【開場まで1カ月】パリ・ランジス市場から学ぶ豊洲の課題

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  • 移転まで1カ月の築地市場 移転について業者は「そんなに大変じゃない」
  • “フランスの築地市場”は陳列の仕方が際立つ
  • 業者の中には築地市場に残るという人もいるが、都関係者は異を唱える

あと1カ月…築地の移転準備は「大変でない」?

豊洲移転までいよいよ残すところ1ヶ月 。
築地に行くたびに外国人観光客だけでなく日本人観光客の数も目に見えて増えている。

閉まる前に築地に行きたい
この思いは世界共通のようだ。

そうした人達でごった返すなか、築地市場の皆さんは引っ越しの準備で忙しいのかと思ったら多くの人が口をそろえて
そんなに大変じゃないよ

なぜかと言えば本来移転予定だった2年前に、すでに引越しの準備を進めていたうえ「持っていくものはほとんどない」からだという。

築地市場

昭和レトロな雰囲気を漂わせる黒電話など市場内には都の所有物が多いうえ、 歴史を感じさせる看板は豊洲には設置する場所がないので持って行けない。
古くなったまな板などほぼすべての機材や備品をおいていく店も多いという。

その引越しのために東京都は業者に対し、1000万円まで実質無利子で融資をうけられる、業務用冷蔵庫(省エネタイプのもの)を購入する場合半額を都が補助する、など手厚いサポートをしている。

ある仲卸業者は豊洲への移転を前に、「そもそもスーパーなどでは(業者が)食品を触る時には、帽子、白衣、マスク、手袋の着用が当たり前。今後豊洲に移転して個々の店舗ごとに衛生についての自主基準は作るだろうが、全体で共通の衛生基準をどう作っていくかが重要。」と築地では店舗ごとにばらつきの大きい「衛生」に対する考え方ややり方を、移転後は市場全体で厳しくやっていく必要性がある、と警鐘をならす。

また、豊洲市場そのものについても「20年前に設計されたものなので、行った途端に時代遅れ。 東京都もハコ作ったから「はい、終わり」でなくどうマイナーチェンジをしていくかだ。」と移転後の運用が重要、とも指摘する。

“フランスの築地市場”に学ぶこと

フランスの築地市場、とも言われるのパリのランジス市場には今後の豊洲市場の運用のヒントがある。
去年10月にランジス市場を訪れる機会があったが、パリ郊外に位置し、まだ夜も明けないうちに出発したが、車で30分もかかった。決して便利な場所ではない。
1969年に開場、建物は清潔だけれども無機質な感じで 一見 がらんとして見える。

パリ ランジス市場

そんななか際立っていたのが商品の陳列の仕方だった。
魚も野菜や果物も木の箱に入れられて一見無造作に置かれているように見えるが、それがとても美しい。

もちろん水槽に入った魚のほうが鮮度はいいはずなのだが、 第一印象の美しさ により非常に美味しそうに見える。豊洲市場では開場後に産地と料理人をつなぐイベントなども計画されており、陳列を工夫して来場者へのアピール力を上げていくのも案外大事なのではないか。

またランジス市場では、「人が少ないなあ」と思ったが、担当者がそのワケをこう語った。

お客さんは直接来ない。電話やインターネットで注文してもらって、その後届ける。30年前までは商店やレストランの客が買いに来るというのが大半を占めていたが、今はそういう直接的・個人的販売は50%。残りはネットと倉庫を使っての注文販売」
ランジス市場はIT、ネット取引を活用して新たな販路を拡大しているのだ。

さらにオランダの花市場やノルウェー、アイスランドの水産物市場では、ITを活用して(一定条件を満たせば)どこでも誰でも入札できるようになっているとのこと。そうした状況と比べ、日本の市場はIT化の遅れが著しく、今後、取り組むべき課題の一つとなりそうだ。

「築地市場に残る」と言う業者も…

一方で業者のなかには「築地閉場後も水と電気は通っているし営業権がある」として「築地市場に居残る」と断言する人もいる。

しかし、都の関係者は「営業権があるので居残り可能」とする考えに対して
築地市場が終わるまでが業務許可の期限。卸業をするための許可は、築地市場で卸業の業務ができなくなった時点で効力がなくなる。運転免許で失効した場合、更新しなければ終わってしまうのと同じ」と異を唱える。

そして居残った業者に対しては、立ち退きを求め、それでも応じない場合は行政代執行も考えざるをえないのでは、とのことだった。

このような課題を抱えるなか豊洲市場は、来月11日に開場初日を迎えるが、ここまで大規模な市場移転は多くの関係者にとって未体験の事で、当日は大混乱も予想されている。

その混乱に対する不安から、築地に商品を求めてくる飲食店に対して業者側が「大混乱で商品がきちんと届くかわからないから豊洲開場前後は店を休んでください」というと「1週間ほど休む」と答える飲食店もあるほどだという。

農水省からの開設許可も下り、今月13日には豊洲で小池知事らが出席し、「開場記念式典」が行われる予定の豊洲市場。

さまざまな期待と不安が交差する中、「開場まであと1か月」のカウントダウンが始まった。

(執筆:フジテレビ 都庁担当 小川美那)

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