日韓関係炎上!?徴用工裁判と韓国司法の闇

カテゴリ:ワールド

  • 「解決済み」なのに賠償払え!?徴用工裁判が動いた 
  • 激震に見舞われた韓国最高裁は「反日革新派判事」だらけ 
  • 日本は「国民情緒法」判決への備えを 

今年も韓国に「反日の夏」がやってきました。

8月14日は「慰安婦の日」。そして日本にとって終戦記念日である8月15日は、韓国にとっては日本の植民地支配が終わった記念日「光復節」です。韓国政府や元慰安婦の支援団体などによる式典やシンポジウムが目白押しで、韓国に住む日本人にとっては、猛暑の辛さに加えて、心情的にも居心地が悪い2日間になりそうです。
日韓の連携が必須である北朝鮮の核問題もある中、つかず離れずの日韓関係。「最終的かつ不可逆的に解決」したはずの慰安婦問題でもゴタゴタが続いていますが、この夏、両国の間に突き刺さったもう一つの“とげ”にも不穏な動きが出てきました。

それは、徴用工問題です。

2017年8月、ソウル・龍山駅前に設置された徴用工像

徴用工問題とは?

徴用工とは、日中戦争当時の1938年に制定された国家総動員法を元に、工場や炭鉱に動員された民間人の事。当初朝鮮半島に住む人たちは対象外でしたが、アメリカとの戦況が悪化した1944年9月以降は、本土の日本人と同様、朝鮮半島に住んでいた人たちも労働に駆り出されたのです。

戦後、この元徴用工への補償問題は、日韓国交正常化に向けて越えなければいけない大きなハードルの1つとなっていました。両国は14年間に及ぶ紆余曲折の交渉を経て、1965年の日韓基本条約で国交正常化しますが、その際、問題解決のために日韓請求権協定を結びました。その協定の第2条1項がポイントになります。概要は以下の通り。

「両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたこととなる事を確認する」

平たく言えば、日本の植民地支配によって損害を被った韓国人や会社への補償は、日本や日本の企業ではなく、国交正常化の際に日本政府が支払った5億ドル(有償・無償合わせて)という巨額の資金を受け取った韓国政府が行うという事で、両国が国際的な約束をしたということです。

これで文字通り完全解決!!!していたら良かったのですが、そうはいきませんでした…

舞台は日本から韓国の裁判所へ…

韓国政府は日本から受け取った5億ドルの大半を工場建設やインフラ整備など経済政策につぎ込む一方、「補償は韓国政府に請求しなさい」とは韓国国民に積極的に伝えませんでした。それもあってか、韓国人元徴用工は、日本の裁判所で、日本政府や日本企業を相手に補償を求める裁判を起こします。しかし、当然日本の裁判所は「日韓請求権協定で解決済み」と判断。元徴用工は完全敗訴しました。

それでも諦めきれない元徴用工は、今度は韓国の裁判所で、日本企業を相手取り、補償を求める裁判を起こしました。しかし、連戦連敗…さすがに「完全かつ最終的に解決」したと日本と約束しているのに、日本企業に補償を命じる裁判所は無かったのですが、2012年5月、韓国の最高裁(=大法院)が全てをひっくり返す判決を下しました。
「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や植民支配と直結した不法行為による損害賠償請求権は請求権協定により解決されたものと解することはできない」

つまり、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」したはずの補償を請求する権利が、元徴用工については「ある」と判断。元徴用工側の敗訴とした高裁判決を破棄して、高裁に差し戻したのです。差し戻された2度目の高裁判決では、元徴用工が勝訴し、被告の三菱重工業に元徴用工1人当り8000万ウォン(約800万円)の支払いを命じます。当然三菱重工は2013年、最高裁に上告しました。

この衝撃的な最高裁判決を受けて以降、合わせて15件ある同様の裁判で元徴用工側が次々に勝訴。そのうち3件は最高裁に上告されていて、すぐに確定判決が出ると思われたのですが、裁判はそこからおよそ5年間、塩漬けになります。

未だに、確定判決が出ていないのです。

釜山の日本総領事館前に設置しようとした徴用工像は撤去された(2018年5月)
設置を試みた市民団体と警官隊が小競り合いに

5年の膠着状態は裏取引?激震の韓国法曹界

韓国の法律関係者によると、韓国の裁判事情では、最高裁に上告して5年経っても判決が出ないのは珍しい事態です。

なぜ徴用工裁判は膠着しているのでしょうか?

もしこの流れのまま元徴用工勝訴、日本企業敗訴の判決が確定してしまったら、日本企業の資産の差し押さえ等が行われ、大きな外交問題に発展するのは火を見るよりも明らかです。そのため、今更になって最高裁は慎重になっているのでは?というのが大方の見方でした。


朴槿恵(パク・クネ)前大統領時代に、徴用工裁判での配慮を求めた、との内部告発が・・・

しかし先月26日、この膠着の謎を解き明かすかもしれない、驚愕の疑惑が、最高裁の元職員で現職の判事という人物の内部告発で噴出しました。その内部告発などによると、徴用工裁判が日本との外交問題になる事を恐れた朴槿恵(パク・クネ)前大統領の政権が、最高裁に対して、日本に配慮する判決を出す事や、確定判決を出すのを先送りする事を希望すると伝えていたというのです。政権による民事裁判への介入疑惑です。
さらに最高裁側も、裁判官の海外赴任枠を増やす事などを要求した疑惑も噴出。時の政権と最高裁が裏取引か…もしこれが事実なら、「三権分立」とは名ばかりで、「法治国家」とも言えない事になってしまいます。真相は今月2日に強制捜査に乗り出した韓国検察による捜査結果などを待たないと、何とも言えない状態です。

そして、疑惑発覚の翌日、5年間動かなかった徴用工裁判が、突然動き出します。

舞台は最高裁大法廷に…

元職員の告発の翌日、韓国最高裁は上告されていた3件のうち、新日鉄住金が被告になっている裁判を、これまでの4人の判事による小法廷から、13人全員の判事が参加する大法廷に回すと発表しました。韓国の場合、小法廷で議論がまとまらない場合や、社会的関心が大きい場合などには、大法廷で裁かれる事になります。そして大法廷に回された事で、早ければ今月にも、審理が始まるのではとの観測も出ています。

そうなれば、いよいよ確定判決が近づいてきます。
一体、どんな判決が下されるのか?
それを占うには、韓国最高裁の判事の顔ぶれを分析する必要があります。

革新派だらけの最高裁

韓国の場合、最高裁のトップである院長は大統領の指名により選ばれます。現在の院長は、去年8月に文在寅大統領に指名された、前春川地裁院長の金命洙(キム・ミョンス)氏です。この金院長は異色の経歴で、韓国メディアによると、最高裁判事の経験もない大抜擢人事だった上に、革新派裁判官が集う、「ウリ法研究会」の会長だったというのです。

金命洙(キム・ミョンス)大法院院長

韓国国民は「革新派」と「保守派」で分断されています。対日本の考え方の違いを大まかに解説すると、革新派=強硬な反日、保守派=比較的マイルドな反日 と言えます。

革新派である文在寅大統領が指名した、革新派裁判官である金院長は、任期満了となった最高裁判事の後釜に、革新派裁判官を次々に据えました。その結果、13人の最高裁判事のうち、すでに5人は金院長ご指名の革新派判事となりました。(ちなみに、このうち1人は、親北朝鮮の活動をして、憲法裁判所に解散を命じられた政党「統進党」の弁護団長。もう一人は韓国で裁判にかけられた北朝鮮のスパイの弁護を担当していました)今年11月には保守派政権時代に任命された判事1人の任期が終わるため、さらに革新派判事が増え、金院長含めた7人が革新派となります。つまり、過半数となるのです。

革新派だらけの最高裁なら、当然日本に対して厳しい判決=日本企業に賠償を命じる判決が出るのでは…と考えられます。
さらに、前述の「裏取引疑惑」が噴出し、保守派である朴槿恵政権の意向を汲んで、判決を引き延ばしていたのでは?との疑惑の目が向けられているので、朴槿恵政権が望んでいたような、「日本逆転勝訴」の判決は出しにくく、「日本敗訴」になるとの推論も成り立ちます。

日本側の旗色は悪そうですが、実はそう簡単ではないとの見方もあります。
 

韓国政府のホンネと、判決の行方

金院長を指名した文在寅大統領

判決の行方を占う上では、金院長を指名した文大統領がどんな結末を望んでいるかという事も考える必要があります。

実は、文大統領=革新派=強硬な反日=日本敗訴という単純な構図ではないのです。
文大統領の師匠であり、歴代大統領のうち最も反日的であったとの評価もある革新派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、2005年に過去の歴史を清算するために、日韓請求権協定で何が解決されたのかを検証しました。その結果、慰安婦問題や韓国人被爆者問題などは「解決されていない」としましたが、徴用工問題については「請求権協定で解決済み」との結論を出していたのです。韓国政府はそれ以降、一貫して「徴用工問題は解決済み」との姿勢なのです。

弁護士出身の文大統領は、心情的には日本側敗訴を願っている節はありますが、(去年8月の演説で「元徴用工が日本企業に損害賠償を求める権利は残っている」と発言しましたが、その後の安倍総理との電話会談で「徴用工の賠償問題は解決済み」と発言し、火消しに走りました…)日韓関係を大きく傷つけるような、重大な外交問題になる事は避けたいとみられます。

つまり、最高裁の革新派判事が、文大統領の意を忖度するならば、「日本逆転勝訴」の可能性もあると言えます。

結局この混沌とした状況で判決を占うのは困難です。韓国の法曹関係者や日韓外交筋に見通しを聞いてみても、「判決がどう出るのかはフィフティー・フィフティー」との意見が多く聞かれました。

「国民情緒法」判決と日本の「備え」

そもそも、このような推論が成り立つのは、これまで韓国の司法が「法と証拠」だけに基づいて判断しているのではなく、「世論」や「政権」を意識して、法を超える「国民情緒法」に基づいて判断しているとの批判を受ける判決を下してきたからです。

日本に関連した判決だけでも、仏像返還訴訟(韓国人窃盗団が日本で盗んで韓国に持ち込んだ仏像について、「日本に返還しなくていい」と判決)や、靖国放火犯引き渡し裁判(靖国神社に火をつけて逃亡し、韓国で逮捕された中国人について、日本政府は犯罪人引き渡し条約に基づき日本への身柄引き渡しを韓国政府に求めたが、「政治犯だから日本に引き渡さない」と判決)など、首をかしげざるを得ない判決が出されてきました。

疑惑に揺れる韓国最高裁に、「法と証拠」だけに基づく厳格な判断を期待出来るのかは見通せませんが、どんな判決が出されても対応できるよう、日本側はあらゆる事態に備える必要があります。北朝鮮問題の先行きが見えない中、慰安婦問題に加えて、徴用工問題が日韓の大きな火種にならない事を祈るばかりです。

(FNNソウル支局長 渡邊康弘)

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