東京五輪の酷暑対策になるのか?サマータイム導入をめぐる“森・菅の攻防”

千田淳一
カテゴリ:国内

  • いまサマータイム論争が熱い!きっかけは森元首相 
  • その名も“夏時刻法”GHQ主導で70年前に実施 
  • 滋賀県で試験導入したところ“労働時間が増加” 

ミスター・サマータイム vs ミスター・反サマータイム

2020東京オリンピック・パラリンピックまで2年を切った今、夏の時間を1時間から2時間繰り上げる“サマータイム”が議論を巻き起こしている。

そのきっかけは先月27 日、安倍首相と面会した大会組織委員会の会長、森元首相の提唱だ。この夏、列島各地で最高気温40℃を超える歴史的酷暑を記録、熱中症による死者も続出している。暑さ対策としてサマータイムを導入すべき、だという考えだ。

しかし、この提唱に慎重なのが菅官房長官だ。7日の会見でこう述べた。

「暑さ対策の一つのご提案として受け止めていますが、国民の皆さんの日常生活に影響が生じるものでありますし、大会までの期間はあと2年と限られています。いずれにしろ暑さ対策については競技の開始時間の前倒し、沿道の緑化や路面の温度の上昇を抑制する舗装などの取り組みを進めており、ハード・ソフト両面からの総合的な対策を決定して取り組む」と導入には否定的見解を示したのだ。

その名も“夏時刻法”GHQ主導で70年前に実施

そもそもサマータイムとは夏時間制度とも呼ばれ昼間の明るい時間に全国の時刻を標準時よりも1時間程度早める制度をいう。
時間の有効活用に加えて、夕方や朝の冷房用電力が節約されることから“省エネ効果”があると言われている。

実は終戦直後の1948年(昭和23年)、連合国軍総司令部=GHQの指令により“夏時間法”が制定され、サマータイム制度が4年間実施された。

しかし、国民的議論が行われないことに加え、法制定後のわずか3日後の実施とあって、国民の生活が大混乱した。さらに過重労働や、児童の夜明け前登校が問題となり、世論調査でも国民の半数以上が反対をとなえ、1952年(昭和27年)に廃止が決まった経緯がある

試験導入で労働時間が増加!?

その後1998年、再びサマータイム導入の機運が高まった。
政府による地球温暖化対策大綱の策定を機に、サマータイム導入を検討する有識者による国民会議が発足した。
のべ13回の検討の結果、翌年の1999年“サマータイムは実施すべき”という報告書が提出された。

ただし、実施にあたって“条件”がついた。

1.国際空港路線の発着時刻の調整のために時間を要することから2年程度の準備期間
2.労働時間、生活リズム等に対する悪影響の懸念への対応
3.信号機コンピュータ・ソフトウエアの改修等にかかる数千億円の費用

など、いずれも重い“条件”だ。

この当時、国が行った「地球環境とライフスタイルに関する世論調査(1999年)」ではサマータイム制度に関して、賛成60%(このうち「条件が整備されれば賛成」が46.2%)反対20%、わからない20%だった。条件なしの賛成は13.8%にとどまる結果だった。
山積する課題を乗り越えようと、参議院ではサマータイム制度研究議員連盟が立ち上がった。しかし、法案提出には至らなかった。

労働時間増加 滋賀県の教訓は生かされる!?

こうした政府の動きの一方で、2003年、滋賀県が県職員を対象にサマータイムの試行実験を行っていた。7月から8月の8週間限定で、30分から1時間早出をするという取り組みだった。しかし、参加者の4割が「労働時間が増加した」と回答する事例が報告され、ここでも本格導入までには至らなかった。

では世界の国はどうだろうか、OECD加盟国(今年4月時点)35か国のうち日本や韓国、トルコ、アイルランドを除いた31か国でサマータイムが導入されている。一方、いったん導入されるもロシアのように見送られた国もある。

安倍首相は大会組織委員会会長の森元首相と会談した7日、自民党に対しサマータイムの導入を検討するよう指示を出した。

実施しては廃止され、検討されては見送られてきた“サマータイム“。そもそも70年前の導入時は”省エネ対策“だったが今回は”暑さ対策“として検討される。果たして国民的議論は巻き起こり、どういう結論が導かれるのか。この夏の関心事の一つだ。

(政治部 官邸担当 千田淳一)

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