「ビューティフル」“霊柩車”に魅せられたアメリカ人 悩みは「自動車関税」

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  • 記者が取材した日本車の輸入業者、見たのはなぜか「霊柩車」 
  • 輸入車への追加関税により「1台28万円」程度の値上げに 
  • それでも輸入業者は「トランプ氏を支持する」なぜ??

トランプ政権の自動車関税への懸念が高まる中、茂木経済再生担当大臣は9日、ワシントンを訪問して、アメリカ政府との通商協議に臨みます。自動車関税が与える影響についてアメリカ国内の輸入業者を取材しました。

こんなところに日本の霊柩車?

アメリカ東部、バージニア州。自動車関税の影響を取材するために、のどかな田舎町にある自動車ディーラーを訪ねました。

首都ワシントンからアパラチア山脈沿いに車を走らせること5時間。日本人はもちろん、アジア人もあまり見当たらない地域です。店内に入ると、レトロな車、約600台がずらり。

しかし、真っ先に目を引いたのはこちらです。

日本で使われている霊柩車です。レプリカなどではなく、車体の横には「限定」「○○葬祭センター」の文字、内装もそのままで実際に使われていたものです。

40年あまり、この地で日本車ディーラーをしているオーナーのダンカンさんに話を聞いてみました。


オーナーのゲイリー・ダンカン氏

「(霊柩車は)一台1万ドル~1万8000ドル(日本円で約110万円~200万円)だ」「美しいでしょう。日本のお城がいかに華麗だったか、日本を旅行したときのことを思い出す」

“日本の美”を霊柩車に重ね合わせているようでした。

さらに屋外に出ると、見慣れた真っ赤な車体も販売されていました。それは消防車両でした。

こちらは1台1万2900ドル(日本円で約140万円)

霊柩車は12台、消防車両20台あまりを扱うというオーナー。実際に使っているアメリカ人はいるのでしょうか。

どんな人が購入するの?

オーナー曰く「(霊柩車に関心を持つ人は多い?)ノーだ。」

やはり霊柩車は、なかなか売れないようですが、カリフォルニア州の葬儀場経営者や、ニューヨークの方が購入したのだとか。

一方、消防車の方は…

「ワイナリーが購入しようとしている。火事に備えるのかは分からないけどね」

ここバージニアはワインも有名ですが、ワイナリー農家の方が購入を検討しているとのこと。ブドウ畑に消防車、少し不思議な組み合わせに思えます。オーナーによると、こうした消防車両などは、日本で現役を引退した後に輸入したもの。役目を終えた車が遠く離れたアメリカで第2の「人生」を送っているのです。



記者の質問に答えるダンカン氏

柴木記者 「なぜ日本のクラッシックカーを販売している?」
ダンカン氏「お客さんはこれまで見たことがないだろう。客は日本の品質を知っているんだ」

手頃な値段でレアなコレクションが手に入る「走る芸術品」
オーナーのダンカンさんは日本のクラシックカーの魅力をこう語ります。

自動車関税が及ぼす影響

自国の貿易赤字を減らすことを公約とするアメリカのトランプ大統領。自動車の輸入に税率20%~25%の追加関税を検討していて、9月以降に発動する構えです。
仮に日本も自動車関税の対象になると、日本国内の自動車メーカーに大きな影響があります。

一方で、アメリカ国内で輸入ビジネスをするダンカンさんにはどのような影響があるのか、輸入車への追加関税について聞いてみました。

「公平だとは思わない。お客さんやディーラーにとってもそうだし、我々が買い付ける日本の人たちにとってもそうだ。」

ダンカンさんの店でも、車の種類やサイズによって関税の税率は異なりますが、在庫のほとんどを日本からの輸入に頼るというこの店では、輸入先を変更することなどで影響を緩和することが難しく、値上げに直結するといいます。

「車の価格は、関税と同じだけ上昇するだろう。もし(関税が)25%であれば25%上げるだろう」

この店で売っている日本車の平均価格はおよそ1万ドル(日本円で約110万円)ですが、仮に追加関税が25%かけられると将来的には値段が28万円程度上昇する見通しといいます。

追加関税は、ダンカンさんのような自動車の輸入業者や、海外から自動車や部品を輸入するアメリカの自動車メーカーにも打撃を与える「もろ刃の剣」なのです。

蜜月の日米両首脳だが、自動車関税の行方は見えない・・・。

それでもトランプを支持するワケ

トランプ大統領の自動車関税策を「不公平だ」と反対するダンカンさんですが、2016年の大統領選挙では、トランプ大統領に投票しました。
バージニア州は共和・民主両党の支持率が拮抗するスイング・ステートの一つ。ダンカンさんの店のある地域も大接戦となりました。秋に行われる中間選挙にどのように対応するか聞いてみました。

「恐らく変えることはない」

トランプ大統領への支持は変わらず、中間選挙でも共和党に投票するといいます。なぜなのでしょう。

ダンカンさんは、私たちが帰るときにキリスト教関連の書籍を手渡してくれました。
バージニア州は保守系のクリスチャンが比較的多い地域。
私は前回の大統領選で、保守系のクリスチャンを取材したときに、何よりもトランプ大統領の保守的な姿勢を強く評価していていたことを思い出しました。
こうした宗教票がトランプ大統領の強固な支持基盤になっていて、支持率の下支えとなっているのです。

 「神の下の一つの国」(トランプ大統領)

トランプ大統領は、支持者との集会で、保守的な宗教票を意識した政策や発言も多くみられます。
トランプ大統領がしかける貿易戦争、自国の農業などにも打撃があり、支持離れにつながるとの分析もありますが、一方で、経済的な打撃を受けつつも保守的な価値観を重視して支持を変えない人たちもいるのです。

 「トランプ大統領の発言や行動には同意できないことがたくさんある」と言いつつも、あくまでトランプ支持を貫くというダンカンさんの姿が印象的でした。

(ワシントン支局 柴木 友和)