栃木小1女児殺害で無期懲役判決。事件のあらましとこれまでの裁判

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  • 栃木県の小1女児が殺害され、勝又被告が逮捕されるまでの流れは?
  • 1審では自白の信用性が争点となったが、無期懲役判決が下された
  • 上告審では、どのような理由で改めて無期懲役判決となったのか

栃木県の小1女児が殺害された事件。

1審で無期懲役判決を受けた勝又拓哉被告の控訴審判決で、東京高裁は3日、1審を退けたうえで、1審に続いて無期懲役判決を言い渡した。

今市事件のあらまし

遺体発見現場(常陸大宮市)

2005年12月2日、茨城県常陸大宮市の山林で、小学校低学年と見られる女の子の遺体が見つかった。この遺体は前日から行方不明となっていた、栃木県今市市(現・日光市)に住む小学一年生の女児のものだった。遺体は衣服をつけておらず、胸に複数の刺し傷があり、遺留品が全くないことから、警察は、女児が何者かに殺害され、この山林で捨てられたとして捜査を始めた。

遺体の発見場所は県道から枝分かれして200メートルほど入った林道の脇だった。また女児は、遺体発見の前日、下校していた友達と別れた後に行方不明となり、今市市から直線距離で60キロほど離れた場所で見つかったこともあり、警察は不審な車の目撃情報などを含め捜査を続けた。

一方、司法解剖の結果、死因は失血死、行方不明となった日に食べた給食が胃に残っていたこともあり、当日中に殺害されたものとされ、女児が当日来ていた服装のイラストなどが書かれたチラシを配布し、懸賞金の対象とするなどして情報提供を求めていた。

8年経って逮捕された男

事件が動いたのは、8年以上が経った、2014年のことだった。

2014年1月に商標法違反で逮捕された男が、取り調べの中で女児殺害をほのめかす発言する。
この男こそ、勝又拓哉被告だった。


勝又被告は台湾で産まれ、親戚の間を転々としながら生活をし、12歳ごろに母親に引き取られ日本に来たが、日本語教育を受けずに日本の小学校に入学したため、授業は全くわからず、友人もできなかったという。その後一度、1年ほど台湾に戻るが再来日し、母親と骨董販売をするなどして生活をしていて、警察は商標法違反で逮捕する前から勝又被告をマークしていた。

遺体発見現場での勝又被告

警察は、任意の調べの中で殺害を自白した勝又被告を逮捕。勝又被告は取り調べで「女児を殺したことに間違いありません。今言えることは女児にごめんなさいという気持ちです」と容疑を認めていた。しかし詳細については曖昧な点も多く、「女児のランドセルなどの所持品や凶器については処分した」という供述の裏付け作業を急いでいた。

一方で検察は、のちに裁判でも争われることになる、供述の信用性を担保するため、任意での取り調べとしては異例の録音録画を実施していた。結果、凶器など直接的な証拠がない中、防犯カメラの映像など供述に基づく裏付け捜査で、状況証拠を積み重ねた結果の起訴となった。

急転、無罪を主張した裁判

2016年2月に行われた勝又被告の裁判員裁判。
勝又被告は容疑を認めていた逮捕・起訴された時とは打って変わり、起訴事実について「殺していません」と涙を流しながら否認した。

弁護側も、殺害現場とされる林道に女児の血痕がなかったことなど、現場の状況と供述の矛盾点や、犯人しか知り得ない“秘密の暴露”がなかったことを指摘した。さらに「威圧的な取り調べで、虚偽の自白に追い込まれた」と無罪を主張。

イラスト:石井和昌

検察側は状況証拠の積み重ねで有罪の立証を進め、異例となる『取り調べの録音・録画』が法廷で流された。

映像では勝又被告が「女児の殺人については姉に話してから」などと、家族に話をした後で事件の詳細を話すことを検察官と何度も確認する様子や、後日急遽考えを変え「黙秘権を使いたい」と供述を拒否する様子、検察に「卑怯じゃないか。この様子を被害者と遺族に見せたいね」などと厳しい口調で迫られると、突然「もう無理」と声をあげて立ち上がり窓に向かって突進する場面などもあった。

CGで再現した取り調べの様子

さらには、検察官に「女児を殺したのは君だね、拓哉くん」と聞かれ、「はい」と涙ながらに答え、身振り手振りを交えて殺害の状況などを詳しく話す様子も写っていた。弁護側は自白は強要されたものだと主張していたが、検察側は無期懲役を求刑。

決め手となる物証がない中、自白の信用性が争点となった裁判だったが、地裁は「実際に体験した者でなければ語ることのできない具体的で迫真性に飛んだ者で、信用できる」と結論づけ、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

高裁でも無期懲役の判決

イラスト:石井克昌

1審で無期懲役の判決を受けていた勝又被告は、2018年6月、FNNの記者の接見に応じていた。

逮捕時に比べて、少しふっくらした様子で、事件について「殺していないし、触ってもいない」と話したうえで、高裁判決について「期待が大きいね」「でも、伝え足りない部分があるから不安感が残ります」と話していた。

また取り調べの中で自白したことについて、勝又被告は「刑事が自分のことを思ってくれているから、気持ちに応えなきゃと思った」「今思うと、なぜああ言ったのか理解できない」と説明した。

2018年8月3日に行われた勝又被告の控訴審判決で、東京高裁は、1審に続いて勝又拓哉被告に無期懲役の判決を言い渡した。判決を言い渡された勝又被告は、驚いた様子で裁判長をじっと見つめていた。

イラスト:石井克昌

裁判では、捜査段階の自白の信用性が最大の争点となり、1審は、取り調べの録音録画の内容から「根幹部分は信用できる」としたが、東京高裁は「信用性を判断するために採用された取り調べの録音録画により、犯罪を直接的に認定したことは違法」と述べ、「自白に基づき、殺害日時や場所を認定した1審判決には事実誤認がある」と指摘。「1審判決の破棄は免れない」と判断した。
一方で、検察側の請求によって、殺害日時や場所の範囲を広げる訴因変更が認められたことで、高裁は判決で「変更した訴因で、勝又被告を有罪と、直ちに判決することができる」と述べた。

そして、「状況証拠を総合すれば、勝又被告が犯人であると認められる」と指摘し、これらを総合して、高裁は1審を退けたうえで、勝又被告に1審に続いて無期懲役判決を言い渡した。