夏のレジャーでは草むらに要注意!「殺人ダニ」に噛まれて感染 死亡例相次ぐ

カテゴリ:暮らし

  • あらゆる草むらに潜む「殺人ダニ」
  • 食いつかれ吸血されても、無理にはがすのは危険!
  • 寄生されると、致死率高い感染症にも!

被災地でも危惧される大型ダニ

「フジロック・フェスティバル」は終了しましたが、いわゆる『夏フェス』は、まだまだ各地で開催されます。会場が自然に囲まれたロケーションもあるでしょう。
また、この季節は山や河川にレジャーに出かけることも多いと思います。
そうした場所の草むらに、「殺人ダニ」とも呼ばれるダニが潜んでいることがあります。
それが「マダニ」です。
「殺人ダニ」と呼ばれる所以は、「マダニ」に噛まれたことで感染症になり、死亡してしまう例が、ここ数年相次いだからです。

「ダニ」と聞くと、家の中の畳やカーペットに住む、目に見えない小さな生物を連想しますが、「マダニ」はそれとはまったく別の種類の生き物です。
家ダニより、ずっと体が大きく、通常時でも3mm~4mm程度、小型のテントウムシぐらいの大きさです。
北海道から南西諸島まで、日本全国に生息しています。
主に、山中の茂み、裏山や畑、河川近辺に生息しますが、郊外の住宅地や都市部の草かげにも潜んでいます。草むらがあるところなら、どこにでも生息しているのです。
「マダニ」の活動は、気温が高いと活発化することから、今後は豪雨被災地での「マダニ」発生も危惧されています。

強力に食いつき、1週間にわたって吸血

「マダニ」の最大の特徴は、とりついた相手(宿主)から吸血すること。
「マダニ」は、草むらの葉陰で、動物や人を待ち伏せしています。葉っぱに潜みながら、体温、振動、二酸化炭素、匂いなどで宿主を感知するのです。
そして、宿主(人間やイヌ・ネコ等)が直接植物に触れたときに、うまく乗り移って寄生します。 
このとき、「マダニ」はノミのようにジャンプしたりはしません。 
そのため、気が付かないうちに衣類や肌に付着していることがあります。
宿主の体表に乗り移れた「マダニ」は、まずその動物の皮膚が薄くて吸血しやすい部分を探します。わきの下、足首、膝の裏、髪の毛の中などが吸血ポイントです。
ポイントを選んだ「マダニ」は、鋭い歯で咬みつきます。
さらに、ノコギリのような歯を皮膚の奥に差し込み、セメント物質を分泌して固着するのです。ちょっとやそっとでは取れません。
そうして、宿主から1週間以上の時間をかけてゆっくりと、そしてたっぷりと血を吸い上げていきます。

吸血で肥え太り、ついには宿主の体で交尾も!


寄生から日が経つにつれ、「マダニ」は吸った血でどんどん大きくなっていき、ついには風船のようにパンパンに膨れ上がります!
何と、体重は100倍以上に。全長は1cmを超えるぐらいにまで大きくなります。
1週間以上にわたる吸血を済ませたあとは、一度宿主の体から外れ、脱皮の時間を設けます。
その後、再び別の宿主を見つけて吸血し、それが終わればまた脱皮。
このサイクルを3回繰り返し、3度目の吸血の際には、宿主の体の上で交尾を行うのです。

無理に引きはがすのは絶対NG!

ちょっとゾっとしてしまいますが、「マダニ」の唾液には麻酔物質が含まれており、吸血されていても、気付かないことが多いようです。
血を吸ってどんどん大きくなっていく過程で、寄生されていることに気付くようです。
ただし、寄生に気付いても「マダニ」を無理にひきはがすことは止めて下さい。
無理に引き抜こうとすると、「マダニ」の頭部や差し込まれている突起物が体内に残ってしまいます。
「マダニ」の体が一部でも残ると、後に炎症や感染症をきたすことがあります。これが怖いのです。
また、「マダニ」を強く掴むことで、「マダニ」の体液が逆流、自分のからだに「注射」することになりかねません。こちらも感染症のリスクが高まってしまいます。
では、「マダニ」の寄生に気づいたら、どうすればいいでしょうか。
「マダニ」専用のピンセットも売られていますが、一番確実なのは病院にいくことです。
最寄りの皮膚科を受診し、除去してもらいましょう。ただしメスを入れて切開することもあります。

噛まれることで、致死率高い感染症に!

さらに、最も怖いのは、「マダニ」に寄生・吸血されることで感染症になることです。「日本紅斑熱」「ライム病」「重症熱性血小板減少症候群SFTS」などの感染症を媒介されることがあります。
中でも、「重症熱性血小板減少症候群SFTS」は、6%から30%と致死率が高い疾患です。感染者も増加傾向にあり、近年 死亡例が相次ぎました。
「SFTS」は11年に中国で発見され、日本でも13年に初めて患者が報告されました。現在までに,全国で355例の症例が確認されており、うち63例で死亡しているのです(平成30年6月27日現在)。
感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、嘔吐、下痢、頭痛などを引き起こし、倦怠感、リンパ節のはれ、出血症状などの症状が現れます。
意識障害が起きて重症化することがあり、最悪の場合、死に至ります。
ただ、初期症状は風邪に似ているため、患者本人が「SFTS」だと気づかないことが多いようです。
感染の報告は「マダニ」の活動が活発な、3月から11月ごろまでに集中します。
「SFTS」に抜本的な治療法はありません。有効な薬剤やワクチンは無く、対症療法的な治療を施すしかありません。

感染したペットに噛まれて感染も!

通常はウイルスを保有している「マダニ」に咬まれて感染しますが、感染患者の血液・体液との接触感染、<ヒト‐ヒト感染>も報告されています。
さらに16年、50代の女性が、「SFTS」に感染した野良猫にかまれたことで「SFTS」を発症し、数日後に死亡するという例が報道されました。
自分自身はマダニに噛まれていなくても、「SFTS」を発症している動物の体液に触れることで、人にも感染することが確認されたのです。
厚労省でも、ペットが体調を崩したら動物病院を受診するように注意喚起しています。

温暖化などの気候変動、自然環境の変化によって、「マダニ」の生息域が広がりつつあり、世界各国で警戒が呼びかけられています。
20cm以上の草があれば、「マダニ」がいる可能性は十分にあります。
これから秋にかけて、草むら等に近づく際には、肌の露出を避けましょう。長袖・長ズボンを着用し、帽子や手袋なども利用しましょう。
また、帰宅時には衣類をチェックし、家の中に「マダニ」を持ち込まないことも大切です。
人間だけでなく、ペットのイヌやネコにも寄生しますので、同様の注意が必要です。

千春皮フ科クリニック 院長
渡邊千春(医学博士)

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