児童相談所の現実~「虐待」子供たちの命を守るために~プライムニュースイブニング 【島田彩夏】

  • 5歳女児虐待死をうけ、政府は児童福祉司の増員を進める方針
  • しかし現場からは「一人前になるには4~5年かかる」との声も
  • 心理的プレッシャーが大きい仕事。増員とともに人材育成を。

今回、私たちは、首都圏のある児童相談所の取材をさせていただくことになりました。

取材初日の朝に鳴った児童相談所への一本の電話。それは幼い子供が母親からの虐待を受けた可能性があるという第三者からの通告の電話でした。
子供の安全を確認するために、児童福祉司が現場に急行する場面にも遭遇しました。体にはっきりと残る傷痕。そして児童福祉司の子供への聞き取り。
これまで児童虐待については自分なりに勉強し、文献なども読んでいましたが、このような現場を実際に取材すると「本当に、こんなに身近に起こっていることなのだ」というショックで、気が塞ぐ思いでした。この幼い子が見せる無邪気な笑顔がより切なく、不条理に感じました。

「児童虐待で子供が亡くなるたびに、児童相談所は『面会を試みたが会えなかった』と言う、なぜなのか」

多くのひとが抱く気持ちではないでしょうか。私も同じ思いです。児童相談所は何もしていないのでしょうか、いったい何が起きているのでしょうか。現場で働く方にインタビューをして率直な話を伺いました。

東京・目黒区で5歳の女の子が虐待死した事件を受けて、政府は児童虐待対策を強化する緊急プランを打ち出しました。具体的には、

・2022年度までに児童福祉司を2000人増やすこと
・児相間の引継ぎを、深刻なケースの場合は、対面で行う などです。

このプランを、児童相談所で実際に働く方たちは、どのように受け止めているのでしょうか。
番組での放送や、こうした記事を通じて、現場で働く皆さんの思いや取材現場で感じたことをお伝えしたいと思います。

電話が鳴りやまない児童相談所

児童相談所には、子供たちの非行や不登校の問題、障害を抱えた親からの相談、そして虐待に関する相談が舞い込みます。
政府は、人員増員によって、現在の児童福祉司ひとりあたりの相談件数を、現在の50件から、40件程度にまで減らしたいとしていますが、今回取材した児童相談所では、多い人で80ケースを担当していました。
さらに、都内には、ひとり100件近くの相談を受けている場合もあると聞きます。ひっきりなしに電話対応に追われる職員の皆さんを前にすると、今回の増員策は、この現実をどこまで変えることができるのでしょうか。

多くの問題に向き合う児童相談所、増員はまったなしだが・・・

ただ増やすだけじゃ意味はない 人材育成を!

取材したベテランの児童福祉司(スーパーバイザー)は、ただ単に増やすだけでは意味はないと断言します。その方によれば、一人前のケースワーカーになるためには少なくとも4~5年かかるそうです。
しかし、現実は2~3年もすればもう先輩にならざるを得ません。それもそのはず、多くの児童相談所では、人員を増やすために、新人を次々に採用していますが、経験の乏しい児童福祉司が増えても現状が改善されるわけではないというのです。「経験はとても大事なので、ただ単に人が増えればいいとは思っていない。ケースワーカーをしっかり育てていかないと難しいんです。」人を増やす一方で、人材育成が何よりも急務になっています。

保護すれば親から罵倒「お前ら鬼だ!」

取材した児童相談所では、この春、新たに2人の児童福祉司が採用されました。そのうちの一人、もともと福祉関係の仕事に就いていて転職したという男性に話を聞きました。
仕事を始めてまだ4か月といいますが、すでに担当件数は60件に及びます。男性に日々苦労することを尋ねると、こう話してくれました。
「子供たちの人生を左右するような出来事にも立ち会っているのですごく大変です。児童を保護すると、面と向かって親御さんに罵倒されることもあります。お前ら鬼だ!とかここで自殺してやるなど言われることもありました。決して派手な仕事とは思っていませんでしたが、はるかに想像を超える辛さです。」
子供の命、さらにはその家族と向き合う日々。最前線で戦う児童福祉司たちにかかる心理的プレッシャーは相当なものなのです。

それでも辞めない…

最後に、私は少しいじわるな質問を、前述の新人児童福祉司の男性にしてみました。「辞めたくなったりしませんか?」と。
すると、少し笑いながら、彼はこう答えてくれました。「帰りの電車の中で辛いなって思うことはあります。でも、自分が辞めたらどこかにしわ寄せがいって、最後に苦労するのは子供たちなので辞めたいとは思わないですね。」

プライムニュースイブニングでは、これからも児童虐待の問題を引き続き考えていきたいと思っています。

(プライムニュース・イブニング キャスター島田彩夏)

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