陸上自衛隊が災害用ドローンに期待する3つのこと

カテゴリ:国内

  • 陸上自衛隊が、災害派遣現場に初めて無人航空機ドローンを投入
  • ヘリは「高層から広い範囲の」、ドローンは「低空で狭い範囲の」情報を収集
  • 防衛省は来年度予算概算要求で災害用ドローン導入に1億5千万円を要求

災害派遣史上初のドローン投入

北海道厚真町で行われた災害派遣初のドローンによる情報収集  撮影:陸上自衛隊

9月6日に発生した北海道胆振東部地震は、道央地域を中心に甚大な被害をもたらし、今なお土砂災害発生の可能性が残る地域では、自衛隊の施設部隊が中心となって道路啓開や土石流発生の危険性除去を急いでいる。

自衛隊の災害派遣では、給水車、ショベルカーといった陸上自衛隊施設部隊の装備などが投入されるが、今回は加えて「陸上自衛隊の災害用ドローン」が初めて被災地に投入された。自衛隊は情報収集のため災害発生直後からヘリコプターを投入しているが、同じく「空から情報収集する」ドローンをさらに投入する意義はどこにあるのか、陸上幕僚監部に取材した。

導入準備段階で現場投入

北海道厚真町に投入された陸自ドローン  撮影:陸上自衛隊

陸自が今回、北海道厚真町の土砂崩れ現場に投入したのは、民間企業が開発し、市販されているドローンで、正式に配備された装備品ではない。災害用ドローンの導入を検討している陸上幕僚監部が、静岡県の富士駐屯地に本部を置く陸自開発実験団で評価を進めている複数の機種のうち、現時点で運用可能な2機種13台が投入された。陸自が災害派遣にドローンを投入したのは初めてのことだが、評価段階の機材が実際の活動に使われるのも異例だ。陸上幕僚監部は、「導入評価中の機材とはいえ、性能の把握や操縦の習得は既に完了していたので、人命救助と復旧を最優先に考えて現場投入した」と説明している。

陸自ドローンの利点その1「すぐに見られる」

災害発生直後に飛行する陸上自衛隊のヘリコプターにとって最大の任務は「情報収集」であり、被害の範囲と規模を把握することは、一刻を争う人命救助のために必須の活動だ。
ヘリは、ビデオカメラと映像伝送装置を搭載していて、機上から撮影した映像は東京・市ヶ谷の防衛省内にある統合幕僚監部などへ中継配信される。つまり、映像伝送ヘリの第一の役割は、防衛大臣をはじめとする防衛省・自衛隊の幹部が適切な状況判断を行えるよう、「広い範囲」の状況を報告することにある。

一方で、連隊や中隊など被災現場入りした部隊は、基本的にヘリからの映像を受信する機材を持ち合わせていない。また、現場部隊にとって最も必要なのは、広域の被災状況に関する情報ではなく、「いま目の前で行く手を阻んでいる土砂崩れのどこをどう通れば危険を回避しながら孤立地域へ救助に行けるか」といった判断をするための、極めて「狭い範囲」の状況把握だ。

ドローンを使う利点は、まず、「現場で部隊を動かす連隊長や中隊長が、必要な情報を現場で直接すぐに見られることにある」と陸上幕僚監部は評価している。ヘリとドローンは、同じ上空からの情報収集活動でも、求められる役割と情報判断のレベルが異なるというわけだ。

陸自ドローンの利点その2「どこでも映せる」

ドローンが捉えた厚真ダムの湖面  撮影:陸上自衛隊

9月8日、陸自ドローンは、厚真ダムの上空で土砂崩れの始点(滑っている斜面の最上部)や水面から見た土砂崩れの状況などを撮影し、土砂崩れが拡大する危険性や崩れた土砂がダム湖に流入する可能性などを検討した。概ね高度80メートルほどで飛行したが、水面からわずか10~20メートルの低空からも撮影している。

ヘリの場合、低空からの撮影が操縦技術上は可能であっても、ローターが巻き起こす風圧がとても強く、水や土を巻き上げてしまうため、地表や水面からわずか10~20メートルの至近距離で情報収集することは現実的には困難だ。一方、ヘリでは難しい橋の下など低く狭い場所の撮影も、ドローンなら容易に可能だ。

陸自のヘリパイロットも、「ヘリが近づけない場所にも入り込んで、高解像度で近くから撮影できるドローンは非常に有用だ」と、ライバル(?)を高く評価している。

陸自ドローンの利点その3「安全に活動できる」

これはもう、言うまでもないことだが、ドローンは無人航空機なので、墜落しても(地上にいる人の上に墜ちない限りは)死傷者の出る危険が、まず無い。そのうえ、陸上自衛隊によると、最低2~3人の隊員がいれば、とりあえず運用できるそうだ。

一方、上空から映像を撮影するヘリには自衛隊員が7人搭乗しなければならない。民間ヘリより厳しい条件下でも飛行する陸自ヘリの任務は、どんなに日々の訓練を積んでいようとも常に危険と隣り合わせだ。隊員を危険から遠ざける点でも、自衛隊におけるドローンの活用は有効と言える。

「全国の現場部隊に行き渡らせたい」

ドローンが捉えた土砂崩れの始点の様子   撮影:陸上自衛隊

陸自は現在、開発実験団においてドローン導入に向け複数機種の評価を行っている最中だが、防衛省は平成31年度予算の概算要求で、「災害用ドローンの導入」に約1億5千万円の予算を求めている。
防衛省は導入機数を明らかにしていないが、陸自が評価中の機体と同等程度の性能を有する市販のドローンは概ね30万円~100万円とみられることから、1億5千万円の予算が認められれば150台~500台のドローンが導入されるかもしれない。
実際、陸自の幹部自衛官は、「将来的に、全国の現場部隊にドローンを行き渡らせ、より一層迅速な人命救助と災害復旧に役立てたい」と、ドローンの活用に意欲を示している。

被災状況の把握だけでなく、災害によって孤立した地域に陸自ドローンが救援物資をピストン輸送したり、高層を飛行するヘリからでは見つけにくい要救助者の居場所を迅速に特定するなど、陸自ドローンの可能性はまだまだ広がるだろう。自衛隊がドローンを活用してこれまで以上に多くの命を救えるようになる日も、遠くはなさそうだ。

(執筆:フジテレビ 政治部 防衛省担当 古山倫範)

(写真提供:陸上幕僚監部)

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