米B-2A、露Tu-160戦略爆撃機の展開と中国H-20爆撃機計画

カテゴリ:話題

  • ロシアは、アラスカ睨むチュクチ半島に史上初のTu-160超音速戦略爆撃機を展開
  • 米国防省報告書、中国H-6爆撃機に注目
  • 中国ステルス戦略爆撃機、2025年頃デビューか

米B-2Aステルス戦略爆撃機、ハワイに飛来

現地8月15日、米太平洋空軍はハワイのヒッカム航空基地に、ステルス戦略爆撃機B-2A複数機が飛来したことを16日、明らかにした。発表文には「インド太平洋地域の主要なパートナー国に、この地域における平和と安定への米国のコミットメントを示すため、慣例となっている飛行を実施」と説明されていた。

B-2Aステルス戦略爆撃機

この発表文には、B-2Aの機数が書かれていなかったが、一説には3機で、台風の影響がなくなれば、グアムのアンダーセン基地に移動するのではないか、とも言われていた。アンダーセン基地には、B-2A用の特殊な格納庫があり、本年1月にも、アンダーセン基地に3機のB-2Aが展開していたこともあるかもしれない。

B-2Aは、全部で20機しか存在しない、米軍にとっては、いわば虎の子。核・非核両用の爆撃機であり、例えば、B-61核爆弾16発を搭載可能で、空中給油なしでも9600kmもの航続距離を誇るB-2Aは、“見せる抑止”である戦略爆撃機であり、また、その性能面ではステルス爆撃機でもある。

B-2Aステルス戦略爆撃機

普段、米本土ミズーリ州のホワイトマン空軍基地に集中配備されていて、空中給油を受ければ、全世界どこへでも無着陸で作戦可能。そのためか、グアムへのB-2A展開は、本年1月の前は2016年8月と間が空いている。ハワイへの着陸を公表したのは、“見せる抑止”としてなのかもしれない。

史上初!露Tu-160がチュクチ半島へ

戦略爆撃機Tu-160ブラックジャック

B-2Aが15日、ハワイに着陸した一方、ロシア国防省は16日、ベーリング海峡を挟んでアラスカに面した、極東ロシアのチュクチ半島にあるアナディリ飛行場に、戦略爆撃機ツポレフ160ブラックジャックを史上初めて着陸させたと発表した。

この着陸は、長距離飛行演習の一環として実施されたもので、ロシア国防省の発表では、Tu-160の他にTu-95MSベアH爆撃機、Il-78マイダス空中給油機を含む合計10機がノンストップで、7000kmを飛行。コミ射爆場に空中発射の武器を使用した、という。

Tu-160飛行イメージ図

超音速爆撃機のブラックジャックは、核弾頭搭載可能な巡航ミサイルKh-55を最大12発搭載可能とされ、ロシア南西部のサラトフから、2機がアナディリ飛行場に向かったとみられている。極東ロシアの方が、ハワイよりほぼ1日早いという時差も考えると、米露の戦略爆撃機が、あまり時間の差がなく、世界規模での、いわば戦略戦力の見せつけあいのような動きをしていたということだろうか。

米海軍を牽制?中国DF-26中距離弾道ミサイル

中国の軍事力リポート

また、米国防省は16日、「中国の軍事力」リポートを発表したが、例年より強調されていることのひとつが、中国の爆撃機。この報告書には例年のように、中国の中距離・準中距離弾道ミサイル・巡航ミサイル戦力の射程図が掲載されているが、今年の版では初めて、DF-26中距離弾道ミサイルの射程が書き込まれた。

DF-26中距離弾道ミサイル

最大射程4000kmとされるDF-26ミサイルは、グアムが射程内。また、機動性のある弾頭を持っていて、空母キラーとも呼ばれ、この射程内では、米海軍の空母打撃群の動きも制限されることになるかもしれない。

DF-26含む様々なミサイルの射程図

この図では日本は、様々な中国の弾道ミサイル・巡航ミサイルの射程内だ。数についても、日本に届く準中距離弾道ミサイルの発射装置は100~125基/輛で、ミサイルそのものは、200~300発。中距離弾道ミサイルの発射装置は、16~30基/輛で、ミサイルそのものは、16~30発。そして、地上発射巡航ミサイルは、発射装置で、40~55基/輛。ミサイルそのものは、200~300発と記されている。発射装置の数は、その数だけミサイルが同時または、連射できることに繋がるだろう。

中国H-6爆撃機と新型ステルス戦略爆撃機計画“H-20”

そして、爆撃機についてはH-6K爆撃機が、射程1500km級の地上攻撃用巡航ミサイルを搭載すると、どこまでが射程内となるかも別の地図で示している。日本もその中にあるが、注目されるのは、中国のH-6爆撃機が作戦空域と想定されるエリアを3ヵ所、示したこと。いずれも、DF-26弾道ミサイルの傘の下とも見ることが出来るが、一つは南シナ海で、あとは、台湾の東と日本海だ。

中国・H-6爆撃機

そして、報告書はこれまでのH-6爆撃機の飛行実績から「H-6K爆撃機がアメリカおよび同盟国の施設に対して攻撃を行う能力が成熟していることを示した」と評価。この同盟国には、日本も含まれている、と見る方が自然だろう。さらに中国は、H-20と呼ばれる、航続距離8500kmの新型ステルス戦略爆撃機の計画があり、2025年頃にデビューするだろうとリポートは分析している。

H-6も、この将来の爆撃機も、核兵器を搭載可能で、中国軍は巡航ミサイルだけではなく、2発の弾道ミサイルを搭載できるように爆撃機を改修する計画があり、そのうちの1発は核弾頭搭載可能と見られる、とも報告書は記している。

Mig-31Kから発射されるキンジャール

空中発射弾道ミサイルとしては、ロシアが、MiG-31戦闘機を改造して、キンジャール地上攻撃用ミサイルを搭載する計画を進めているが、この場合、マッハ5を超える「極超音速兵器」とロシアは定義しているので、中国の爆撃機発射弾道ミサイルが、事実上「極超音速兵器」となる計画ならば、日本の安全保障上も視野に入れるべき課題となるかもしれない。

米中露の戦略兵器は、もちろん、戦略爆撃機だけではない。米・中・露の戦略兵器の発達、変化にどう対応すべきなのか。日本の視座が問われる。

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