南北首脳会談の裏で ”生活感”から垣間見える北朝鮮一般市民の今

カテゴリ:ワールド

  • 補修された道路と急増する電動自転車!
  • ”明るく”感じる平壌市内・・・そのワケは?
  • 増える笑顔 朝鮮半島情勢の緊張緩和が影響か

9月9日の北朝鮮の創建70周年に合わせ、平壌で6日間に渡り軍事パレードなどの記念イベントや、市内の施設などを取材した。
北朝鮮での取材活動は行動が制限されている。街を出歩き市民と話したり店を訪ねることは自由にできない。故に一般市民の生活の様子については、基本的には移動中の車内から伺うことになる。2017年4月と今年9月。約1年半の期間を空けて平壌を訪れると、その変化などから見えるものがあった。

交通インフラの変化からみる経済制裁の影響 

補修された平壌市内の道路

今回の取材で最初に変化を感じたのは、郊外にある空港から平壌の市内中心部へ車で向かう際だった。それほど揺れないのだ。というのも、以前は車で移動していると、割れたり凹んだりしている道路が原因で市内中心部の限られた地域以外は常に揺れている印象だったが、道中では多くの女性らがアスファルトを手作業で整備する様子も見受けられるなど、着実に整備が進んでいた。同時に、市内の信号機の設置台数も明らかに増えていた。

また、市民の足にも変化が。自転車の全体的な台数は変わらない印象だが、その中に電動自転車が急増していた。肌感覚では、街を走行する自転車のうち2~3割ほどにバッテリーが付けられていた。どうやら中国から輸入しているとみられるが、こうしたモノが増えていた。

急増していた電動自転車

こうしてみると、経済制裁の影響はそれほど無いようにも思える。

しかし、1つの指標になりそうだったのは、公共交通機関だ。金正恩委員長が自ら指示したということで、北朝鮮で開発したという電気式の路面バス、路面電車の本数は見た目にも増えていた。バス停の人だかりを見るとまだまだ十分ではないため純粋な需要もある一方で、制裁によってガソリンが輸入できないことも影響しているとみられる。

“明るく”感じる平壌市内とその理由

素朴で質素だが清潔感がある服装

こうした経済的な成長と切り離しても、平壌市内を歩く人々を見ていると、どこかしら“明るさ”を感じる。私としては、その理由は大きく2つあると思っている。

1つは、清潔感だ
身なり、服装。同じ北東アジアでも日中韓どの国よりも、素朴で質素だ。ファッションも奇抜なものは見かけないし、何年も着ているのであろう服は色あせている場合もある。また、今回は取材の機会がなかったが、地方は平壌と比べれば明らかに貧しい。ただそれでも(あくまで我々が目にできる範囲ではあるが)人々からは清潔感を感じる。同時にそれは街にも言えるのだが、ゴミがほとんど落ちていない。時間を問わず、近隣住民であろう人が建物やその周辺を掃除する姿を目にする。

もう1つは、姿勢、歩きスマホをする人がほとんどいないことだ

現在北朝鮮の携帯電話の契約数は約400万台で、内8割はスマートフォンだという。単純計算すれば概ね一家に一台、実際には持っている人のほとんどは平壌に集中しているだろう。北朝鮮で生産されOSも独自のものだが、我々が使うそれのようにゲームのアプリなども存在するようだ。しかし、歩きスマホをする人の姿は、今回の6日間で私が見たのは1人だけだった。みんな背筋を伸ばし、前を向いて歩いている。

たったこれだけのことでも、驚くほど街が明るく見える。市民の表情を細かく見れば、もちろん笑顔も疲れた顔もあるが、鬱屈した雰囲気を感じない。なお、歩きスマホは法律で禁止されているのか?との聞くと、取材に同行する北朝鮮側の担当者には「そんな法律はないですよ。下を向いて歩いたら危ないでしょう」と答えられ、少々恥ずかしさを覚えた。

成長が目に見える平壌、一方で地方は?

街中で市民が家族や友人に見せる笑顔、柔らかな表情は増えた。一般市民に対して直接的に何かしらの指導があったのか、そこまではわからない。ただ、朝鮮半情勢の緊張緩和が影響していることは間違いないだろう。

一方、今回は平壌以外の地方に取材へ行く機会がなかった。平壌を充実させた分、地方にしわ寄せがあるのか、それとも地方もゆっくりと成長しているのだろうか? 市民らに笑顔は増えているのだろうか? その様子を確認できなかったことは残念であった。

北朝鮮の非核化を巡る動きは、依然として難航している。それはつまり、情勢が緊張状態に戻る可能性を排除できていないということでもある。一般市民に自然な笑顔がより増えていくことを願うばかりだ。

(執筆:FNN 北京支局 岩月謙幸)