池上彰さんが解説「なぜ大人になったら働かなきゃいけないの?」

池上彰
カテゴリ:暮らし

  • 子どもが質問「ニートでも生きていけるのになぜ?」
  • 働く目的を聞いた調査で、1位は「お金を得るため」
  • ただし、幸福度と年収は比例しない

これからの日本を背負ってたつ子どもたちにとって、今の日本や世界で起きている様々なニュースに対するギモンや分からないコトがたくさんあるはず。

7日放送の「池上彰スペシャル 池上彰×子供×ニュース 痛快ギモンに大人も納得SP」(フジテレビ系)では、そんな子どもたちのギモンを通して、大人たちも分からなかった、分かりにくかったニュースの疑問を解き明かしていく。


なぜ大人になったら働かなきゃいけないの?

小中学生約70人が集められたスタジオから、中学2年生の永瀬さんのこんな質問。

なぜ大人になったら働かなきゃいけないの?」

永瀬さんは「大人になったら絶対働かなきゃいけないというのがあるけど、その人たちが楽しいと思っていれば、別に働かなくても楽しいからいいんじゃないかなと思います。」と素朴なギモンを池上さんにぶつける。

スタジオでは、同じようなギモンを持っている子どもからの「ニートでも生きていけるのになぜ働かなくちゃいけない?」という意見が出る一方で、「働かないとちゃんと食べていけないと思う」「でも『社畜』にはなりたくない」など大人びた発言もあった。

池上さんはこのギモンにどう答えるのだろうか?

そもそも「働く」とは?

池上:
では、そもそも「働く」とは、どういうことでしょうか?

子供の頃の夢を叶えることができた人もいれば、今の仕事が楽しいからという人もいるんだよね。人によって働く目的は違うんですね。こちらの調査結果を見てください。

18歳以上の人に、働く目的を聞いた内閣府の調査を見てみると、1位は「お金を得るため」が圧倒的で5割以上。2位の「生きがいを見つけるため」が約2割。
以下「社会の一員としての務めを果たすため」「自分の才能や能力を発揮するため」という回答が続く。

池上:
お金のため、と聞くとちょっと聞こえがよくないかもしれませんが、皆さんのご両親や保護者の人たちは、君たちに健康で幸せな生活を送ってほしいなと思ってるからこそ働いている。そのためにはお金も必要になる。

ところがお金のために働く、という人が多い中で、こんなデータもあります。

幸福度と年収は比例しない

池上: 
これは、年収ごとに分けて、それぞれ皆さんに「いま、どれぐらい幸せですか?」を聞いた調査です。最高に幸せを「10」とした、10段階で幸福度が出ています。

注目してほしいのは、年収200万円未満、200〜400万円、400〜600万円は、だんだん金額に比例して給料が増えるほど幸福度も上がっていますよね。

池上: 
でもここから先、400万円以降1000万円未満まで幸福度はほとんど変わりませんね。年収が400万円の人も800万円の人も実は幸福度はほぼ同じです。

池上: 
さらに1000万円以上になると、再び上昇するんですが、そこから幸福度は、むしろ少し下がっていきます。
お金をたくさん稼いでも、幸せだと感じていないという人たちがでてくるということなんですね。

一方で、こんなデータがあります。
これは年収別の残業時間です。年収があがるにつれて残業時間もどんどん増えていく。
人より多く働けば多くお金をもらえている、というデータですが、残業時間が多いということは逆に言うと自分の時間が減っていってしまう。

つまり年収が1000万円になるまでは、幸せだと思うかもしれないけど、そこから先どんどん残業時間が増えてくるとそれこそ自由な時間がない。家族と一緒の時間が減ってしまうと実はあんまり幸せじゃないと思う人が増える。
   
お金はたくさんもらえるのに幸せじゃない、というのはなんだかさみしいよね。お金が多い方がいいに決まってるって思うかもしれないけど、働きすぎてお金が多いのは実は幸せじゃないかもしれないということを考えてほしい。   

「お金のために働く」人が多い中で、年収が増えても働いてばかりだと、必ずしも幸せを感じるわけではないという現実を、池上さんは子どもたちに問いかけ、働く意味を考えさせる。
そして、働きすぎを防ぐための政府の取り組みへと話は展開する。

「過労死」は英語でも「KAROSHI」

池上:
最近よく、過労死のニュースを見ることが多いと思います。この過労死の原因は、残業時間が多すぎたり、あるいは休日出勤で全然休めない。その結果、心や体を壊してしまう人がいっぱいいるんです。
   
ちなみに、「過労死」って英語でなんというかというと、「KAROSHI」なんです!
   
海外に「過労死」という発想はない。働きすぎて死ぬっていう発想が海外にないので日本語がそのまま「KAROSHI」として海外に通用するようになった。

さすがにこれじゃだめだと、政府もようやく動きました。それが「働き方改革関連法」です。会社を、みんなが働きたい環境に変えていこう、ということで6月に法律ができました。

「高度プロフェッショナル制度」は、平均的な働いている人の給料の倍以上にあたる年収1075万円以上の人限定の制度。
ただ、たくさん働かせて給料がこれまで通りということにも使われる可能性や、今は1075万円以上だが、これを800万円以上、600万円以上と、将来適用範囲が広がっていくことを懸念する人もいる。
過労死を防ぐために作られたはずの法律なのに、なぜこの制度が含まれているのだろうか?


池上:
過労死を防ぐためにこの法律を作ったはずなんですが、例えば上から3つは企業にとってはこれまでより負担が増えるわけでしょ。企業側にしてみれば負担が多すぎるので、4つ目に企業にとっていいことを付け加えますよということで、「これでどうですか?」となったんじゃないかと言われています。

今、理想の働き方は何だろうかというのがまさに問われている。少なくとも過労死は出さないような環境を作っていかなければいけないと、ようやく政府が動き出してきたということなんです。

池上彰さんの“答え”

池上:
さて、いろいろ見てきましたが、どうして働かなければならないのか?その疑問に、私なりにお答えしようと思います。

人間ってたった一人では生きていけないでしょ。絶海の孤島でたった一人で生きていくってとてもできないよね。社会があってみんなの中で生きている、だから自分は生きていられるんだという思いがあるわけでしょ。

そしてそこで働いて、給料をもらうということは、例えば君たちが何か作ったり提供したサービスに喜んで、それにお金を払ってくれる人がいるから給料がもらえるわけだよね。
君たちが働いたことで、どこかで喜んでくれてる人がいるわけだ。

自分がいくら働いても誰も喜んでくれないってなるとやる気が出ないんだけど、自分が働くことで世の中の誰かが喜んでくれている、あるいは人の命を助けることができている、それが「生きがい」になるんじゃないかと思う。

働いて自分は社会のために役に立っているんだ、自分はこの社会で必要とされてる人間なんだと思えること。働くってことはそういうことなんだと思います。
だから、将来君たちが働くってときに是非そういう生きがいをもって働けるような働き場所を見つけてほしいなと思う。


スタジオでは池上さん自身の「生きがい」についても語られた。
この他にも番組では、子どもに改めて聞かれると、大人でもしっかり答えられない様々なギモンに、わかりやすい解説とともに池上さんが答えていく。

「池上彰スペシャル! 池上彰×子供×ニュース 痛快ギモンに大人も納得SP」
9月7日(金)21時~22時52分放送。

そして、その直前19時からの「池上彰 緊急生放送スペシャル~今ニッポン列島が危ない~」(※一部地域を除く)もお見逃しなく。