“有給クイズ”が物議。「正解したら有給が2倍」はアリなのか?弁護士に聞いた

カテゴリ:国内

  • 「ジャパンビバレッジ」でクイズに正解しないと有給取得ができなかった問題
  • 有給は法律で定められた権利で、企業が与えるものではない
  • 一方で、「クイズに正解したら有給2倍!」は条件次第で可能な場合も

「全問正解で有給チャンス」。

自動販売機事業大手「ジャパンビバレッジ」の支店長が、有給休暇取得の条件としてクイズの正解を求めるメールを複数の部下に送っていたことが分かった。

メールは2016年に送っていたもので、クイズは自販機の売り上げが高い駅の順番を問うものだった。このクイズに正解者はおらず、結局、誰も有給を取れなかったとされている。

このような内容のメールを送ったことについて同社は20日、事実関係を認めた。

クイズに全問正解しないと有給が取得できない? 有給は労働基準法で定められた歴とした労働者の権利のはず。有給休暇取得にこんな条件が許されるのだろうか。

労働問題に詳しいプラム綜合法律事務所の梅澤康二弁護士に話を聞いた。

有給休暇は法律で定められた労働者の権利

ーーそもそも年次有給休暇って何?

労働基準法で認められている労働者の権利で、権利行使をすると特定の日の労働が免除されます。また、働かないと普通は「No work No pay」の原則で賃金の支払いはありませんが、有給休暇については、労働義務を免除しつつその日の給料が支払われる制度です。

休日以外にも一定の休息を与えることで労働者の「心身のリフレッシュ」などを図る目的で、規定されています。


ーー法律で定められているということは、企業が有給を与えているわけではない?

まず、年次有給休暇は「年休権」と呼ばれる労働者の権利です。これは法律で定められた権利であり、企業が与えるものではありません。「全労働日の8割以上出勤している」などの法律上の要件を満たせば、当然に発生するものですので、法律で定められた有給休暇の範囲では、「企業が『与える』『与えない』」ということを決めることはできないのです。

ただし、法律で定められた有給休暇に加えて、会社独自でさらに有給を付与している場合は、この分に限っては会社の裁量で行使の条件等を決めることができます。

原則、有給休暇の権利行使に企業の承認はいらない

ーー「クイズで不正解だと有給は認めない」。だとすると、報道にあるような「上司の判断で有給を与えない」ことって違法の可能性も…

はい、発生している法定の有給の権利行使に企業側の承認は原則必要ありません。労働者は自分の判断で「この日に休む」という年休権を行使し、労働義務を免除してもらうことができるのです。

ただ、よく言われる「会社の承認がなくて…」というのは「時季変更権」の話です。労働基準法は例外として「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、企業が労働者の指定した有給日の変更を求めることを認めています。

つまり、原則的には、有給取得に企業の承認はいりませんが、企業が例外的に時季変更権を行使する場合には企業の指定日に有給を使うこととなります。

「クイズに正解したら有給2倍!」は条件次第で可能

ーー 一方で、「クイズに正解したら有給2倍!」。こんなことはできるの?

労働基準法では、例えば週5のフルタイム勤務であれば雇用日から6カ月の時点で有給が10日間付与されることを定めています。この10日は法律で認められた労働者の不可侵の権利で、企業側の判断や合意で減じることはできません。

他方、上記事例で10日間を超えて11日や12日といった追加の有給休暇を企業の裁量で与えることは許されます。先程も紹介しましたが、このような法律の範囲を超える上乗せ部分に関しては、企業が与える要件や行使の方法を独自に定めることも可能です。

つまり、法定で定められた有給以外として、「ウチの会社は法定の倍の20日を与えるよ。ただしクイズに正解したらね」というような方法もあり得ます。これに関しては、企業が自由に決めても大丈夫です。

ただ、あまりに恣意的な運用で労働者間の公平を著しく害するような場合には、このような運用自体が違法性を帯びることはあり得ます。

ーー有給を付与しなかった場合は、上司や会社はどうなるの?

法定の有給休暇を与えなかった場合、労働基準法は罰則として6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金刑を定めています。実際この罰則が誰を対象とするかは解釈に委ねられるところではありますが、実務的には会社代表者に科せられるのが通常でしょう。

もっとも、実務では労基法違反事例に直ちに罰則が適用されることは稀であり、まずは違反者に対し労働基準監督署による指導や是正勧告などの行政指導がなされます。その指導に従わなかったり、改善報告が虚偽であったり、繰り返し違反するなどの悪質な違反事例となった場合に、刑事罰が適用されるのが通常のプロセスかと思われます。


「働き方改革」が推し進められる一方で、いまだに有給休暇をとりづらいという声をきくが、法律で定められた権利なので、きちんと権利行使して、心身のリフレッシュに活用することが大事だろう。