争点は「トランプか反トランプか」

 
 
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3日の「レイバーディ(労働者の日)」の休日をきっかけに、米国の中間選挙戦はいよいよホームストレッチの最後の競り合いに入った。

争点は「トランプか反トランプか」の一点に絞られた感じで、民主党側からの反トランプのキャンペーンも暴露本の出版など勢いづいているように見えるが、当のトランプ大統領の支持率には大きな変化が見られない

連日大統領の支持率を調べているラスムッセン社の9月4日の調査では「支持」45%でほぼ変わらず、オバマ大統領の同時期の支持率42%を上回っている。
 

トランプ生き残りの秘密とは

何がトランプ人気を支えているのか思案していると、次のような見出しの記事をワシントンの情報に詳しいニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」に見つけた。

The Washington Free Beaconより
The Washington Free Beaconより

「トランプ生き残りの秘密」
筆者は同サイトの編集長のマシュー・コンティネッティ氏で、小見出しには「大統領は経済と敵から恩恵を得ている」とある。
「経済」とは、いうまでもなくトランプ政権下の好況である。大統領就任後ダウ平均株価は40%上がり、国内総生産(GDP)は1.5%から今年は3%になる見通しだ。有権者が重視する失業率も最低水準になっているのでトランプ支持の原因として当然だ。

フェイクニュースが支持を強める?

 
 

問題は「敵」だが、コンティネッティ氏は反トランプのメディアが大統領を批判すると、支持者たちにはそれが「国民が選んだ政権を転覆させる陰謀」と受け取られ、逆に支持が強まる効果があると分析する。

特に反トランプメディアが「フェイク・ニュース(偽ニュース)」を流すと、それを材料にトランプ支持者が同調者を勧誘する動きにもなるとして、その例に最近のCNNの誤報まがいのニュースを指摘する。

それはCNNが「とくダネ」として7月26日に放送したもので、トランプ選対内部の複数の「筋」の話として「トランプ大統領は、選対幹部とロシアの弁護士がヒラリー候補のスキャンダルについて相談することを事前に知っていた」というものだった。

しかし、その後自分がその「筋」だとする弁護士が名乗り出て「あれは間違いだった」と告白した。それにもかかわらずCNNは「筋は複数あり、我々は記事を訂正しない」と宣言し、保守系ばかりでなく民主党系のメディアからもその態度に疑問の声が上がっている。
 

「偽CNNは国民の敵だ!」

これに対してトランプ大統領は8月29日にこうツィートした。



「匿名の『筋』がメディアをダメにしているとFOXニュースは言っている。匿名の『筋』なんてはじめから存在しないんだ。フェイクニュースの記者達が作り出したフィクションだ。偽CNNを見るといい。現行犯で捕まってしまったではないか!国民の敵だ!」

匿名と言えば、ニューヨーク・タイムズ紙も5日、トランプ政権内の匿名の高官という人物の大統領を批判する投稿を掲載し、大統領は「嘘くさい」と非難したが、これもトランプ大統領の支持率アップにつながるのかもしれない。

(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。