北京で1万人がデモへ? 燻る反発の火種と、相次ぐ習近平政権の強権ぶり

カテゴリ:ワールド

  • 中国で人気の高利回りの金融サービス「P2P」が投資詐欺と規制で相次いで破綻
  • 約1万人規模が陳情のため北京目指すも、当局が実力で阻止
  • 中国政府の対応に失望の声も

制服姿の警察官に腕を持たれ、引きずられていく女性。
バスに強制的に押し込まれていく市民。
これは今月6日、北京市の中心部にある金融街で起きた一幕だ。
一体何が起こったのか?
その背景を紐解くと、今の習近平政権の一強独裁ぶりが透けて見えてくる。

きっかけは、詐欺と規制による「P2P」企業の相次ぐ破綻

借り手と貸し手を、インターネットを利用して仲介する「P2P」(“Peer to Peer”の略、Peerは“同等の人”という意)と呼ばれる金融サービスが、2010年代から中国で人気を集めた。
その最も大きな理由は圧倒的な高利回りで、銀行の理財商品(=中国国内で取引される高利回りの資産運用商品)が5%前後の中、P2Pでは平均9%台の利回りとほぼ倍。さらに取引がインターネットで完結する利便性に加え、中国政府も経済成長のけん引役として金融IT業界を推進してきたこともあり、民間研究所の調査では、その市場規模は25兆円にもなった。

しかし、同時に多発してきたのが、P2Pを利用した投資詐欺だ。高利回りを謳いながら自転車操業で破綻したり、オーナーが資金を持って失踪したりと、元金を失うケースが相次いだ。
こうした状況を是正するため、当局はP2P企業を登録制にするなど規制を今年から厳格化したが、これが逆効果となあり、ほとんどの企業が規制に対応できず相次いで破綻。その数は7月だけでも160社あまりとなっている。
こうして、P2Pでの投資により財産を失った市民らが、今回北京に集まったのだ。

中国全土から1万人の市民が北京に向かうも… 監視と実力行使の当局対応

「資産を失った市民らは、まずそれぞれの地元警察に状況を通報し対応を要請したが、なかなか進展しなかった。そこで、中央政府へ直接申し入れようとの機運が高まり、今回の件に至った」

今回の件をSNSで情報発信する中国人(約700万円のP2P詐欺被害者)はこのように語る。また、今回は政府に対して“反発”をしたいのではなく、あくまで、金融当局に対し業者の管理や元金の返還などの対応を求める“陳情”だったという。

しかし、中国の公安当局は「秩序を乱す」として、内容が何であれ大規模な集会には常に敏感になっている。今回もSNSなどを監視し市民の動きを事前にキャッチ。大規模な集会にならないよう、公安当局は地方政府などに対し、北京へ向かおうとする人の動きを規制するよう、事前に通達を出していた。
更に6日当日は、数百人規模の警察官などを金融街周辺に配置し約8000人の市民を強制排除(冒頭の動画)。北京市内に入る道路や地方の鉄道の駅などでも検問を実施し、約2000人がたどり着くことすらできなかったという。
市民らの行動から2日後、金融街の中心地には依然として通常以上の警備体制が敷かれている。

燻る反発の火種と、対応に苦慮する政府

「今回は警察武力の強大さを知った。それでも政府が何か反応してくれると期待していたが…」

今回の件を受け、公式のコメントはもちろん、新たな対策や対応についても何も発表しない中国政府に対し、先の中国人は失望の色を隠せない。

中国政府の強権的な対応を巡っては、土葬の風習を強引に火葬に変えようとして住民の反発を生むなどもしている。(関連記事「『死にきれない』 涙の猛反発 中国で棺おけ破壊」)

国家主席の任期を撤廃し、一強独裁体制を強固なものにした習近平政権によるこうした対応に、毛沢東国家主席による文化大革命を想起する市民も出てきている。

P2Pに関しては、規制強化により約9割のP2P企業が淘汰されるとの予測もある。P2Pはインターネットで利用できるだけに、同様の行動が今後も中国全土で発生する可能性も否定できない。そして“金”という生活に直結する問題ゆえに市民の反応も敏感になりやすいうえ、中国経済全体にも大きな影響も出かねないことから、当局は対応に苦慮している。

(執筆:FNN北京支局 岩月謙幸)

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