「日韓に核兵器を貸し出せ」 アメリカの望むままにならない核と同盟の”日本人的孤立主義”

カテゴリ:ワールド

  • 米国による北への軍事攻撃の脅しが効かない今、米国世論は「対話」を支持
  • 「テコの原理」で「日韓に核兵器を貸し出せ」という主張も
  • 日本の世論は、アメリカが望むようには展開しない

アメリカによる軍事攻撃の脅しが効かない今

米朝首脳会談を経て一月半。北朝鮮に核放棄をしようとする気配はやはり見られない。一時は、米欧の外交筋で期待感が盛り上がったこともあったのだが、首脳会談の意味合いはほぼ米朝間の緊張緩和の効果しかなかったという見方に落ち着きつつある。それでも、米朝首脳会談開催への世論の支持という「果実」に気を良くしたトランプ大統領はイランを散々脅し挙げた挙句に、条件なしで首脳会談に応じる用意があると言ったりしている。イランの公式声明では今のところ応じる気がないようだけれども。

戦争の危機が遠ざかったため、米国国内ではもはや北朝鮮に対する関心そのものが低まってしまったと言わざるを得ない。それでも外交問題のプロは不拡散に向き合い続けなければならない。しかし、米国が、米韓合同軍事演習の停止以外は何も北に譲歩していないと主張する一方で、米朝首脳会談の前と後では、大きな変化があると考えた方が良い。

そもそも、米国による軍事攻撃の脅しそのものが、ほぼ唯一説得力のある切り札だっただけに、米国世論が圧倒的な「対話」支持に振れてしまった後では、シナリオがずれてしまうからだ。こと軍事攻撃の脅しに関しては、トランプ流のブラフの効力は薄れてきている。今後、北朝鮮に具体的な行動を起こさせるためには、ムチの脅しがあまり効かない中でアメを少しずつ与えるしかなくなっている。しかも、中国が制裁違反摘発を緩めている中での交渉にならざるを得ない。

「日韓に核兵器を貸し出せ」という主張も

そうしたなか、米国には、傍流ではあるが「てこの原理」を使おうとする立場が一定程度存在する。この人びとの考える現実主義的思考からは、例えば日韓に核兵器を貸し出せというような主張が生まれてくる。軍備管理や軍縮をしようにも、相互的なものでなければならないため、崩れてしまったバランスをとりあえずは軍拡で取り戻そうとする考え方である。少なくとも、日常会話のレベルではそうした試行錯誤をする人がいることは間違いないし、同盟の信頼強化には効果があるだろう。私には、そんな「てこの原理」としての役割だけに日韓が安住するとも思えないのだが、兄貴分である大国からすれば日韓の自主性はあまり論点として見えてこないのだろう。

けれども、日本の世論においては、核をめぐる問題はもう少し複雑である。よく言われる論点が、日本には反核・非核の感情が強いというものだ。それはその通りなのだが、そうした一般常識を超えて、本コラムでは日本の核をめぐる選択がどのような背景から生じるかを解き明かしてみたいと思う。

「積極的な同盟の否定」をする日本人

以前本コラム(*注1)で紹介した意識調査と同じ調査において、核政策をめぐる質問を行った(2017年12月実施分)。具体的な設問は以下の通りである。
(*注1【韓国の日中に対する好感度が逆転! 日中韓"意識調査"からわかったコト-三浦瑠麗-】)

Q. 北朝鮮の核問題が注目を集めていますが、今後日本は核に関してどのような政策をとるべきでしょうか。

それに対する結果が下の図1の通りである。米国の核の傘から抜け出して非核を貫くと答えたのが4分の1。米国の核の傘を維持すると答えたのが、別の4分の1。日本への米国の核配備(持ち込み)による核の共同管理(いわゆる核共有)と答えたのが11%。独自の核保有が8%である。言ってみれば、非核が4分の1、現状維持が4分の1、抑止強化が2割弱ということである。

核の傘から抜け出したいという思いを抱える層は60代が多いが、同年代も一様ではない。全体的な傾向としては、若者ほど分からないと答える割合が高く、年齢が上がると左右に答えが固まっていく分極化が見られる。

図1 日本は核に関してどのような政策をとるべきか

この調査から分かるのは、日本には他の多くの国にはあまり見受けられない孤立傾向があるということだ。核の傘から抜け出て非核を貫くというのは、積極的な同盟の否定である。

他方で、日本人の中国に対する好感度は1割しかなく、韓国に対する好感度も2割強にとどまり、米国を代替する同盟国を模索している風にも見えない。したがって、この選択肢を選んだ人の多くは孤立主義者であるということになる。

さらに、図2を見れば、前出の質問で核の傘から抜け出て非核を貫くと答えた人の動機が明らかになる。こちらは、別の設問で聞いた日米同盟に対する評価とのかかわりを見たものである。その別の設問は、以下の通りである。

 Q. 日米同盟について、あなたの考えにもっともあてはまると思うものをお答えください。

これに呼応して、リスクと利益のどちらを多いとみるかを表す選択肢ごとに先ほどの核政策をめぐる意見を並べたところ、図2のようになった。

図2

「同盟が日本を戦争に巻き込む」?

一見してお分かりのように、同盟が日本のリスクになっていると思う人ほど、「核の傘を抜け出して非核を貫く」と答える比率が高い。ここに、同盟のリスクをめぐる一般的な日本の言説を重ね合わせれば、同盟が日本を戦争に巻き込むと思うからこそ、孤立主義という選択肢が選ばれていることが分かるだろう。

逆に、日本の利益とは何だと捉えられているのか。日本では、核の傘をはじめとした安全の供与であり、その結果としての防衛費の節約だろう。他方、米国で一般的な日米同盟の見方は、日本は重要な拠点ではあるが、フリーライダーとなる懸念が高く、ことと次第によっては日本の行動のせいで紛争に巻き込まれかねない、というところだろう。つまり、日本が防衛費を節約し、自前でできる防衛努力をせず、そのくせ地域紛争の引き金を引くリスクももたらしている、という見方だ。他国の立場に立って考えてみると新たな発見があるものだ。

25%の非核派孤立主義と34%の核抑止肯定派

では、日本における今後の核をめぐる世論の推移はどうなると予想できるだろうか。
世代交代によって若干数字が前後する可能性はあるが、日本独自のパターンをとっている世界観自体は持続するだろう。

日本には非核派の孤立主義者が4分の1存在する。そして、現状維持を選ぶ人(現状は4分の1)は、必ずしも核抑止を否定しない。したがって、米国のコミットメントに疑いが生じれば生じるほど、現状2割弱の抑止強化派に票が流れることになる。

これは私の推測にすぎないが、現状維持を選ぶ人が非核派の孤立主義に流れることはどうも考えにくいからだ。

とすれば、今後、日本の中にはおよそ25%の非核派孤立主義と、およそ34%の核抑止肯定派が対峙することになる。そして、34%のなかにも、重武装孤立主義をとりたい人は存在する。

日米から見る同盟の風景は、だいぶ異なっている。
米国が望むようには日本の世論は展開しないだろう。

(執筆:国際政治学者 三浦瑠麗)

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