“人を見たらヒーローと思え”!? 怪人を派遣する「悪の秘密結社」が実在した

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  • 悪役キャラ専門で派遣「株式会社 悪の秘密結社」が話題に
  • ご当地ヒーローは作ったが悪役まで手が回らない…というスキマ産業的な需要
  • 「日本一、怪人の造形にお金をかけているつもりです」

悪の秘密結社」なる怪しい組織が今、SNS上で話題になっている。
「秘密結社」なんてものはヒーローもののテレビ番組でしか聞いたことがないが、どうやら実在するらしい。調べてみると、組織を率いるのは代表取締役社長「ヤバイ仮面」というのだから、ますます怪しい。


SNS上では、「悪の組織...実在したのか…」という戸惑いの声と共に「就職したい!」という声も挙がっているこの団体、実は「株式会社 悪の秘密結社」という、福岡に本社を置く、ヒーローショーのイベント事業会社なのだ。


ちょっとかわいいロゴマーク

社名には「悪」とついているものの、行動指針には「お約束を守れ。ヒーローが名乗っているときは手を出すな。当たり前のことだ」など、とても清く正しい言葉が並ぶ「悪の秘密結社」。

そのギャップに得体のしれない感じがするが、一体どんな“悪”を提供しているのか?
代表取締役の笹井浩生氏にお話を伺った。

ご当地ヒーローは作ったが悪役まで手が回らない…

――「悪の秘密結社」はどんな会社?

ヒーローショーに特化した総合イベント事業で、主にイベント趣旨に沿ったショー台本の制作から出演までをワンストップで行う業務を行っております。
従業員数はパートアルバイト含め約40名です。


――どれくらいの依頼がある?

年間200件ほどのショー(グリーティング)を行っております。


この「株式会社 悪の秘密結社」は、「ヒーローはいるけれど、悪役がいない…」というヒーローショーに悪役を派遣している会社だ。ご当地ヒーローブームでヒーローを作ったはいいが、悪役まで予算的に手が回らないというところもあって需要があるらしい。
さらに、それだけでなく、ヒーローショー台本の制作・出演までをトータルで行っているほか、“ヒーローコンサルタント業”も行っており、活用されずに眠っているご当地ゆるキャラ・ヒーローキャラの再活用のアドバイスをしたりもしているのだという。ヒーロースーツや着ぐるみの製作依頼も受けている。


――個人で依頼することは可能?

お受けしております。例えば結婚式の主役はもちろん新郎新婦ですので、ブライダルプランナーばりに馴れ初めをヒアリングし、身内に楽しんでいただける台本と演出を構成しております。「これが本当のケーキ入刀だ!!!」と斬り捨てられて帰ります。

――“悪の軍団”と戦いたいです。最大何人の悪役を派遣してもらえる?

過去最大は20名です。現在怪人は30体以上おりますので、そのすべてを派遣可能ですし、施設様からのご用命でヒーローやご当地キャラクターもキャスティングしてほしいと言われた場合は弊社経由でこちらもキャスティング可能です。

悪役キャラの一部。「カラミー」は「たくさんいる」とのこと

派遣してもらえる「悪の構成員」たちは、現在、公式サイトで15種類が確認できるが、10月のリニューアルで削除されるキャラクターもいるのだとか。
「戦闘社員カラミー」などは複数人いるとのことで、最大30体以上の派遣が可能だという。

ちなみに、「ヤバイ仮面」が代表取締役社長となっており笹井氏と役職がかぶってしまうのでは…?と思ったが、どうやら「ヤバイ仮面」が真の社長らしい。

悪役の名前を「30秒」で決めるワケ

パーティにぴったりの「ケーキマン」。以前頭部を盗まれたそうで、残念ながら引退

――キャラ設定はどうやって決めている?

デザインには相当の時間を要します。なにが目的でどのような活用方法があるのかを社内で会議を行い決定しますが、名前は「30秒ルール」で決定します。30秒ルールというのは30秒以内に絶対に怪人の名前を決めるというものです。
ヒーローショーで覚えてほしいのはヒーローの名前です。怪人は分かりやすい名前で十分、という考えのもとキャラクターの名前を決定しています。台本のキャラ設定は「ヒーローの大義名分」によって変わります。例えば“食育”のヒーローを相手にする場合は怪人たちは“偏食”になります。


たとえば見た目そのままの「エビマン」はオマールエビの怪人だが、「イベントに合わせて何エビと呼んでもらってもいい」など、イベントごとに柔軟な対応ができるように、あえてフンワリしたキャラ設定になっているのだという。

「あくまでヒーローが主役」だという笹井代表。
では、なぜ悪役にこだわったサービスを展開しているのだろうか?

「ヒーローが映える」悪役を

――なぜ「悪役専門」に?

私、笹井は幼少期に両親の離婚を経験し、父親の姿を見ず成長していくなかでテレビヒーローの大きな背中に正義を感じていました。そして学生時代、ヒーローショーのアルバイトを行った経験の中でヒーローショーの楽しさを感じ、「いつか…どうにかして…」と考える中で、一度は夢を諦めサラリーマンとして働く中で「『ヒーロー』という概念は人によって違う。子供にとっての本当のヒーローは両親だし、ある人にとっては友達がヒーローかもしれない、社会に出れば上司が自分を守ってくれるヒーローだったりもする」という考え「誰でも誰かのヒーローである」を持つようになり、過去のヒーローショーの経験からすべての人たちに「ヒーロー」を体現化させる方法はなにかと考えたときに「悪役」に至りました。

――「悪役」のポイントは?

悪役専門ですので、悪の造形美は日本一でなければいけないと思っております。ですので、日本一怪人造形にお金をかけているつもりです。かっこよく隙の無い強そうな怪人を倒すからこそヒーローが映えると考えております。
また、ショー中はヒーローを大きく見せるため怪人たちは基本姿勢が猫背です。また、名乗りを行う際はしゃがみこみ、ヒーローに視線を注目させることを徹底しております。


――ショーの展開で「これは外せない」というものは?

もっとも外せないものは「大義名分」です。なぜ、舞台に立ち、何を守るために立ち上がったのかを観客に伝えることが最も重要です。
ただし、これはヒーロー側から発信することは難しいことです。出てきて早々、正義感のうんちくを話されても子供たちは分かりません。なので、怪人たちが「それぞれのヒーローの大義名分に反した悪事」を先に働くのです。そうすればヒーローが立ち上がる理由に繋がり、自然に観客の心に届くショーが出来上がると考えています。

――代表挨拶ページの「人を見たらヒーローと思え」とは?

大志を絶やさなければ必ず活路があり、ヤバイ仮面が、ヒーローのヒーローになる未来が必ずある、と確信しての言葉です。

ちなみに、「ヤバイ仮面」は、納得のクオリティのビジュアルと、どことなくトボけたキャラ設定が愛されてか“ダントツ人気”だという。2018年ゆるキャラグランプリにもエントリーしているが、公式ライバルはいないらしく、今後は「歯磨き粉とコラボしたいです。ばい菌役で活躍したい」とのことだ。


正義の味方はいるが、悪役が足りない…とはなんとも不思議な需要だが、「ヒーローを輝かせる」悪役の美学と、「誰でもヒーロー」という、ショーへのこだわりを感じた「株式会社 悪の秘密結社」。
ヒーローショーに関わるビジネスは数あれど、国内唯一の「悪役専門」会社が放つエンターテイメントにこれからも注目したい。

テイストが違いすぎる「傘マン」は「肝試しイベントくらいしか出ません(笑)」