野党国対“女傑”の半年 ~立憲民主・辻元氏の素顔と評価

カテゴリ:国内

  • 「辻元清美語録」と知られざる素顔
  • 「共闘」「足並みの乱れ」・・・野党協議の現場で何が起きていたのか
  • “辻元イズム”の功罪と国対委員長続投の是非

“国会最終日”辻元氏が見せた晴れ晴れ顔

事実上の国会会期末となった7月20日。安倍内閣不信任決議案を提出するため、野党の国会対策委員長らの姿は衆院議長室にあった。
そのとき、立憲民主党の辻元清美国対委員長の表情は、例えるなら「長い受験勉強を終えた受験生」のような、晴れ晴れしいものだった。
まるで憑き物がとれたように。

内閣不信任決議案を提出

それもそのはずである。
この半年、慣れない野党第一党の国対委員長として、数々の難局に直面し、ドタバタの中、心休まることのない日々を過ごしてきた辻元氏。
この晴れ晴れしい表情こそが、国対委員長としての苦しい道のりを逆に象徴していたのではないだろうか。

辻元国対を取材した濃密な半年間を振り返り、通常国会でいったい何が起きていたのか、その深層を伝えたい。

名言?迷言?辻元氏語録

テレビのニュースで一番見かける野党議員は?と尋ねれば、辻元氏と答える人は多いのではないだろうか。

与野党の交渉に動きがあった場合はもちろん、政府・与党の不祥事が発覚した場合などに、いち早くコメントするのも辻元国対委員長の役割だ。
すべてが国会運営につながるものだからというのもあるが、辻元氏の発信力が期待されているという要素もある。

森友・加計問題や、働き方改革をめぐるデータ不備問題など、この国会は連日新たな問題が生じたため、辻元氏の「ぶらさがり(=座っての会見ではなく、立ったまま質問に応じる形式)」はそれこそ毎日、時には1日に複数回行われた。
辻元氏が「これで今日何回目のぶらさがりかしら」とため息をつく姿が印象に残っている。

しかし、1日に何度聞いても、新たにインパクトのあることを言うのが、“辻元節”だ。そのいくつかを紹介したい。

「まるで官邸は疑惑の館」「官邸の地獄の窯が開いた」「疑惑のもぐら叩き

野党がやってきたのは、対話のための圧力」「また安倍友か」

「何が言いたいのかしら?脅しかしら?

 発言内容は、すべて辻元氏自身で考えており、「キャッチーでわかりやすく、印象に残るフレーズを数秒で」と、ニュースで使われやすいポイントを意識しているという。
 辻元氏としては自らの発信力への期待に応えるための策なのだが、こうした発言には「言葉いじりのパフォーマンスだ」と揶揄する声もつきまとった。

慕われ嫌われ…辻元氏の“素顔”

辻元氏といえば、小泉元首相に「総理!総理!」と食い下がるなど、ガンガン突き進む追及型、攻撃系の議員という印象が当初あった。
しかし、連日夜まで仕事をする党職員らを『いつも頑張ってくれてるから、労わせて!』と食事に連れ出すなど、周囲への気配りを忘れない一面も見られた。
また、辻元氏は、新たな疑惑や不祥事が発覚すれば心から怒ってみせ、過労死遺族の声には涙をうかべながら耳を傾け、野党が結束し何かを勝ち取れば「ヤッター!」と声をあげて喜んだ。

こうした辻元流の対応が、右腕とも言える山内国対委員長代理をはじめとする周辺からは慕われ、一方で「単純だ」と見る人からは嫌われる傾向にあると思われる。

2001年衆院予算委員会で小泉首相(当時)に食い下がる辻元氏

「国対」文化とは対極?の辻元氏起用

では、辻元氏の国対委員長としての働きぶりの中身は、どのくらい評価に値するものだったのだろうか。

まずは、そもそも国対委員長とは何なのかだが、「国対」とは「国会対策」の略だ。
各党には「国会対策委員会」という部署があり、他党との国会運営の交渉にあたっている。そのトップが「国会対策委員長」、すなわち国対委員長だ。

特に重要になるのが「ヨヤコク(与野国)」と呼ばれる与野党それぞれの第一党の国対委員長同士の交渉だ。
野党各党の意見は、野党第一党の国対委員長がまとめ、代表して与党側との交渉にあたる。
ここで法案の審議や採決の日程など、国会の重要日程のほとんどが決まると言っていい。

与党「○○法案の審議を始めたい」
野党「審議入りは認められない」
与党「そこをなんとか」
野党「まだ△△法案の審議が不十分だ!」
与党「ではあと7時間審議をするので・・・」
野党「それなら応じられると思う・・・持ち帰ります」

といった具合にギリギリの妥協点を探る。
それだけに国対委員長には根回しなどに長けた海千山千のベテラン議員が起用されることが多い。

しかし、この国会でその重要ポストに起用されたのが、これまで根回し型とは対極とみられてきた辻元氏だった。

辻元氏は通常国会で野党をまとめられたか

辻元国対を象徴するものとして、維新を除く野党の国対委員長が集まり意見をすり合わせるために新設された「野党国対連絡会議」という定例の会議がある。
乱立状態となった野党内の足並みをそろえようという狙いだったが、会議は当初とにかく長かった。2時間におよぶこともあった。

こうした状況に、与野党問わず、「辻元さんじゃ務まらないよ。まとめられるはずがない」との批判の声も聞こえた。
しかし長時間になったのは、辻元氏が「みんなの意見を聴く」ということを徹底してやり続けていたという面もあり、野党国対に一定の結束が生まれる結果にはつながった。

一方、国会終盤に辻元氏を悩ませたのが、参院で野党第一党の国民民主党だった。

内閣不信任案の提出時期についても意見が分かれ、国民民主党の舟山参院国対委員長は、「残念ながら最終局面で立憲民主党が理解してくれなかった。意思疎通してきたつもりだが、通じなかった」と立憲国対を批判した。

また、野党の重鎮からも「こんな国会運営はない」という辻元国対への手厳しい声もあがった。

次期国会へ…“辻元国対”への評価と課題は

辻元氏はこの国会について「野党がまとまったからこそ、劣勢の試合だったが戦うことができた」と自ら評価し、「『野党は批判ばかり』という批判を恐れず、しっかりとチェック機能を果たすことがこれほど大事なことはないと今国会を通じて思った。黙ってしまったら終わりだ」と振り返った。

しかし一方で、休日を含む17日間の審議拒否を続けたものの、安倍昭恵夫人や加計孝太郎理事長の証人喚問は実現せず、麻生財務大臣を辞任に追い込むこともできなかったなど、成果は乏しかったという批判も大きい。
FNNの世論調査での立憲民主党の支持率は、1月には14.8%あったが、国会が閉会した7月には11.7%へと下がった。

私が取材する中では辻元氏への野党内の評価としては、先のような批判の一方で、「最初は泣き言ばかり言ってどうなることかと思った。でも今じゃ彼女の代わりはいない」「無茶な指示もある。でも彼女が言うならと、みんな走り回る。一生懸命な彼女をみんなが支えたいと思うから成り立っている」という前向きな声は意外と多く聞かれる。

しかし、対峙する与党からは、「辻元の国対運営はヘボすぎる」、「あんなに緊張感のない、タイミング見え見えの内閣不信任案なんて見たことなくて面白かった」などと、辻元氏について能力不足、そして党内掌握不十分と見て、なめきっているような声も後を絶たない。
評価はそれだけ割れていると言える。

こうした中で、辻元氏の今後について、調整力が問われる国対委員長ではなく、直接、委員会で質問に立って首相らと対峙する役割を担うべきだとして、交代を求める声も野党内にある。

参院選を来年に控え、野党として存在感をアピールしなければならない中、辻元国対の体制は、秋以降どうなるか。
その判断は立憲民主党の今後を左右する要素の1つとなる。

(執筆:フジテレビ政治部・野党担当 坂本舞)

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