【岡山発】西日本豪雨から1カ月 ふるさと明日へ

カテゴリ:地域

  • 避難所を出る為、下見なしに「みなし仮設住宅」への入居決める人も
  • 在宅避難者が「見えない被災者の孤立」につながる恐れ
  • 危険と分かっても逃げない・・・防災報道の難しさ

遠い道のり

泥水に点々と散らばる家の屋根、私はしばらく何も考えられなかった。
岡山県に初めて大雨特別警報が出された翌日の朝、ヘリコプターのカメラを通して変わり果てた郷土の姿を見た。

岡山県で死者61人、安否不明者3人。平成最後の夏に平成最悪の災害に見舞われた。
ヘリのカメラがとらえていたのは、岡山県内の被災地のうち被害が最も大きかった倉敷市真備町の様子だった。
水島コンビナートを抱える市のベッドタウンとして発展した町は面積の27%が浸水し、51人の犠牲者を出してしまった。

住宅の全半壊は約4600棟。1カ月がたつ現在も町内の指定避難所には約1000人の被災者が身を寄せる。
不慣れな生活環境による疲れに連日の猛暑が追い打ちをかける。
一刻も早く避難所を出たいと、部屋の下見もせず、みなし仮設住宅への入居を決めた人もいた。

仮住まいの入居期限は2年間。しかし元の生活を取り戻すには短く、避難生活を強いるにはあまりに長い。

見えない被災者

電気、ガス、水道といったライフラインの復旧と共に、水害ならではの課題が見えてきた。

地震災害とは違って余震や揺れによる損壊の恐れがないため、避難所を離れ、浸水を免れた自宅の2階で寝泊まりする被災者が増えている。いわゆる在宅避難者だ。
通電しているもののテレビは水没、通信環境も脆弱で必要な情報が手に入らない。
「それでも我が家は休まる」と夫婦で在宅避難を続ける男性は言う。

一方、行政は被災者が避難所からどこに行ったのか把握できない。
罹災証明書の発行、災害ごみの搬出、感染症の予防…被災後に必要な支援が滞る恐れがある。
こうした状況を防ぐために全戸訪問が行われている。
ケアマネージャーが一軒一軒浸水したまちを歩き在宅避難者の安否と健康状態を確認する。
見えない被災者の孤立を防ぐための地道な活動が続く。

それでも前を向く

豪雨は実り豊かな水田や畑も泥の底に沈めてしまった。
農業用ハウスは流され、農家が手塩にかけて育てたブドウやモモの実は、熟れるのを待たず泥にまみれた。
この夏の収穫どころか果樹そのものが死んだと下を向く農家もあった。豪雨は我が家だけでなく生業も奪い去ったのだ。

それでも田んぼの隅で青々茎をのばすイネを見つけてこの地でコメ作りをしようと決意した3世代の農家もある。
農機具は失ったが借りればいい、先祖代々守り抜いてきた田んぼは簡単に捨てられないという。
我が家にはもう住めないが、みなし仮設住宅に一時、生活の拠点を移しこの地で再起をかける。
そんな農家の故郷への愛着に復興への希望を見せてもらった。

防災報道に難問

真備町で亡くなった51人のほとんどが高齢者で死因は水死だった。
近くを流れる小田川とその支流の堤防が次々と決壊、あっという間に2階まで水が押し寄せた、と川の近くの住民は教えてくれた。逃げ遅れが被害を拡大させたのだ。

実は小田川の氾濫はこれが初めてではない。古くから氾濫を繰り返し住民を悩ませてきた歴史がある。
取材を進めると、多くの住民がそうした過去の歴史やこの地区の洪水ハザードマップに触れたことがあり、豪雨当日も特別警報や避難勧告、避難指示の発表をテレビや携帯電話のメールなどで知っていた。
危険だとわかっても逃げない。

平成最悪の被害を生んだ豪雨が突き付けたこの難問は解決できるのか。

復興の先に

倉敷市真備町尾崎地区の高台にある熊野神社。
指定避難所ではないここで1カ月たつ現在も20人が避難生活を送る。
豪雨当日は雨の状況がひどくなる前に約180人が自主的に集まってきたという。

こうした自主避難は初めてではない。
大雨や台風の時にはいつも総代長が本殿のカギをあけ、住民が声を掛け合って避難してくる。
ここで避難生活を送る女性はお隣から避難を促されここへ来たという。
この地区でも多くの住宅が全半壊したが、おせっかいともいえる人への関わりとそれが当たり前のご近所づきあいが多くの住民を避難行動に駆り立てた。

あの日、ヘリの映像を見て味わった無力感から1カ月。
命を守るため防災報道はどうあるべきか自問自答は続いているが、尾崎地区の住民からそのヒントはもらった気がした。

災害に負けないまちづくりは地域のコミュニティーを紡ぎ直すことから始まると。

(岡山放送報道部 防災担当デスク小林宏典)

【ライブ配信】
8月3日(金)午後3時50分~ FNN.jp PRIME online 「LIVE」画面にて
岡山放送 プライムニューススペシャル「ふるさと 明日へ~西日本豪雨から1カ月~」

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