桜島バックのカメラ目線 練りに練られた安倍首相出馬表明の舞台ウラ

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  • 「桜島の前」はこだわりの構図だった
  • 18万超フォロワーのインスタは、総裁選の為?
  • 「地元よいしょ」に「情に訴え」首相のイメージ戦略とは

出馬表明 いつ、どこで?

9月7日に予定される自民党総裁選の告示まで10日あまりとなった8月26日。
安倍首相が、ついに正式に総裁選立候補を表明しました。

安倍首相はこれまで、出馬表明のタイミングや場面設定について「蝉しぐれを聞きながらよく考えたい」「気力、体力があるかを見つめ直しながら判断したい」などと煙に巻いてきたため、記者団の間では「出馬会見を開くのか」「告示ギリギリまで表明しないのか」「もしかして防災訓練で表明する?」などと、様々な推測が飛び交っていました。

そうした中、安倍首相が実際に出馬表明の場に選んだのは、鹿児島を象徴する名勝・桜島を一望する漁港でした。

「桜島」に込めたストーリー

鹿児島で、そして「桜島」をバックに出馬表明したのは、単にタイミングが合ったからではありません。
そこには安倍首相と周辺による周到なシナリオが練られていたのです。

首相周辺によると、安倍首相が在任中取り組んできたことに通底するのは、「地方」を軸に掲げていたということ。
その政権運営の実績を強調するためにも、出馬は東京ではなく地方で表明したいという思いがあり、地方行脚を実質的に始める地だった、鹿児島が選ばれることになったといいます。

そして、鹿児島における「ふるさと」の象徴と言えば桜島。そこで、桜島をバックに出馬表明するストーリーが出来上がったのです。

また、地方での表明にこだわった背景には、対抗馬である石破元幹事長が「地方創生」を政策の柱にしていることを意識し、「地方創生はそもそも安倍内閣の看板政策だ」というアピールを込めた部分もあったとみられます。

「見栄え」を気にする首相

私は首相官邸の取材を担当する記者として、安倍首相にマイクを向けた回数はこれまで十数回あり、また、立ったまま報道陣の取材に応じる「ぶら下がり会見」で首相の真横に立ったことも幾度となくあります。
その際、首相はいつも左右を見回しつつ、質問する記者らに視線を送り、アイコンタクトを取っていたことが印象に残っています。

しかし今回の出馬表明は違いました。
私は首相にマイクを向けていましたが、目が合うことはほとんどなく、首相は終始じっと正面のカメラを見つめていました。
今回の出馬表明はNHKで全国に中継されていて、カメラ目線をとることで、出馬への思いを国民にしっかりと訴えたいという安倍首相の意図をひしひしと感じました。

首相の肩に桜島 渾身の構図

そして、安倍首相と周辺は、背景に強くこだわっていました。
画面を見てみると、構図としてちょうど首相の肩に桜島がかかり、首相自身も表情がよく見える程度の大きさで画面に収まっています。
表明会見の前に首相周辺が入念にカメラのセットアップ等を確認したためで、安倍首相が出馬表明という一大イベントにあたり、「見栄え」を重視していたことがうかがえます。
この出馬表明は新聞・テレビのみならず、ネットメディアにも多く掲載、拡散され、安倍首相個人のインスタグラムにも直ちに掲載されました。

首相のインスタグラムは去年12月に開設され、18万人超(8月29日現在)のフォロワーを獲得するに至っていますが、それもこうした総裁選での発信力を確保するために、計画的に行われていたのではないかと推測できます。

地元に首相が来た!安倍首相のファンサービス

沿道の人々を自ら招き寄せ写真撮影を呼びかける安倍首相

そして、宮崎県での農場視察の際には、総裁選を前にした安倍首相のサービス精神が見られる場面がありました。
車列で移動している最中に、沿道に人々が多く集まっているのを見つけると、安倍首相は急きょ車列を止めて車から降り、自ら沿道の人々を招きよせて記念撮影を始めたのです。
あまりに急な展開に、同行しているSP(警護官)らも戸惑いを隠せない様子でした。
私は1年以上にわたって安倍首相周辺の取材をしていますが、このような展開は初めてでした。

演説会場の外に集まった地元の人々

そして、安倍首相は演説では地元へのリップサービスも忘れません。

宮崎県と言えば高千穂、日本発祥の地であります。ですからこの宮崎県には日本一が多いんですね。
焼酎の生産も日本一、鶏の生産も日本一、さらには人口当たりのスナックの数も日本一なんですね。
フェニックスカントリークラブ。あのタイガー・ウッズも、そしてトム・ワトソンも優勝した名門のゴルフクラブ。
私のようなゴルフ好きにとってはここまで来てゴルフができない、大変残念なことですが、この宮崎県には素晴らしい魅力がつまっているなと実感しているところです。

安倍首相の地方での演説には、このような「地元よいしょネタ」が満載です。

そして総裁選の争点の1つに位置付ける憲法9条改正についても、“自衛官の息子の気持ちを考えてほしい”などと、聴衆の情に訴えることを意識しています。

サービス精神や地方に寄り添うイメージを前面に出して、党員・党友票の獲得を狙う安倍首相。
6年前の総裁選では党員票で自らを上回った石破元幹事長を、現職首相として圧倒するため、この先の地方行脚において、どんな戦略を繰り出すか注目です。

(執筆:政治部 首相官邸担当 山田勇)