広島豪雨災害~命を守るために~

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  • 豪雨災害から1カ月…広島県内の死者数は108人、未だ6人が安否不明
  • 市内全域に避難指示が出された広島市でさえ、避難したのは約3%
  • 4年前の土砂災害のあと、『災害死ゼロ』を目指す県民総ぐるみ運動を進めてきたが…

広島を襲った豪雨災害から1カ月が経った。
これまでの県内の死者数は108人、未だ6人が安否不明のままだ。死者77人を出した4年前(2014年)の広島市の大規模土砂災害の記憶が覚めやらない中、広島は再び被災した。

避難指示が出された広島市でさえ、避難したのは約3%

広島市安芸区矢野

発災当時、多くの人が避難したとかと思われたが、県立広島大学大学院の研究チームが行ったアンケート調査で、市内全域に避難指示が出された広島市でさえ、約3%の人しか避難していなかったことがわかった。もちろん対象者の中には、山や川の近くに住んでなく、マンションの高層階に住んでいて、家の中にいれば避難が必要ない人もいるだろう。

それを考慮しても約3%という数字は衝撃だった。「自分は大丈夫だろう」という過信と、4年前の土砂災害以降、行政から頻繁に出された避難情報に『勧告慣れ』していたのかもしれない。結果として逃げるべき人が逃げる機会を逸し、多くの命が失われたことは事実だ。

東広島市黒瀬町

台風12号で2次災害を懸念…県知事がカメラで呼びかけ

今回の災害発災から3週間が経とうとしていたころ、台風12号は過去に例がない東から西へ向かうコースを進み、広島に襲い掛かろうとしていた。

被災地では、まだ復旧もままならず、住宅からかき出した土砂も住宅の前に野積みにされたまま。その上、崩れた山々は、どこに土砂がたまり、どこに水を蓄えているかもわからず、2次災害が懸念されていた。そこで広島県の湯崎英彦知事は、カメラに向かって県民に避難を呼びかける決意をした。

「風や雨により、すでに避難ができなくなるような事態が発生する恐れがあります。避難の勧告や指示が発令されていない場合でも命を守るために事前に避難してください。常に想定を超える事態が起こることを認識して行動してください。」
 

広島県 湯崎英彦知事

知事が直接カメラに向かって緊急のメッセージを発して避難を呼びかけるのは、これが初めてだった。今回の災害を重く受け止め、2次災害を防ぐために、できる限りの手を尽くしたかったのだろう。

広島県は4年前の災害のあと『災害死ゼロ』を目指す県民総ぐるみ運動を進めてきた。県民の防災意識を高めるための啓発活動や、地域でのハザードマップ作りなどを促し、災害による死者をなくすことを目指してきた。
その矢先の今回の災害に、湯崎知事は発災から1週間にあたり「現実にこれだけたくさんの方々がお亡くなりになられていると、結果としてみれば十分に運動が浸透していたとは言い難い」と悔しさをにじませていた。

命を守るために

広島・熊野町川角

一方で、避難情報を受け取る住民も、行政が発する避難情報や、地域の危険度を示す情報を十分に理解していくことが必要だ。4年前の広島市での災害を機に、土砂災害防止法が改正された。
国は自治体に警戒しなければならない区域の指定を促し、危険度を住民に積極的に知らせるよう求めることができるようになった。県は警戒区域の指定の速度を速め、公表を進めてきた。

それにもかかわらず今回の災害では、土砂災害による死者のうち半数近くが警戒区域内で亡くなっていたことがわかった。警戒区域の住民への周知に課題があるため広島県は、住民が危険性を十分に理解し、避難につながったか検証することにしている。

そもそも、この土砂災害防止法は1999年に広島県内で死者・行方不明者32人を出した災害を機に制定されたものだ。
災害を受け、この約20年間、土砂を止める砂防ダムの設置などのハード対策だけでなく、住民側の避難意識の醸成などソフト対策も進められてきたはずだった。

我々放送局としても、これまでに何度も通常の放送の中で取り上げるだけでなく、特別番組などを通して避難の重要性を訴えてきたつもりだった。しかし、今回の災害で行政や我々が伝えてきたこれまでの“言葉”では人は動かないことが改めて浮き彫りとなった。“命を守るために”伝える側も、受け取る側も今度こそ行動を起こさなければならない。

(執筆:テレビ新広島 記者 新庄壮一)


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