権力闘争のすゝめ  ~自民党総裁選を楽しむ方法~

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  •  権力をめぐる究極の人間模様に注目
  • 総裁選を見ればその後の政権の行方も見える
  • 「点」より「線」で見る政治ニュース 

自民党総裁選は壮大な人間ドラマ

記録的な猛暑となった今年の夏。暑気払いをした方も例年より多いのではないか。
日頃のうっぷんを晴らすため、ビールジョッキを片手に会社内などの様々な人間模様や上司の悪口などで盛り上がるのは世の常である。

そんな暑い夏は永田町にもやって来た。6年ぶりの本格選挙となる、自民党総裁選の季節である。

「しょせん内輪の争いでしょ」とあなどるなかれ。総裁選は日本の将来を左右する選挙なのだ。
「楽しむ」などと言うと不謹慎だが、ことは日本の国政に直結する話だ。
興味は持った方がいいし、興味を持つには入りやすい「入口」があった方がいい。
今回はその一助となれば、と思った次第である。

まず、この総裁選は「最高の権力」を持つ、総理大臣を選ぶ選挙であるということだ。
選ばれた総理は国の運営のために、政府や党の要職を誰にするか、人事や体制を決めることになる。
会社に例えれば、社長が交代する(可能性がある)、それに伴い上層部を含めた陣容が変わる、という話だ。

「権力」に対しては、敢然と立ち向かう人、擦り寄る人、じっと空気を読む人、いろいろいるだろう。
その複雑な人間模様が、総理大臣を中心とする国家権力をめぐって描かれるのだ。
先の酒飲み話の最高レベルバージョン、とでも言えばいいだろうか。
そこには好き嫌いはもちろん恩や恨み、嫉妬、計算、裏切りといった、人間が持つ欲と感情が垣間見え、時として露わになる。

政治家といえども人間である。その発言や行動に隠された思惑や背景が我々にも十分理解できるから興味深いのだ。
それは市井の人々と何ら変わらない。むしろ、より激しいともいえる。

「確かに自分ならこうするな~」「この人、ずるいよね~」。そういった感覚で政治ニュースをみてはいかがだろうか。

政権の体力を決める選挙結果

もうひとつ、今回の総裁選は仮に安倍首相が勝つとしても、政権がいつまで続くかを推し測る、大きな指針になるという点でも注目される。

勝つだけではダメ・・・安倍首相

安倍首相にとって、この総裁選は最後の総裁選だ。
3選されてもあと(自民党総裁として)3年の任期があるだけ。つまり勝利しても「終わりが始まる」総裁選なのだ。
さらに、来年には前回与党が大勝した参議院選挙が控え、これまで2度延期した消費税率アップという高いハードルが待ち構えている。

こうした状況の中で、安倍首相がどこまで「日本の顔」として存在感を示していけるかが試されるのだ。
そのバロメーターとなるのが、より民意に近い党員票だ。

「石破さんが党員票の4割を取れば、ポスト安倍の資格を持つ」とは、ある自民党関係者の言葉だ。どういうことか。

 405ある議員票のうち、現時点で石破氏支持は石破派の20人と参議院竹下派の約20人で合わせて約40人。基礎票は全体の1割だ。

一方、議員票と同じ405ある党員票で石破氏が4割を取れば、票数に表れる議員と党員との”温度差”が3割分となる。
極端な言い方をすれば「永田町と有権者のかい離」を突きつけられることになるのだ。
これにより「安倍さんの人気は永田町の中だけだったのか」「安倍さんのままでは選挙に勝てない」という空気が広がれば、安倍政権そのものが脅かされる。

石破氏の総裁選チラシ

ただでさえ「安倍一強」が続く中、自民党内には人事などでの不満が溜まっていると指摘されてきただけに、首相にとって求心力維持は至上命題だ。
つまり安倍首相は勝つだけではダメなのだ。
党員票も含めて圧倒的に勝つことが求められている、という点が肝要だ。

それを踏まえた上で、安倍首相が地方議員との会合を重ねているというニュースを見れば、その意味合いは変わってこないか。
単なる会合ではなく、党員票獲得に向けた「必死の」活動であることがうかがえる。党内からは「危機感の裏返しだ」という声が聞こえてくるのも事実だ。総裁選の動き、少しは興味が沸いただろうか。

「だから何?」にとどまらない政治の見方を

政治は過去から続いてきた国の道を未来に繋げるようなものだと先輩から教わった。
政治家の発言や行動をひとつの「点」で見るだけなら、それ自体がニュースでない限り、面白くもなんともないだろう。

ただ、そのひとつひとつが総裁選やその後の人事、来年の参議院選挙などをにらんだ、壮大な人間ドラマの「仕掛け」だとすれば、見方も変わってくるのではないだろうか。

言い方を変えれば、数カ月後に今を振り返って「あの時の発言や行動は、こういう狙いがあったのか」とわかれば、同じ人間として興味を持つことはたやすいかもしれない。

実はこの原稿、とある若手社員との暑気払いの会で政局に関する話をした際「so what?(だから何?)」という率直な感想をぶつけられたことから出発している。

 「日本の総理が交代するかもしれないよ?」に「so what?」はないだろうが、「交代するきっかけになるかもしれないよ?」は「so what?」かもしれない。

 政治報道に携わる立場として「so what?」から「why?(なぜ?)」の部分を広げ、それに対して「because(なぜなら)」で応えられるようにしなくてはならないと思っている。

 何といっても政治は国や地方のあり方、税金の使い道を決める大事なものだ。メディアも含めて国民全体がしっかり見ていくことが必要であることは言うまでもない。

(執筆・フジテレビ 政治部デスク 山崎文博)