中東タンカーを攻撃&一時ストップ!?イエメン発“石油危機”の可能性【山田吉彦】

カテゴリ:話題

  • イエメンで内戦が拡大、周辺国の原発施設も攻撃対象に
  • 7月25日タンカー2隻が攻撃を受け、サウジは航行を一時停止
  • 原油は中東諸国が増産するも、1バレル=約70ドルと高騰

中東イエメンで、サウジとイランが代理戦争

現在、イエメンを舞台として、イスラム教スンナ派のサウジアラビアとシーア派のイランの代理戦争が行われている。さらにサウジアラビアには米国が支援し、イランの陰にはロシアの存在が見え隠れしている。

イエメンでは、2015年にイスラム教シーア派の過激組織フーシが、イランからの武器供与を受けクーデターを実行し、首都サヌアを占領した。首都を追われたスンナ派のハーディ大統領政権は、紅海沿岸の都市アデンに退避し、サウジアラビアをはじめとしたアラビア半島のスンナ派諸国の支援を受けながら、フーシとの内戦に突入している。
サウジアラビアは、イランからの武器の搬入を阻止するために空港やフーシの拠点を空爆し、フーシは、サウジアラビアの空港やサウジアラビアに同調するアラブ首長国連邦の原子力発電施設を狙いミサイルを発射した。イエメンの内戦は、中東全体に拡大する兆候さえ見せているのだ。

サウジのタンカーが一時停止!石油増産でも価格高騰

中東情勢は、ISの動きが沈静化に向っているにも関わらず、さらなる危機を迎え、その影響は原油価格に如実に表れている。
今年に入り、米国のイランの核開発に対する経済制裁措置の強化のため原油価格の高騰している。
そこでOPECは、石油の需要を賄うため、7月から増産体制に入った。7月末、安定に向かうかと考えられていた原油市場が、欧米市場から再び高騰を始めた。8月に入っても原油の先物価格は、一年前より20ドル以上の高い1バレル70ドル前後で推移している。中東におけるさらなる紛争への脅威が、石油価格に序実に反映しているのだ。

7月25日、サウジアラビアの原油タンカー2隻が紅海に面したイエメンの港湾都市ホデイタ沖を航行中に、イエメンの武装勢力「フーシ」の攻撃を受けた。

幸いにも一隻が軽微な損傷を受けただけで負傷者の発生や原油流出には至らなかったが、サウジアラビアは、紅海のバブエルマンデブ海峡の船舶通航を一時的に停止する措置を取った。バブエルマンデブ海峡は、アラビア半島のイエメンとアフリカ大陸東部のエリトリアとジブチの国境線辺りを挟んだ幅30キロほどの海峡で、アラビア海とスエズ運河を結ぶ重要なシーレーンの中核に位置している。この海域では、4月にもサウジアラビアの原油タンカーがミサイル攻撃を受けており、航行の安全を脅かす危機的な事態となっているのだ。

世界が注視する“海峡の危機”

緊迫した中東情勢に対し、紅海に面したサウジアラビアのジッタ港には、英国とエジプトに軍艦が待機し、すでにフーシがイエメン周辺に設置した機雷処理対策のため、英国の掃海艇が紅海に進入している。フランス軍もジプチに拠点を置き、不測の事態に備えている。さらに中国も紅海に軍艦を派遣し、海軍力のプレゼンスを高めている。

サウジアラビア・ジッタ港に停泊するイギリスの軍艦(筆者撮影)
同じくジッタ港に待機するエジプトの軍艦、港は緊張状態が続く(筆者撮影)

バブエルマンデブ海峡は、欧州諸国にとって石油の輸送ルートとして重要であり、さらにアジア諸国との貿易活動の生命線といえる。すでにイエメンから難民が流出し始めていることもあり、イエメン内戦に欧米諸国が介入するのも時間の問題である。
ペルシャ湾岸から日本に輸出される原油は、ホルムズ海峡を出たのち東に航海するためバブエルマンデブ海峡を通過することは無く、同海域に対する日本人の意識は低い。しかし、この海峡の安全保障は原油価格に直結するのである。さらに日本を発し欧州へ向かうコンテナ船や自動車運搬船の航路であり、日本の経済にとっても極めて重要な海域である。

日本は、この海域の安全保障にどのように関与するのか方向を定めておく必要があるだろう。

(執筆:海洋経済学者 山田吉彦)