“いやな進次郎”が顔を出した!?「圧力」が話題となった自民党総裁選での“直前支持表明”の功罪

  • 石破元幹事長の「善戦」の背景に「冷や飯」発言?
  • 「官邸の圧力」に反発…石破支持の市議が取材に応じた
  • 小泉進次郎氏が石破支持を直前に表明した理由は?

安倍晋三首相が三選された自民党総裁選では、安倍陣営の「冷や飯」発言や「圧力」発言が話題となった。
報道プライムサンデーが圧力を受けたとされる市議らにその実態を取材すると、石破茂元幹事長の「善戦」につながったとも思える時代錯誤の駆け引きが見えてきた。さらに選挙では小泉進次郎筆頭副幹事長の石破氏支持表明が注目を浴びたが、そのタイミングは投票開始のわずか10分前。両陣営への配慮が伺える表明だったが、そこから進次郎氏の実力と課題が見えてきた。

安倍陣営の「冷や飯」「圧力」が石破氏善戦の要因に!?

安倍首相と石破元幹事長の一騎打ちとなった自民党総裁選は553票対254票で、安倍首相の圧勝となった。しかし“国民世論に近い”党員票では石破氏が事前の予想を大きく上回る45%を獲得。
石破陣営が「善戦」と胸を張る一方で、安倍氏を支持した麻生財務相は選挙後も「ワンワン〝善戦〟ってどこが〝善戦〟なんだ。ぜひ聞かせてもらいたい」と強気の姿勢を見せた。その麻生財務相は総裁選中、石破陣営をこう揶揄していた。

投開票日の前日に、応援演説にたった麻生氏

「『冷や飯を食わせるな』とか何とかかんとか言っている人たちがいるみたいですけど、覚悟が足りないんだ。覚悟が。冷や飯食うくらいの覚悟を持って戦って当たり前でしょうが。」

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、冷や飯とはいわゆる圧力をかけることで、「人事で干すぞ」という意味だと解説。そして総裁選の票の行方を左右した要因の一つが「冷や飯」だったと指摘する。そして今回の総裁選で、圧力があったと声を上げたのが齋藤健農水相だった。

齋藤健農水相

「安倍応援団の一人に言われました。『斎藤よ、(安倍)内閣にいるんだろ?石破さんを応援するんだったら、辞表を書いてからやれ』と言われました。私はふざけるなと」

実は圧力があったと言うのは齋藤農水相だけではなかった。岡田裕二神戸市議が9月10日、フェイスブックにこんな文面をアップしていた。

 「官邸の幹部でもある、とある国会議員から、露骨な恫喝、脅迫を私達地方議員が受けており…」

 

岡田裕二神戸市議のFacebookより

地方議員が明かした「圧力」の実態

報道プライムサンデーが、事実を確かめるため、岡田市議に連絡すると、岡田市議から書面で返答があった。


――どんな圧力があったのか?
自民党の地方議員が委縮せざるを得ない状況があった。

――圧力は岡田氏以外にあったと思うか?
こういう事例は多かっただろうと思う。


こう答えた岡田市議だが、実際にどんな圧力があったのか、その詳細ついて回答が無かった。ほかの神戸市議に取材を続けると、匿名のペン取材なら応じるという市議が、岡田市議に代わり、その時の様子を明かしてくれた。

この市議によると、首相官邸の幹部が、兵庫県選出のある国会議員に「あなたの元秘書である岡田裕二市議が石破氏の会合に行くみたいだけど、それではあなたの立場が悪くなるね」と圧力をかけたという。それを知った岡田市議は憤慨し、石破氏支持の気持ちを固めたという。

圧力は本当にあったのか?疑いの目が向けられたのは西村康稔官房副長官だった。

しかし、西村副長官は記者会見で「恫喝をしたとか圧力をかけたとか、あるいはその市議会議員の将来に差し障るといった報道もありましたけど、そうした類のことは一切話をしておりません」と否定した。

市議側への「圧力」を否定する西村官房副長官

政治アナリストの伊藤惇夫氏は、実際に西村副長官による圧力があったかどうかは分からないとしながらも、総裁選の歴史においてこうした駆け引きは付き物だと指摘する。しかし、今回の総裁選では事情が違うという。

「やっぱり今の時代はパワハラに対して敏感な時代ですから党員票なのか、一部の国会議員票なのかわからないですけど、やっぱり圧力のかけすぎというか、はっきり言うとやり方がうまくなかったなどいう感じがしますね」

進次郎氏、投票開始10分前の支持公表の理由は…

水面下で激しい駆け引きが繰り広げられた今回の総裁選で、キーマンとして注目を集めたのが小泉進次郎氏だった。進次郎氏は、投票の10分前に記者団に対して石破氏を支持すると公表。なぜギリギリまで語らなかったのか?選挙後、進次郎氏はこう振り返った。

「この総裁選挙というのは、政治の世界の戦ですから。私は、武器を持たない戦争みたいなものだと思っています。その過程の中では、本当にさまざまなことがある。日々変わるんです。それに対し、どうやって自分を生きぬいていけるようにするか。そういったことも含め、非常に学びのある総裁選でしたね」

自民・山本一太政調会長代理と、平井文夫氏(報道プライムサンデー9月23日放送より)

平井文夫:
進次郎さんは自分の政治的な今の力に比べて自分の影響力がはるかに大きい、それが非常に危険だということを分かってるんですね。だから彼は事前には石破支持を表明しなかった。つまり石破さんと連携せず、応援もしなかった。
あれは安倍さんにとっては非常にラッキーでした。安倍さんはそれに感謝しているわけです。だから石破さんに投票しても安倍さんは怒ってないんです。小泉さんは実はニュートラルなんですが、世間はこれをもって小泉さんのことを反安倍だと決めるわけですよね。今後、政策でもめたときに石破さんと一緒に小泉さんが因縁をつけることを楽しみにする。プラス、もし参院選に負けた場合に石破さんと小泉さんが安倍おろしをするんじゃないかと期待も高まるわけです。そうなると非常にややこしくなる。
ただ進次郎さんは非常に頭がいい人なので、自分が自民党の正当な跡取り息子だと分かっているわけですよ。だから世間の期待にそって下手な動きはしない。安倍さんと石破さんに対してそんなに悪くならないような気がします。

山本一太:
よく小泉進次郎さんってどういう人ですかって聞かれると、こう答えている。デビューした時から天才名子役、それがかなり早い時期に自民党一座の新進気鋭の若手俳優になったと。だけどまだ大舞台を踏んでないから、ほんとの評価を受けてないんですよね。
そういう中でいろんな戦略を考えていると思うんですが、私は彼みたいな存在は自民党にとっていいと思っているんです。誰にもコントロールされない、国民の目線に近いところで発言できる。いろいろ紆余曲折あっても、最後は総理まで行く人だと思うんですが、今回ギリギリまで態度を表明しなかった理由はよく分かりませんが、恐らく影響力があまり大きくならないようなところで言ったという話かなと。いろんなところに気を使っている状況なのかなと思います。

山本一太氏(自民党政調会長代理)

佐々木恭子: 
逆に言うとそんなに気を使わないと生き残っていけないものですか?

山本一太:
そんなに気を使わないと、というか…総理を目指してこれから行く人だから、その中で政局とか、いろんな一つ一つの場面を乗り切っていかなければいけない。
政界ってやっぱり一寸先は闇の世界ですからね。あっという間に引きずりおろされたり、窮地に陥るってことをよく分かっているので。

「いやな進次郎が顔を出した」国民は騙されない…

立川志らく氏(落語家)

立川志らく:
私はちょっと“いやな進次郎”が顔を出したなって気がしましたね。
だって政治家たるものは、自分の信念を貫き通すってのを国民は期待しているわけです。僕は安倍さんと一緒にやるんだ、僕は石破さんの政策を支持するんだって。それを言ってくれるのが爽やかな小泉進次郎だと思っていたのが、両方にいい顔したわけでしょ。安倍さんには怒られない、だけどちょっと国民目線で石破さんの肩を持ちましたっていう。
それで自分の影響力がって言うけど、実績もないのに、他人が言うならわかるけど自分が言っちゃって、さらにネクストバッターズサークルに立ってますなんて言っちゃって、僕はバットボーイでいいですよ、まだ。次は総理大臣になるんだってことを自分から言っちゃってるから、ちょっといやらしい感じが私はしましたね。国民はそんなにころっと騙されないような気がしますよ。だから今回マイナスなような気がしますけどね。

片山善博:
政治ってのは常に選択を迫られるわけですよね。一つを選択すると必ずもう一つは捨てる、そういうことを余儀なくされるわけです。ですから調子のいいことばかりはできない。
名子役ならずっとイメージを保つためにやり方があると思います。ですけど、本当の政治をやろうと思ったら、いやなことも引き受けなければならないわけです。小泉さんはとても人気高いんですけど、例えばテレビだっていやな質問を受けるわけでしょ、自民党を代表して出ると。防戦しなきゃいけないじゃないですか。カッコ悪い面もありますよね。
そういうことを経て、政治家ってのは成長していくわけですけど、小泉さんは理由は分かりませんけど、出てこられませんよね。ですから評価されていないんですよ。なので評価を経て初めて政治家として成長していく。今回もやっぱり選択をほとんどされなかった。従って評価もされないっていうことだと私は思います。

片山善博氏(早稲田大学公共政策大学院教授)

山本一太:
考えてみると、かつての自民党ではその世代に何人かスターがいたんですよね。同世代のスタープレイヤーが他にいないんですよね。彼一人が自民党の将来を背負ってるみたいになっているのがちょっと不幸な状況であって、本当はライバルと目されるような人が何人かいれば、もう少し彼も動きやすいのかもしれませんけど、今は自民党の将来のスターは小泉進次郎だけっていう状況の中で、彼の選択は難しいのかもしれません。

佐々木恭子:
閣僚人事、党内人事で進次郎さんが役職に就く可能性はありますか?

平井文夫:
以前、進次郎さんを安倍さんが官房副長官にしようとしたんだけど、本人が断ったんですね。
僕らは出世の階段として、官房副長官、閣僚、総理と行くもんだと思ってるんだけど、彼曰く、それはあなた方、昔の人が考えることであって、僕らの時代は違うんだっていうことを言ってました。だから全く興味ないと思います。言われても辞退すると思いますね。安倍さんも今回しないんじゃないですか。

立川志らく:
私は当人が断っているってのが不思議でしょうがない。やっぱり重要な役職をやって初めてこの人、どれだけ政治の力があるか分かるから、いきなりポンと総理大臣になるわけにいかないでしょ。
人間はピンチの時にどれだけ力を発揮できるか。稲田さんは将来女性総理だって言われていたのが、防衛大臣になって、あのピンチを乗り切れず、結局あれでダメになったわけでしょ。あの時に野党時代の稲田さんが出て、ワーッというあの強さが出ていたら、ほんとに女総理にやがてなれたかもしれない。だから小泉さんも何か一回重要な役職に就いて、ピンチを味わったほうがいいですね。どれだけ力があるのかってのを見たいですよ。


今回の総裁選で、小泉進次郎氏がどちらに投票するのかが注目されたことは間違いがない事実だ。彼は総裁選を「政治の世界の戦」と表現した。「政治の世界の戦」で進次郎氏はどんな戦い方をするのか、今回それを見ることはできなかった。いずれにせよ、小泉氏の政治家としての真価が問われる局面は近い将来、必ず訪れる。


(報道プライムサンデー 9月23日放送より)

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