ100%に近づけていきたいなと思っています。

IT出身知事の鶴の一声で一気に進んだ

大井川和彦知事(出典:茨城県)

茨城県は、去年8月27日の県知事選挙で24年ぶりに知事が交代している。
新たに知事に就任した大井川和彦氏(54)は、マイクロソフトやドワンゴなど、IT企業の要職を歴任。
その経験を生かし、今回の電子決裁やペーパーレス化を推進しているという。

――今年4月から電子決裁に取り組んだのは知事の指示があった?

はい、ございました。

――電子決裁のために、このICT(情報通信技術)戦略チームが作られたのか?

本来は、RPA(AI・ロボットによる業務の自動化)をやるために作られた組織です。
電子決裁に関してもチームが中心になってやるようにと指示がありました

――知事の指示があるまで電子化が難航していた理由は?

まず職員のほうで、紙は紙のまま処理をしなければならないと思い込んでいたところがあると思います。
そして、一人一人の仕事のやり方に口をはさむような形になるので、「必ず電子上で処理しなさい」と強く言わないと、なかなか進まない部分がございます。
他の組織でもそうだと思うんですが、仕事のやり方に口を挟まれたくない方はいらっしゃるでしょう。
そうなるとトップから強く言っていただかないと進みません。

トップが旗を振ったことに加えて、「こうすれば今までのやり方と変わらず決裁できます」という案内も必要です。
あとは職員にアンケートを採り、電子決裁をやるうえで難しいところや困っているところを聞いて、それぞれに対応しました。

「大きなメリットが出てくるのは来年度以降」

茨城県は電子決裁のメリットとして以下の5つを挙げている。
1 文書の検索効率の向上
2 行政文書の改ざん防止
3 ペーパーレス化
4 省スペース化
5 テレワークの促進

5つの中に、この手のメリットに必ず入りそうな「業務のスピードアップ」がないのはなぜなのだろうか?

――業務のスピードはあがったのか?

スピードは、決裁の中身にもよって違ってくるでしょう。

たとえば「問い合わせに対してこう回答していいですか?」という簡単なものであれば管理職のほうでもすぐ確認していただけるので処理が速くなったと思います。
逆に県庁には、数cmの厚みがあるような紙の届出や申請の書類が届く場合があります。
そういったものを全部スキャンするのは、今までよりも時間がかかる可能性があります。

ただ私どもとしては、トータルでスピードが早くなってくるのはこれからだと考えています。
というのは、書類にハンコをついて回すのと電子化した処理の速さは、たぶんあまり変わらないんですが、昔の書類をファイルの中から探すような手間はなくなります。
ですので来年度以降に、以前の書類を参考にして決裁を取るときには、かなりメリットが出てくると思います。

今回の取り組みの予算はゼロ!

――決裁の電子化にかかった予算は?

実は、今回4月からの取り組みには、新たな予算は付けていません。
もともと電子決裁システム自体は導入していたんです。
そこで現場のやり方を工夫して「ある道具をちゃんと使いましょう」ということを徹底し、ほぼ100%を達成したということです。


――次は何を目指す?たとえばペーパーレス化100%は実現できる?

今のところ完全ペーパーレス化は、ルールをちょっと変えて、コストは全くかけないスタンスで、やれる範囲でやっています。
やはり行政コストの削減が目標なので、どうしてもコストはかけたくないんです。
大規模な予算投入は基本的には考えてないですね。

――不要になったハンコはどうしているのか?

ハンコは職員の個人の私物なので、みなさんそれぞれ捨てずにお持ちになっていると思います。


今回の電子化を新たな予算をつけずに達成できたというのは驚きだった。
ちなみに、茨城県は、来年開催する国体に合わせ「eスポーツ大会」を予定しているという。
大井川知事が、IT出身ならではのスピード感を持って進める今後の取り組みにも注目だ。