トランプ大統領は弾劾できない

司法取引で裏切った側近の証言を信用できるか

カテゴリ:ワールド

  • トランプ大統領の元側近2人が脱税などの罪で有罪に
  • 大統領自身の「弾劾」の可能性が浮上しているが・・・
  • 「司法取引」に応じた証言の信憑性は?

大統領「弾劾」の条件は?

トランプ米大統領の元側近2人が脱税などの罪で有罪になったことで、大統領自身の「弾劾」つまりは罷免されることの可能性が浮上してきたと報じられるが、果たしてそうなのだろうか?

まず、「弾劾」は合衆国憲法第2条⒋項には次のように規定されている。

「大統領、副大統領及び合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪またはその他の重罪及び軽犯罪につき弾劾され、かつ有罪の判決を受けた場合はその職を免ぜられる」

手続き的には、まず下院で過半数の賛成があれば訴追でき、上院で裁判が行われ有罪の判決には出席議員の三分の二の賛成が必要。

大統領の責任がどこまで問えるか

トランプ大統領の元補佐官 ポール・マナフォート氏

そこで今回の場合だが、まずトランプ大統領の元補佐官のマナフォート氏は自身の脱税と詐欺罪八件で有罪となったが、いずれもトランプ選対に加わる前のことで大統領が関わったケースはない。

またコーエン弁護士は、やはり個人の脱税と銀行ローン申し込みの際の虚偽記載の7件と、2016年の大統領選で「ある候補者」の指示で「選挙に影響を与える目的で」二人の女性に合計28万ドル(約3080万円)支払ったが、その内15万ドル(約1650万円)は雑誌社からで、企業からの献金を禁止した選挙資金法に違反し、残りの13万ドル(約1430万円)は自分が個人献金の制限を超えて献金したと有罪認定をした。

つまり、二人が有罪になった罪でトランプ大統領の責任が問えそうなのはコーエン氏の選挙資金法違反だけで、それも大統領は教唆した共犯にすぎない。

弾劾は、マスコミの「果たせぬ夢物語」

トランプ大統領の元顧問弁護士 マイケル・コーエン氏

しかし、コーエン氏は「ある候補者」と言ったけでトランプ大統領と特定していないこと。またそうであったとしても、13万ドルはトランプ大統領が「私費で補填した」と言っているので、コーエン氏の献金とはいえそうもない。さらにコーエン氏はその支払いを「選挙に影響を及ぼさないため」としているが、それは「選挙に影響を与える」献金を制限している選挙資金法に違反かどうか疑わしいと、弁護士で評論家のマーク・レビン氏は言う。

加えてコーエン氏は今回の有罪の供述を「司法取引」で行ったとされるが、脱税や詐欺罪の刑を軽減してもらう代わりに大統領を貶めるような発言をしたことについて、同氏の発言には信憑性が乏しいという指摘もある。

百歩譲って、これらが全て証明されてトランプ大統領に法律違反の嫌疑が深まり、さらに今年11月の中間選挙で民主党が下院で過半数を占めた場合ならば大統領を訴追することができるが、その後上院で2/3 が大統領に叛旗を翻すことは考えにくい。

下院民主党を率いるペロシ院内総務も「今は弾劾を考えるときではない」と言っており、弾劾話はトランプ嫌いの米国のマスコミの「果たせぬ夢物語」と考えた方がよいのではないか。

(執筆:ジャーナリスト 木村太郎)
(イラスト:さいとうひさし)

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