トルコショックの引き金を引いた“経済テロリスト”

カテゴリ:話題

  • トランプ・ツイートが崖っぷちの背中を一押し
  • 同盟関係に無頓着なのはトルコだけじゃない
  • 短期決戦のFFR協議を抱える日本も油断は禁物

「ソーシャル・メディアの経済テロリスト」

トルコ通貨「リラ」の大幅下落の動揺が世界に広がっている。14日の日本の株式市場、円相場はひとまず落ち着きを取り戻したように見えるが油断は禁物だ。トルコのエルドアン大統領が言うところの「ソーシャル・メディアで跋扈する経済テロリスト」への懸念がかつてなく高まっているからだ。

「ソーシャル・メディア上の経済テロリスト(複数)」が具体的に誰を、何を指しているのかは明らかではない。ただ、エルドアン大統領は以前からソーシャル・メディアは大嫌いで、様々な制限を加えてきた経緯がある。気に入らないメッセージの発信と拡散に腹を据えかねていて、特に反エルドアン勢力の結集とその政治的影響力を排除しようとしてのことだ。

トルコ・エルドアン大統領

今回のリラ急落との関連でソーシャル・メディアと言えば、やはりトランプ大統領のツイッター発言だ。週末の10日、トルコの鉄鋼・アルミへの追加関税を2倍に引き上げ、それぞれ50%と20%にするとツイート。これを受けてリラ安に拍車がかかり、トルコ経済は苦境に陥った。
エルドアン大統領が、トランプ・ツイートとそれを拡散させた人たちを「ソーシャル・メディア上の経済テロリスト」と非難したのだとしても、その憤懣やるかたない気持ちは理解できるというものだ。

トランプ米大統領

リラ安を招いたアメリカにトルコは…

そもそもこのところのリラ安の基調を作ってきたのは、アメリカの金融政策だ。リーマンショック後の量的金融緩和を徐々に終了させ、利上げも進めているため、世界にばらまかれた米ドルがトルコなど新興国からアメリカへと戻っていく。アメリカで投資した方が確実に儲かるからだ。トランプ減税などをファイナンスするためアメリカ国債の発行は増えているし、株価も好調だ。対ドルでリラが下がって当たり前と言える状況だ。

にもかかわらず、トルコ当局がテロ容疑で拘束しているアメリカ人牧師の身柄をめぐり、静かな交渉ではなくて制裁と対抗措置という大立ち回りを演じてしまうことで、リラ安を急落へと引き込んでしまった。トルコとアメリカ、どっちもどっちだが、そこにトランプ・ツイートだ。
アメリカ側が招いた面もあるリラ安を理由に、ただでも一方的な追加関税措置を突然のツイートで2倍に引き上げるって、いくらなんでもやりすぎじゃないか? ニューヨークの市場関係者が「そこまでやるのか!」と驚きおののいたのもうなずける。

エルドアン政権の金融政策や経済運営がダメすぎるという論評もあるが、世界最強経済で基軸通貨国のアメリカと新興国の一つにすぎないトルコをハンデなしで比較しようというのには無理があるというものだ。
トランプ・ツイートには、当然予想されるトルコ経済と国民の苦境への配慮も、トルコと関係の深いEU各国をはじめ世界がこうむるであろう悪影響への熟慮も感じられない。自分を押し通すために『ちょっと痛めつけてやる』というのりに思えてならない。

さらにエルドアン大統領のこの発言。
「アフガンでもソマリアでも戦略的パートナーとして傍らに居続け、NATO同盟国のトルコだぞ。その背中を刺すってどういうことだっ!」
これは一段と明瞭にアメリカを非難する言葉だ。トランプ・ツイートの裏に同盟関係への無頓着さを実感してのことだろう。

それは相手がトルコだから、エルドアンだからなのではない。
米韓FTA交渉では在韓米軍撤退の可能性をちらつかせて韓国に譲歩を迫ったというし、アメリカの安全保障への影響を理由に追加関税を発動した鉄鋼・アルミも、25%関税を検討している乗用車も、主な対象国は全てアメリカの同盟国だ。

日本だって他人事ではない。
日米FFR協議は9月のシンゾー・ドナルド会談までの短期決戦。どのタイミングで何をターゲットにしたテロ的ツイートが飛んでくるか、気を抜けない状況にある。

(執筆:フジテレビ 解説委員 風間晋)