4割が勘違い「抗生物質は風邪に効く」…危険な副作用に注意

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  • 風邪やインフルエンザには効かない抗生物質
  • しかし、「風邪で抗生物質を出してくれるのはいい医者」と思う人が約3割
  • 安易に飲むとかえって危険!『抗生物質』の正しい飲み方

抗生物質は"万能薬"ではない!

暑さが一転、半袖シャツでは寒さすら感じるような、秋の風が吹き始めた。急な気候の変化に体調を崩して病院に行き、薬を処方してもらう人もいるだろう。
こうした中、国立国際医療研究センターが薬の処方に関するこんな意識調査を実施した。

回答者3192人のうち
抗生物質(抗菌薬)は風邪をひいたときに効果がある、と思っている人は43.8%
「風邪のときに抗生物質を処方してくれるのは良い医師、と思っている人は33.3%」ということが分かったという。

何がいけないの?と思っている人もいるかもしれないが、実は、抗生物質は風邪やインフルエンザには効果がないのだ。

つまり、我々は抗生物質が風邪に効くと勘違いしているだけでなく、処方してもらえないと「悪い医者だ!」とプリプリしているのだ。
一体、この誤解はどこから生まれているのだろうか。そして、正しい使用法はどんなものなのだろうか。
国立国際医療研究センターの、具(ぐ)芳明医師にお話を伺った。

「細菌」と「ウイルス」で有効なものは違う

――抗生物質はなぜ風邪に効かない?

抗生物質(私たちは抗菌薬と呼ぶことが多いですが、同じものと考えて構いません)は細菌が増えていく仕組みに働きかけて細菌を倒す薬です。
細菌とウイルスは大きさや構造が大きく異なり、増えていく仕組みもまったく違います。そのため、細菌に狙いを定めて開発された抗生物質はウイルスには効かないのです。


――なぜ抗生物質に誤ったイメージがある?

かつて抗生物質の開発が順調に進められていた時代には、多くの新薬が次々と登場しました。抗生物質は多くの細菌感染症を劇的に治し、命を救ってきたのです。そのような素晴らしい効果の印象から「抗生物質はどんな感染症にも効く」というイメージが作られてきたのかもしれません。


「風邪の菌が…」と言ったことがある人も多いだろうが、風邪の原因のほとんどは「ウイルス」。
そのため、細菌を倒すための抗生物質では効き目がないのだという。

「抗生物質は風邪に効く」と答えた43.8%の人を年齢で見ると、20~24歳の割合が多かったものの、ほぼ全年代が誤解しているという結果だったという。

かつては、風邪の重症化を防ぐためなどに処方されていた

「風邪に特効薬はない」という話を聞いたことがある人も多いかと思うが、実際に風邪には原因のウイルスを倒す薬がないため、解熱薬や咳止めなど、症状を緩和して体力の消耗を防ぐ薬が処方される。
風邪をこじらせて肺炎を発症してしまうことがあるが、この場合は「肺炎と判断した時点で抗生物質を使って治療する」のが基本であり、予防のつもりで抗生物質を飲んでも、肺炎はほとんど防ぐことができないのだという。

国立国際医療研究センターによると「医療従事者、患者さん側の双方に『風邪には抗菌薬が必要』という意識が植え付けられてきた」という。

かつては風邪が重症化するのを防いだり、細菌性の合併症を予防することを目的とした抗生物質の処方が多く行われてきたものの、さまざまな医学研究によって、予防のための抗生物質の処方は正しくない、ということがわかってきたのだという。

しかし、いまだに患者が「風邪に効く」と誤解して抗生物質の処方を求めた際、「患者に説明した上で、納得を得られなければ処方する」とする医師も多いという。
医師が正しく薬を薦めても、患者側が薬についてきちんと理解する姿勢がないと、このようなケースはなくならないだろう。

国立国際医療研究センターの具医師は「抗生物質の本来の作用や必要性を理解し大切に使っていくことは、医療をより安全で質の高いものとし、抗生物質を次の世代に渡していくことにつながります」と語っている。

耐性菌が増えるきっかけになりやすい

効果がないだけならばまだいいが、抗生物質の飲みすぎは危険な副作用を招くこともあるのだという。

――必要に迫られない場面で抗生物質を使うのはどうして危険?

元々わずかに体(腸内や皮膚など)にいた抗生物質の効かない細菌(耐性菌)がいて、抗生物質を使ったときに生き残って増えていくパターンがあります。また、抗生物質を使っているうちに細菌が生き延びようと変化して耐性菌になっていくパターンもあります。
いずれのパターンでも抗生物質を使うことがきっかけとなって耐性菌が生き残り、繰り返し増えて病気をおこしてしまうことがあります。

抗生物質を正しく使っても耐性菌が生き残ることはありますが、本来必要ない場面で使ってしまえば耐性菌を生じる機会を増やすことにつながります。そのため、抗生物質を使う場面を見極めて大切に使う必要があります。

細菌はさまざまなメカニズムで抗生物質への効きにくさ(耐性)を得ていきます。すべての耐性菌が他の細菌を変化させるわけではありませんが、中には抗生物質が効きにくくなる遺伝子を他の細菌に渡すことができるものもあります。そのような仕組みの耐性菌は、他の細菌を変化させて耐性菌にしてしまうことがあります。


――では、抗生物質を飲むときは何に気を付ければいい?

抗生物質は医師の処方箋がなくては購入できません。抗生物質が必要と判断されて処方されたら、指示通りにきちんと内服することが大切です。
中途半端な飲み方(少なく飲む、間引きする、早めにやめてしまう)は、耐性菌が増えるきっかけになりやすいと考えられています。

抗生物質によっては他の薬と一緒に飲むことで効きが悪くなったり、副作用が生じやすくなったりすることがあります。処方薬、市販薬を問わず、すでに飲んでいる薬があれば医師や薬剤師に申し出てください。

また、抗生物質をいつか飲もうと保管することはやめましょう。病気によって、細菌によって治療に適した抗生物質は異なります。あとから別の機会に内服することで耐性菌が増えるきっかけを作ってしまうことはもちろん、予期しない副作用の危険も高まります。

処方された薬は、指示通りに飲み切ることが大切

国立国際医療研究センターのAMR臨床リファレンスセンターの調査によると、2017年の抗生物質の全国販売量は、2013年と比較し7.8%減少。
さまざまな対策や医療現場の努力によって、不必要な抗生物質の処方は年々減っているという。

しかし、アンケート結果からもわかるように、まだまだ患者側の誤解は少なくない。
「自分の体のことは自分が一番よくわかる」と思う方もいるかも知れないが、薬に関しては話が別。
必要なものを、必要な時に、必要な分だけ。薬の正しい知識を身につけておきたい。

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