「元気な動物たちが心の助けになれば」 停電復旧後すぐに開園した旭山動物園の“決断”【北海道地震】

カテゴリ:国内

  • 地割れなどの被害や動物たちへの影響はなく、停電解消の約3時間後に開園
  • 早期再開の決断に「培った停電時の対応」と「職員らの思い」
  • 観覧エリアの節電続く…園長「やれることをやっていきたい」

北海道胆振地方を震源とする最大震度7の地震から5日目。
平日は電力需要が増し、再び電力が逼迫する恐れがあるとして、北海道電力などが平常時の2割の節電を呼びかけている。

JRは、9日から運転を再開した特急列車の間引き運転を行っているほか、地下鉄と市電も朝と夕方のラッシュ時を除き、運行本数を減らしている。

ライフラインへの打撃で様々な業種の営業再開に時間がかかる中、北海道北部の旭川市にある旭山動物園は、いち早く営業を再開していた。
旭川市はこの地震で、震度4を観測したが、園内では地震による地割れなどの被害や動物たちへの影響はなく、停電解消からわずか約3時間後の7日朝から開園したのだ。

素早い営業再開にネット上では「すごいなぁ!応援してますよ!」「スタッフさんたち、本当にありがとう。」「道内にいて心細かったのですが、旭山動物園の動物たちやスタッフさんに元気をもらいました。」など驚きと称賛の声が上がっている。

なぜ、こんなにもすぐに再開することができたのか? そして、早期再開に踏み切った理由とは?
旭山動物園の坂東園長に話を伺った。

停電の長期化に備えた対応は「日頃から」

旭山動物園HPより

ーー地震発生直後の園内の状況はどのようなものだった?

旭山動物園では夜間にも警備が常駐していて、地震発生時は「瞬間的な揺れ」を感じたと聞きました。
他の職員数名と園内を点検し、地震による動物たちへの影響や設備破損などの被害はないことを確認しましたが、停電は長引きそうだなという印象を受けました。


ーー停電に対しては、どのような対応を?

旭川市内の一部では通電しているという情報もあり、情報収集を行いながら、動物のエサを保管している冷凍庫や展示水槽など、電気が必要な設備に発電機をつないで電力を確保しました。
また、水については、浄水場に確認をしたところ「全く問題ない」ということでしたが、万が一のために、住民の方々に迷惑をお掛けしない範囲で約200トンの貯水を行いました。

ーー不測の事態に備えてのマニュアルがあった?

災害時に限らず、多くの動物を飼育する動物園ですから、停電時の対応は日頃から検討しています。
これまでの経験もありますので、飼育員も管理職員もそれに沿って対応しました。



地震発生当日の6日も開園に向けての準備を進めていたが、正午過ぎになっても電気復旧の見通しが立たず、やむなく臨時閉園となった。
電気が復旧したのは、7日午前6時過ぎだったという。

旭山動物園は、通電から2時間後には開園できる体制を整えていた。ポンプなどの設備を点検し、定時の9時30分に開園。
しかし、北海道内は依然として地震が起こる可能性があり、園内も節電を行うなど、完全に通常通りとはいかない状態だ。
そんな中でも開園に踏み切った理由があった。

「1カ所でも『やっているよ』と伝えることができれば」

園内の動物たち(旭山動物園HPより)

ーー地震の翌日に営業を再開した理由は?

旭山動物園はこの時期、地元のほか道外や海外からの観光客のお客さまで賑わいます。
観光で北海道を訪れた人たちは、JRも路線バスも交通がストップしてしまったことで帰るに帰れず、不安を抱えているのではないかと思いました。
そんな人たちのために、私たちは何ができるだろうか?と考えた時、1カ所でも「やっているよ」と伝えることができれば、つらい思いをした皆さんに落ち着きと安心を取り戻してもらえるのではないかと。

旅行者の中には、一生のうちで今日(7日)しか旭山動物園に来る機会がない人もいるかもしれません。
楽しみにしてくれる人がいるなら、大きな支障がない限り、開園しない理由はありません。
動物たちは元気に過ごしています。
いつもと変わらない様子の動物たちが、少しでも皆さんの心の助けとなって、「動物園に来てよかった」と思っていただければうれしいです。


ーー来園者からはどのような声が?

入場者数は2000人超とこのシーズンの平均よりも少ないですが、雨降りの平日にはめずらしくない数字です。
しかし、私たちはお客さまの数にはこだわっているわけではありません。
ホームページやツイッター上で発表した営業再開のお知らせを見て、宿泊先のホテルからタクシーで乗り合って来園してくださった観光客や海外からの団体客もいらっしゃいました。
親子で訪れた地元のお母さんは、「スーパーは人が大勢いて、幼稚園も休園、子供が笑顔で遊んでいて良い気分転換になった」と話してくれて、私たちもうれしく思いました。

観覧エリアでの節電続く

旭川市内の停電は7日夜には全面復旧したが、旭山動物園では現在も観覧設備での節電を続けている。
園長によると、来園者向けのエアコンを止めているほか、安全を考え展示の動線を確保した上で、館内の照明を暗くしているという。
動物の紹介看板のスポットライトは落として、自動ドアは停止して開放しているそうだ。
また、売店や飲食店では食材等が確保できず、一部のメニューで提供ができない状況だという。

北海道ではこれから、最も過ごしやすい秋の行楽シーズンを迎えるが、道内の観光地では客足が遠のき、ホテルの宿泊予約はキャンセルが相次いでいるという。
地震の影響がいつまで続くのか心配されるが、今後について園長は、「思ってもみない突然の地震で、地元住民もまだ不安な思いを抱えています。こういった状況の中で簡単には言えませんが、『お越しください』と言える状態になるように、やれることをやっていきたいです」と話してくれた。
1日も早く日常が戻るよう、復旧が急がれる。

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